一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

スチームボーイ

2005-05-04 | キネマ
「スチームボーイ」

感想を一言で言えば「劇場で観ればよかった」



19世紀末、蒸気機関の発明で産業革命に沸いたイギリスでのスチーブンソン(蒸気機関の発明者)のライバルを祖父に持つ天才発明家一家の少年の物語

何しろ絵の美しさ、迫力に脱帽。
もともと大友克洋は細密な描写が持ち味なんだけれど、それがメカに限らず、19世紀末のロンドンの町並みの描写にも生きている。
宮崎駿は最近CGを多用しているけれど、(素人目なので間違いかもしれないですが)セル画独特の奥行きを感じさせる絵が美しい。

ストーリー自体は、大友克洋にしては真っ当な、少年のビルドゥングスロマン。
ただ、はっきりと善悪を分けないところは「らしい」といえばらしい。

その分、破天荒なストーリー展開とかはなく、きれいにまとまっているが、ところどころに「人間、筋や理屈じゃないぜ」という遊びが垣間見えて楽しい。


僕は大友克洋は「童夢」からはいって、昔の作品に遡っていったので、背景の説明のないアプリオリな大きな力、とか不条理とかが持ち味だと思っていた。

彼の絵は「破壊」の場面がけっこう多くて、破壊の無条件の楽しさを(その快感の危なさも含めて)生き生きと描いている。

今回もかなりいろいろなものを徹底して壊していて、その辺はいちいち反省しちゃうジブリ系より潔くていいと思う。

そこで思い出すのが「気分はもう戦争」
もう20年以上前に本屋で立ち読み(昔は立ち読みができた)したので、正確な記憶はないが、
中ソ戦争に巻き込まれた主人公が正規軍(自衛隊?)に加わらないか、と言われて
「この戦争は自分が勝手に始めた戦争なんだ。自分の戦争は自分の好きなようにやる。人から言われて戦争なんてできるか。」
というようなことを言い返すシーンを思い出した。
※ただ、この本の原作は矢作俊彦だったんですね。


人物の造形が今ひとつ足りないとか、大友克洋にしてはおとなしい、とかいろいろ批評されそうだけど、アニメとしてはとても上質で楽しめる映画だと思います。
コメント (3)
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