たのめこし ことのはいまは かへしてむ わがみふるれば おきどころなし
たのめこし 言の葉今は 返してむ わが身ふるれば おきどころなし
藤原因香
これまで私に期待をさせてきたあなたの手紙ですが、もうお返しします。年老いた私の身と同じく、あなたからの手紙を置いておく場所もありませんから。
詞書には「右大臣が一緒に住まなくなったので、昔右大臣からもらった手紙を集めて返すと言って詠んで送った」とあり、「言の葉」がここでは手紙の意であることがわかります。右大臣とは源能有(みなもと の よしあり)のことで、次の 0737 に能有からの返歌が採録されています。