この小冊子を入手しました。
横浜いのちの電話でまとめられたものです(2020年4月)。
とても良くまとめられていると思い、一部を紹介します。
(横浜いのちの電話理事長)
ぜひ、多くの方々に読んでいただき、ご活用いただければ嬉しいです。
目次;
Ⅰ 関りを難しくしている電話相談の特性
1.匿名性
2.一回性
3.かけ手主導性
4.視覚的情報の遮断
5.心理的距離の近接
Ⅱ 電話相談員に求められる関わり方
1.「きく」
2.信頼関係を深める
3.沈黙の理解と対処
4.終結のタイミング
①一見、問題解決を求めているようで、相談員に時間を共有してもらえる関係を求めている場合
②「性」に関する話を繰り返す場合
③怒りの感情をぶつけながら話続けている場合
④繰り返しかけてきて、話が広がり長くなる場合
相談員の「終結へのリード」は相談者にとっては関りを制限されることになる。そのために、相談者によっては、激しい怒りをぶつけてきて攻撃的になることがある。たとえ相談者が追いかけるように怒り声を出したとしても、「今はここまでにします」と伝えた時は、静かに受話器を置き、気もちを楽にし、落ち着いてから再度電話にでるようにしてほしい。
Ⅲ 「訊く」力「言語化」の力を育てる 解決志向アプローチ
1.例外探しの質問
2.対処(コーピング)の質問
3.尺度化(スケーリング)の質問
4.目標を明確にする質問
5.変化を見つける質問
6.関係性のアセスメント
さらにかけ手を深く理解するための3つの心理療法
神経言語プログラミング(NLP)
・ペーシングとリーディング
・リフレーミング
・メタ・モデル
・省略の例 何かを省略していることなので、「具体的に何を?」と訊く
・一般化の例「いつも」「みんな」「すべて・「決して~ない」
・ミルトン・モデル
彼のクライアントが自分にとって最も適切な意味が受け取れるように意図的にあいまいな言葉を使った。
認知症法・認知行動療法
・自動思考とスキーマ―
・認知の歪み
・認知的技法の電話相談への応用
交流分析
・自我状態
・やりとり(コミュニケーション)の分析
・心理ゲーム
・ストローク
・ディスカウント(値引き)
値引きは無意識に自分や相手の考え、気持ち、行動、問題解決の能力を過小評価し、虫することである。
値引きしている状態を示す行動としては
①何もしない
②過剰適応
③イライラ
④無視ないしは暴力である。
・人生脚本
・拮抗禁止令とドライバー
生き方をかりたてるようなメッセージを「ドライバー」という
①完全であれ(Be Perfect)
②努力せよ(Try Hard)
③他者を喜ばせよ(Please Others)
④強くあれ(Be Strong)
⑤急げ(Hurry Up)
Ⅳ スーパーバイザーの視点から
1.スーパービジョンは不可欠
2.事例 3つ
3.死を思考する電話の対応
「死にたい」
「どうして死んではいけないの?」
「死んだほうがましだ」
「子どもは急死し、主人も交通事故で亡くなった。もう生きている意味がない。死んでもいいですよね」
自殺予防を目的をしている「いのちの電話」には、このような電話が多く寄せられる。相談者のこのような語り出しに接すると、相談員のどまどいは大きくなる。どのように応じたらよいか言葉につまり、黙してしまったり、動揺をかくせないあわてた声で「どうしてですか」と応じてしまうことがある。
多くの相談者は「死」を考えながらも「生きたい」と望んでいる。両価的感情をいだいている。死にたいと思うくらいつらい状況、絶望の中におかれていることをしっかり受けとめ、理解していくことができれば相談者に対する支えになる。死を訴えている人は、動揺やか混乱をもたらしたさまざまの要因に対して怒りながらも、自分を責める気持ちを強くしている。それゆえ、「何がそれほどまでにあなたをつらくさせているのですか?」と対話に導入していくことが大切である。
「死にたい」と思う程につらい思いをさせている精神的苦痛を理解し、受けとめてくれるだれかがいてくれることが求められる。精神的苦痛を語れても、相談者のおかれている状況は変わらないし、かかえている課題がなくなるわけではない。しかしながら、相談者は精神的苦痛を語ることによって、危機的状況を低減させ、自殺に向かう危険度を減少させることができる。「孤立」していることが自殺の危険度を高める。人が孤立し、絶望感を大きくしている時は、心から支えられ、寄り添ってもらえることを求めている。そのような場合、相談者は、相談に応じる者の資格は求めていない。相談者と人格的な関りを可能にするのは、専門家よりも「きく」ことを訓練されたボランティアの相談員である。これが「自殺予防」の役割をはたすことにつながる。
相談者は死を思考しながらも、行動に移すことなく電話をしてきている。そのことを十分にねぎらってほしい。「死にたいと思われても、行動に移すことなくよく電話をかけてくれましたね」と。その上で、「この電話でどうなると電話してよかったと思ってもらえますか」と電話してきた目的を明確にする問いかけをしてみるとよい。相談者がどのような出会いを求めているか(関係性のアセスメント)を明確にして関わるようになる。
人は自殺を決心した時は、話をするというより、「さよならを言いに来ました」「これまでいろいろありがとうございました。お世話になりました」など。さりげないあいさつと受けとれることを言うことがある。
「生きていても意味がない」「生きることに疲れた」「頼れる人がいない孤独だ」など「死」の言葉を直接使ってはいないが、自殺念慮の指標となる言葉であることが多い。相談員は「具体的に死ぬことを考えているのですか」と、恐れることなく、あえて、自殺の危険度を確認する問いかけをしてみる。その上で、「どうなると生きることに少しでも意味を見いだせて、前向きになれるか」を考えてもらえるように関わってみる。それには相談者のかかえている問題や、おかれている状況に対する受けとめ方や意味づけの仕方を視点を変えて肯定的に考え、見直せる対応(リフレーミング)を試してほしい。そのためには、否定的なところを肯定的に言い換えることのできる表現能力(言語化の力)を養うことが相談員には求められる。
あとがき
『電話カウンセリング』の著者であるゴードン・C・ハンフリーは「上手なきき手」と「下手なきき手」を明記しています。以下にそのいくつかを一部改変して記しておきます。
上手なきき手とは;
あたたかく心をひらいて接してくれる
話し手の感情を感じとってくれる
話し手の考えや気持ちを反映してくれる
話し手が口ごもってもそのままきいてくれる
きき手の関心や欲求を押しつけずにきいてくれる
下手なきき手とは;
話し手が言おうとしたり、考えている流れを妨げてしまう
すぐ助言をしてしまう
問題をそらしてしまう
話し手の問題を決めつけてしまう
「私緒そうだったの」ときき手の問題にもっていってしまう
沈黙や間をあけてはいけないと思っている
話し手の質問をさける
相談員になるために相談の原理、知識、技法を学ぶことは必要です。しかしながら、相談活動において大切なのは、相談をよせてくる人(かけ手)と出会う相談員(きき手)自信のあり様です。相談員自身が自己へのきづきの枠を広げ、相談の知識や技法には、相談員の人格に統合され、生かされるようになることが求められます。理論や技法だけが先行する関わりにならないように心がけたいものです。
この冊子を活用していただけたら幸いです。 (有田モト子)
感想;
相談者のために精一杯できることをしたい。
心のキャッチボールができるようにしたい。
相手と自分の人格の交じり合いになるのでしょう。
「どうして死んではいけないの?」「生きる意味は」
相談員自身もこのことを考えて自分なりの考えを持っている必要があるのでしょう。
そして一回性の電話であっても、人と人との出逢いであり、貴重な縁であり、出逢えたことにお互いが感謝できると素敵だと思いました。
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