あきののに ささわけしあさの そでよりも あはでこしよぞ ひちまさりける
秋の野に 笹分けし朝の 袖よりも あはで来し夜ぞ ひちまさりける
在原業平
秋の野の笹を分けて歩いた朝よりも、あなたに逢えずに帰ってきた夜の方が、涙で一層袖が濡れているのですよ。
早朝に笹の間をかき分けて歩くと、笹に置いた朝露で袖が濡れる。でも、愛しい人に逢えずに帰ってきた夜には、涙でもっと袖が濡れるというわけです。これは女性に向けて贈った贈答歌。女性からの返し(0623)とともに、伊勢物語第二十五段にも載っています。