漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0908

2022-04-25 05:33:44 | 古今和歌集

かくしつつ よをやつくさむ たかさごの をのえにたてる まつならなくに

かくしつつ 世をや尽くさむ 高砂の 尾上に立てる 松ならなくに

 

よみ人知らず

 

 このように過ごしながら世を終えてしまうのでろうか。高砂の峰の上に立っている松でもないのに。

 「このように」とは「高砂の尾上の松のように」ということで、長生きではあるけれども孤独、といった意味合いでしょうか。句末の「なくに」を順接と捉えればこのような解釈になりますが、「なくに」には順接、逆接両方の意味があり、逆接と捉えて「高砂の松のように長生きはできないのだから」とする解釈もあるようです。ただそう解釈すると、「かくしつつ」の「かく」の指し示す内容がこの歌だけからではわからなくなりますね。


古今和歌集 0907

2022-04-24 06:58:00 | 古今和歌集

あづさゆみ いそべのこまつ たがよにか よろづよかねて たねをまきけむ

梓弓 磯辺の小松 誰が世にか よろづ世かねて 種をまきけむ

 

よみ人知らず

この歌は、ある人のいはく、柿本人麿がなり

 

 磯辺の小松は、いったい誰の世に、万代も先を見越して種を蒔いたのだろうか。

 「梓弓」はここでは「磯辺」の「い」にかかる枕詞。弓を「射る」ことから、同音の「い」にかかっています。第四句の「かね」は「かぬ(兼ぬ)」の連用形で、ここでは「予測する」意。生長の遅い松がここまで大きくなるのにどれほどの時をへてきたのか、との詠嘆の想いですね。


古今和歌集 0906

2022-04-23 06:12:31 | 古今和歌集

すみよしの きしのひめまつ ひとならば いくよかへしと とはましものを

住吉の 岸の姫松 人ならば いく世か経しと とはましものを

 

よみ人知らず

 

 住吉の岸の姫松がもし人だったならば、どれほど長い年月を経てきたのかと尋ねてみるだろうに。

 「住吉」は「住の江」に同じ。第五句の「まし」は反実仮想です。一つ前の 0905 と同じ構想、感慨の詠歌ですね。


古今和歌集 0905

2022-04-22 06:24:31 | 古今和歌集

われみても ひさしくなりぬ すみのえの きしのひめまつ いくよへぬらむ

われ見ても 久しくなりぬ 住の江の 岸の姫松 いく世経ぬらむ

 

よみ人知らず

 

 私が見るようになってからでも長い時が過ぎた。住の江の岸の姫松はどれほどの世を経てきたのであろうか。

 「住の江」は現在の大阪市にある地名で、松の名所とされる地。「姫松」は小さな松の意で、松は長寿とされることから、小さい松であってもどれほど長い時を経てきたのかとの感慨を詠んでいます。


古今和歌集 0904

2022-04-21 05:18:26 | 古今和歌集

ちはやぶる うぢのはしもり なれをしぞ あはれとはおもふ としのへぬれば

ちはやぶる 宇治の橋守 なれをしぞ あはれとは思ふ 年の経ぬれば

 

よみ人知らず

 

 宇治の橋守よ、あなたのことをしみじみと思うよ。長い月日を経てきたので。

 「ちはやぶる」は「宇治」に掛かる枕詞。実際の橋守個人というより、645年創建とされ、長い長い年月を歳月を経てきた宇治橋そのものに思いをいたしているというところでしょうか。