龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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4月15日(金)のこと<福島県、米の作付け見合わせ>

2011年04月15日 23時55分00秒 | 大震災の中で
福島県内の米作付け見合わせは、13市町村に上った。
いわき市、南相馬市、田村市、川俣町、双葉町、浪江町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町、川内村、葛尾村、飯舘村。

それ以外の市町村は米の作付けがOKなのだそうだ。

ここでも「いわき市」は、難しいところに立たされている。

保留された他の12市町村は全て避難指示区域・計画的避難区域・緊急時避難準備区域のいずれかになっている。

いわき市だけが、なんでもない場所なのに保留だ。
なぜに?と思うのは、いわき市民だけではあるまい。

救援物資の配分・配送が滞っているのも、他の地域に比べて被害状況のアピールが弱いのも市長のせいだ、とか、東京の方に行っていて地元不在の時があったから全てが遅くなるのだとか、政治に頑張ってもらわないと、という期待が市長への批判になって聞こえてくる。

ちなみに私の職場近くの避難所は、一月以上経っているのにいまだに水が出ない。
周辺地域は復旧したのに、避難所だけが断水のままだ。
避難所ぐらい、水の出るところ=トイレとお風呂の心配が少ないところにしてほしいものだが。

一つ一つのことの当否は分からないけれど、なかなかスムーズにことが運ばないのは、いわき市が広すぎるのも一因だろう。

いわき市は単純に面積が広く人口も多い。
米の作付け保留となった13市町村のうち、その他の12市町村は合わせても20万人なのに、いわき市だけで34万人。そして市内の各地区ごとに産業構成も異なっている。
ほんの十年前までは日本一広い市だったわけだし(現在の日本一広い市は清水市と合併した静岡市)。
広大な面積にはりめぐらされた水道管は震災で寸断され復旧に1ヶ月以上かかっている。
さらに4月11日の余震で、また断水が広範囲に起きている。


ほとんど被害がなく、放射線量も十分に低いところもあれば、瓦礫だらけでしかも1ヶ月放置されたために、風評だけでなく本当に累積線量があがってしまい、廃棄物としても、汚染物質としても処理できない「狭間」の瓦礫がなんと290万トンも生じてしまった、という地区もある。

加えて沿岸の津波被害はいわき市においても甚大なのに、一部が屋内待避の円内に入ってしまった結果、物流も人の流れも遅れてしまい、復旧のメドも見えていない。とくに、復旧に不可欠な業者の不足は、さまざまな局面での復興を困難にしている。

そんなこんなでいわき市長は市民からなにかと評判が悪い。
南相馬市長のような怒りを全国に発信することもできず、佐藤知事のように原発被害を強調することもできず、反対に安全性宣言も大きく示すこともできず、風評被害とも十分には戦えなかった。

まあしかし、この1ヶ月誰がやったらうまくいったのか、と考えると、本当に難しい舵取りだったのだろうと思う。

ただ、(ここからは推測の域を出ないが)現いわき市長は、利益の調整や再配分、必要な事業への対応能力は十分ではあっても、こういう非常事態においてもっとも重要な「全体への発信能力・方法の適切な適用・状況定義力」などなどの点には、見るべきものがなかった、ということに尽きるのではないか。
田舎の、単なる調整型の自治体の首長には、いささか今回の舵取りは荷が重かった、ということか。

中途半端に大変さが重なった「いわき市」は、「数値」では汚染で福島市さえ超えられず、被災市民の数では宮城や岩手の町にも及ばない。原発からの距離からしても、微妙に遠い。

だから、目に見える数字や被害を並べただけでは、十分な政治的発信にならない。

だが「権力とは状況定義力」(ミシェル・フーコー)のことだ。
田中康夫元知事でも、東国原前知事でも、石原慎太郎再選知事でも、橋下現知事でも、枝野官房長官でもいいのだが、彼らの政治的武器は、

明らかに言説による「状況定義力」の巧みさと、メディアを意識した発信力の強さだ。ま、もちろんバカじゃ困るから勉強はしてもらわないとこまるし、口先だけじゃ、その「定義力」も長続きしないんだけどねぇ。

いわき市の首長に、上記のような色物的パフォーマーの資質をこんなときだけ願うのは、無い物ねだりだとは知っている。

しかし、今からでもいい。
現況をきちんと発信できる「ことば」を持った人がいわき市にもほしい。
メディアを身近に引きつけて、適切なタイミングで強度を持った「ことば」を世界に向かって差し出せる人が。
今までのような「政治家」ではなくてもいい。

適切に言説権力を行使できるパフォーマーが要るのだ。
それは福島県にも言えることだけれど、玄侑宗久さんとか、西田敏行さんとか、和合亮一さんとか、いないわけではない。

いわき市にもそういう人がほしいな。誰か「ことば」を持った人、選挙に出ませんか?

○×さんとか、▲■くんとか、どうよ(笑)?

(後日、いわき市は完全に制限区域から外れました。米の作付けもできるようになったのかな?それはありがたいことです。「なんでもない場所」としての最前線、いわき市の悩みは続くのでしょうね)