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「転落の記 私が起こした詐欺事件、その罪と罰」本間龍著 ”仕事のトラブル回避から蟻地獄へ、友人を裏切り詐欺、闇金、愛人など”

2022-05-07 02:14:48 | 本の紹介
本間龍
1989年、博報堂に中途入社。2006年同社退職後、在職中に発生した損金補填にまつわる詐欺容疑で逮捕・起訴され、栃木県の黒羽刑務所に1年間服役。


出所後、その体験をつづった『「懲役」を知っていますか?』(学習研究社)で作家デビュー。メディアと原発、司法行政と刑務所システムをテーマに作家活動をしている。

・15億円までコスト削減が出来る案を提案することが出来た。案の定、プレゼンの結果を内々に確認したところ、博報堂が制作体制でもコスト面でも他社を圧倒していた。
ところが、プレゼンに勝利したのに、博報堂の扱いにならなかった。
理由は、ここ6年ほど東急に任せていて制作体制もうまくいっているから、プレゼンでのコスト削減比較には負けたが引き続き東急に任せたい、という理不尽なものだった。それでは一体何のために競合プレゼンにしたのかわからないではないか。・・・
更に失望したのは、夏の沖縄キャンペーンのコマーシャルソングに起用しようと、後にサザンオールスターズ最大のヒット曲になった『ツナミ』のデモテープを一番最初に(JAL)持って行ったのに、あっさりと、
「サザンなんてもう古いでしょ」
と打ち捨てられたことだった。・・・
ちなみに『ツナミ』はその後コカ・コーラ社がCMに起用し、サザン最大のヒット曲となった。

・「実はさ、また札幌に戻ることになったんだ」
彼(同期入社)はバツが悪そうな表情でそう言った。
「え? どういうこと」
私は驚いて聞き返した。
「どうもこうもないよ。直属の上司とうまくいかなくてさ。おまけにこっちにきて担当した得意先でちょっと失敗してさ、それでまた飛ばされちゃったんだ」・・・
私は、この会社は一体なんという仕打ちをするのだろう。とやり場のない怒りを感じるとともに、明日は我が身だという焦燥感に強くかられた。
というのも、その頃私は、ある得意先で発生した未収金が回収出来ずに悩んでいた。
 某コピー機メーカーの子会社だったが、社長が本社から来たワンマンで非常に扱いにくい人物だった。昨年末にこの会社の新製品のパンフレットを制作したが、担当者が相次いでその社長に嫌気がさして退職してしまい、請求業務が滞ってうっかり約一千万円の製作費の請求が同社の期末をまたいでしまったのだ。
こちらが期末に請求しなかったというミスもあったが、得意先の経理担当者が退職して処理が宙に浮いていたし、担当者が確定してきちんと交渉すれば回収出来ると思い、当初は特異策の処理が遅れているだけだ、と上司には報告していた。

・刑務官が、
「じゃああなたは雑居房で他の人と一緒でも大丈夫だよね」
と言ったのを聞いて、これはもう絶対にまずいと思って、
「あのう、すいません。実は私、同性愛者でして」
とそれこそ清水の舞台から飛び降りる覚悟で嘘をついた。
すると人のよさそうな中年の刑務官は明らかに慌てた様子で、
「ええっ、君、それは困るよ、本当にそうなの? 参ったなぁ」・・・
その後、係が変わっていろいろ聞かれたが、結局、金田さんが言っていた通り、本人が同性愛者だと言っているのを覆す決定的な検査方法はあるはずもないので、そのままめでたく独居房を確保することが出来た。

・そして六月になって、890万にのぼる過払い金を回収したが、事務所費用などを差し引くと、私には五万円程度した返金出来ない旨の書類を東京拘置所に送りつけてきた。
私は独居房でそれを読み、久々に頭の血管が切れるかと思うほど激怒した。
確かに依頼していた闇金・サラ金の総件数は90件近く(闇金が9割)にのぼっていたが、一年半近くかけて過払い・元金を回収できたのは闇金五件・サラ金十件だけで、ようするにサラ金以外はほとんど何も回収できていなかった。
それにもかかわらず、全件に対して「和解報酬金」を設定し、430万円の費用を請求してきていたのだ。サラ金などは弁護士名で過払い請求書を送りつければすぐに返還してくるのだから、ITJが実質的に回収で骨を折ったのは闇金の五件だけだった。・・・
結局、約一か月かかって367万円を取り戻すことに成功した。

・「判決。懲役三年とした原判決を破棄し、被告を懲役二年に処す。ただし未決拘留期間246日を刑に参入する」

・「本間、お前にはお前にしか出来ない生き方が償い方があると俺は思うんだ。本を書くというのは、まさにその一つだと思う。とにかく焦らないで、ゆっくりやってみろ。お前なら必ず出来る。俺は期待してるぞ」
まるで小学生の子供を諭すように、中川先輩は笑いならがそう言って帰っていった。

感想
未回収金1,000万円を正直に早く上司に報告すれば、ボーナスマイナス&左遷(地方に異動)程度で終わっていたと思います。
しかし、正直に報告するとせっかく地方から本社に栄転したのがふいになると思いました。
また上司との関係も良くなったようです。
そこで1,000万円を何とか会社にバレずに処理するために、自分で払いました。
そのお金は友人に博報堂の株公開前に株が入手できると嘘の情報を流して、お金を集めました。

それだけでなく、愛人ができ、その食事代やホテル代、プレゼント代のお金も必要になり、サラ金、闇金にも手をつけたようです。
返済金を返すためにまたサラ金に借り、サラ金で借りられなくなると闇金という蟻地獄を選択してしまいました。

妻と子どもも裏切り、友だちを裏切った結果でした。

再就職では刑務所に入っていたことを隠していれば就職できたのですが、後でわかると迷惑かけると思って正直に言うと採用されなかったそうです。
ネットで検索するとすぐにわかることだからです。

通常では選択しないようなことを人はしてしまうという実例でもあるようです。

本間龍氏講演
電通に憲法改正国民投票

博報堂に務めていたら、これだけの本を出版することはなかったでしょう。
失ったものを数えることより、してしまったことを後悔するよりも、今できることをすることなのでしょう。
裏切った多くの友人には、必ず返金すると伝えておられるそうです。
妻と子どもには慰謝料と養育費を払っているようです。
どう償うか、それを示していくことなのでしょう。

人はつい過去のことを悔やみます。
あたりまえです。
あの時どうしてあんなことをしてしまったんだろう。
それを悔やんで悔やんで、体調も悪くなってしまいます。
両脚失っても希望の結婚、ウクライナで地雷被害の女性「人生を諦めない」
看護師のお仕事をしていて、地雷を踏んで両足切断、左手指4本喪失。
いろいろ理不尽なことが起きます。
それでも生きていく。
だったら、前を向いていたいとの気持ちなのでしょう。
まだまだできることがあると思ってしまいます。

博報堂は競合の厳しい会社ではないと思ったのですが、そんな会社はないのかもしれません。
JALも当時は経費節約との考えなかったようです。
まさに”おごれるもの久しからず”です。

著者は予期しない人生ですが、そこでどうするかなのでしょう。
犯罪を犯してしまわなければ、これだけの本を著すことはなかったでしょう。

単著
『「懲役」を知っていますか? ―有罪判決がもたらすもの―』学習研究社
『名もなき受刑者たちへ ―「黒羽刑務所第16工場」体験記―』宝島社 2010 (宝島sugoi文庫)
『電通と原発報道 ―巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ―』亜紀書房
『大手広告代理店のすごい舞台裏 ―電通と博報堂が圧倒的に強い理由―』アスペクト 2012 I
『転落の記 ―私が起こした詐欺事件、その罪と罰―』飛鳥新社 2012
『原発広告』亜紀書房 2013
『原発広告と地方紙 ―原発立地県の報道姿勢―』亜紀書房 2014
『原発プロパガンダ』岩波書店 2016(岩波新書 新赤版)
『電通巨大利権 ―東京五輪で搾取される国民―』サイゾー 2017
『メディアに操作される憲法改正国民投票』岩波書店 2017 (岩波ブックレット)
『ブラックボランティア』角川書店 2019
共著
『だれがタブーをつくるのか : 原発広告・報道を通して日本人の良心を問う』鈴木邦男共著 亜紀書房 2013
『広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM』南部義典共著 集英社新書 2018 

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