をみなへし おおかるのべに やどりせば あやなくあだの なをやたちなむ
女郎花 多かる野辺に 宿りせば あやなくあだの 名をや立ちなむ
小野美材
女郎花がたくさん咲いている野辺に宿を取るならば、いわれのない浮名を立てられることになるのだろう。
その名から、女性に例えられる女郎花。それがたくさん咲いている野辺の中で宿を取れば、あいつは女色にふけっていると根も葉もない噂を立てられてしまうよ、というわけです。ちょっとおどけて詠んでいるのでしょう。
作者の小野美材(おののよしき)は平安時代前期の貴族で、高名な小野篁(おののたかむら)の孫。古今集には、美材は二首、篁は六首が入集しています。百人一首にも採られている篁の次の一首(第11番)は良く知られていますね。古今集では 0407 に登場します。
わたのはら やそじまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人にはつげよ 海人の釣り舟