あやなくて まだきなきなの たつたがは わたらでやまむ ものならなくに
あやなくて まだきなき名の たつた川 渡らでやまむ ものならなくに
御春有助
不合理なことに、早くも根も葉もない噂が立ってしまった。だからと言って、竜田川を渡らないでおくようにあの人に逢わずに済ますなどという程度の恋ではないのです。
「あやなし」は「道理に合わない」「説明がつかない」意。「たつ」は「(噂が)立つ」と「竜田川」との掛詞ですね。逢う前に噂がたってしまったからといって逢わずに済ますような、そんな程度の浅い恋ではないのですよ、という詠歌ですね。
作者の御春有助(みはる の ありすけ)は平安時代前期の官人にして歌人。名前は「有輔」と記されることもあるようです。古今集には二首、入集しています。