漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0632

2021-07-23 19:26:27 | 古今和歌集

ひとしれぬ わがかよひぢの せきもりは よひよひごとに うつもねななむ

人知れぬ わが通ひ路の 関守は 宵々ごとに うちも寝ななむ

 

在原業平

 

 人に知られず密かに私が通う路の番人には、夜毎に居眠りでもしてほしいものよ。

 業平の歌ですので、例によって歌物語かとまごうような長い詞書がついています。長いですが、全文を引用します。

 東の五条わたりに、人を知りおきてまかりかよひけり。忍びなる所なりければ、門よりしもえ入らで、垣のくづれよりかよひけるを、たびかさなりければ、あるじ聞きつけて、かの道に夜ごとに人を伏せて守らすれば、行きけれどえあはでのみ帰りて、よみてやりける。

 「歌物語かとまごう」と書きましたが、実際に伊勢物語の第五段にも収録されています。