漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 642

2025-01-17 05:04:47 | 貫之集

しるしなき けぶりをくもに まがへつつ よをへてふじの やまはもえけり

しるしなき 煙を雲に まがへつつ 世をへて富士の 山は燃えけり

 

富士の噴煙が立ち上っても雲にまぎれてしまうように、私の恋は何のしるしもなく、愛しい人に通じないままに、それでも燃え続けているのであるよ。

 

 富士の噴煙を燃え盛る恋心に喩えての詠歌。同じモチーフの歌が 553 にもありましたね。
 この歌は新古今和歌集(巻第十一「恋歌二」 第1008番)に入集しており、そちらでは第五句が「やまともえなむ」とされています。