漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 345

2024-03-26 06:40:27 | 貫之集

山の月

くさもきも みなもみぢすれども てるつきの やまのははよに かはらざりけり

草も木も みな紅葉すれども 照る月の 山の端はよに かはらざりけり

 

山の月

草も木もみな紅葉するけれども、その紅葉に照り映えた月の光のさす山の端は、けしてその姿を変えることはない。

 

 第一句・第二句を「草木みな 紅葉すれども」と、字余りのない形としている写本もあるようです。やはりそちらの方が和歌としてはしっくり来ますね。


貫之集 344

2024-03-25 05:00:32 | 貫之集

野の花

あきののの ちぐさのはなは をみなへし まじりておれる にしきなりけり

秋の野の 千ぐさの花は 女郎花 まじりて織れる 錦なりけり

 

野の花

秋の野に咲くさまざまな草の花は、まるで女郎花をまぜて織った錦のようであるよ。

 

 文字通りの風景を詠んだものとも、錦をまとったひときわ美しい異性を詠んだものとも思えますね。


貫之集 343

2024-03-24 04:52:26 | 貫之集

しらくもの ながるるとのみ みえつるは おちくるたきの つねにぞありける

白雲の 流るるとのみ 見えつるは 落ちくる滝の つねにぞありける

 

白雲が流れているとばかり見えるのは、落ちて来る滝のいつもの姿なのであったよ。

 

 これまで白玉(033063178)や白糸(044)に見立てられていた滝ですが、ここでの見立ては白雲。白玉や白糸に比べると、「白雲のような滝」というのはちょっとピンとこない気がしますね。どのような絵柄の屏風だったのでしょうか。この歌が寄せられた絵の方を見てみたいです。


貫之集 342

2024-03-23 06:18:40 | 貫之集

人の家に花橘あるところ

としごとに きつつこゑする ほととぎす はなたちばなや つまとなるらむ

年ごとに 来つつ声する 時鳥 花橘や 妻となるらむ

 

人の家に花橘があるところ

毎年訪れては橘の木にとまって鳴く時鳥は、橘の花が妻となっているのであろうか

 

 時鳥と橘も古典和歌では定番の組み合わせ。古今和歌集でも 141155 に見られます。