漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0628

2021-07-19 19:43:17 | 古今和歌集

みちのくに ありといふなる なとりがは なきなとりては くるしかりけり

陸奥に ありといふなる 名取川 なき名とりては 苦しかりけり

 

壬生忠岑

 

 陸奥に名取川という名の川があるというが、その名の通りありもしない噂を立てられるのは苦しいことです。

 「名取川」は宮城県の仙台市・名取市を流れる河川。「名を取る」の連想から、この歌を始めとして多くの和歌に詠み込まれています。有名どころで、西行と定家の歌をご紹介しておきましょう。

 

なとりがは きしのもみぢの うつるかげは おなじにしきを そこにさへしく

名取河 岸のもみぢの 映る影は おなじ錦を 底にさへ敷く

 

西行
(山家集 下巻 第1130番)

 

 

なとりがは いかにせむとも まだしらず おもへばひとを うらみつるかな

名取河 いかにせむとも まだしらず 思へば人を 恨みつるかな

 

藤原定家
(続拾遺和歌集 巻第十三 「恋歌三」 第914番)