露をなど あだなるものと おもひけむ わがみもくさに おかぬばかりを
露をなど あだなるものと 思ひけむ わが身も草に 置かぬばかりを
藤原惟幹
これまで、どうして露をはかないものと思っていたのだろうか。草に置かないというだけで、わが身も同じようにはかないものであったのに。
詞書には「身まかりなむとてよめる」とあります。草に置く露をはかないものと思っていたけれども、なんのことはない、わが身も同じくはかないものであったとの、辞世の詠歌ですね。
作者の藤原惟幹(ふじわら の これもと)は不詳の人物で、名前以外にわかっていることはほとんどありません。古今集への入集はこの一首のみです。