一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『巨大投資銀行』(+ワールドカップ昔話)

2006-06-18 | 乱読日記
こういう「外資系投資銀行の内幕」系の本は著者の思い込みや根拠の薄い噂話などが中心で中身が薄いことが多いのですが、著者の雑誌記事を見て、かなり綿密な取材と情報網を持っていると感じたので買ってみたのが、黒木亮『巨大投資銀行』

1980年代から外資系投資銀行が、日本の未発達・経験不足の金融機関/金融市場相手にどうやってビジネスをしていたかを、トレーディング、M&A、損失先送り商品に携わる日本人を軸に描いています。

投資銀行の実情(仕事の仕方とか給与体系とか昇進の仕方)や日本の金融機関や市場の後進性とそこをテコにしたビジネスを彼らがいかに展開して行ったかを(友人から聞くのと同じくらい)リアルに描いています。


会社名などはほとんど実名なのですが、登場人物や一部会社名の仮名が(「モルガン・スペンサー」とか(確か73億円の高額納税(収入で約7億円)で話題になった)ソロモン・ブラザーズの明神氏をモデルとした人物が「竜神」だったりと)そこだけ妙なのはご愛嬌。

登場人物は私の1世代前の人たちで、私が社会に出る前、日本の「金融ビッグ・バン」バブル経済以前から90年代までを舞台にしています。
途中の部分からは、自分の経験や知り合いなどの話に出てくるようなことも多く、ああ、そういうことがあったよな、と、より実感を持って思い出されます。
損失先送り商品などは、90年代の後半になってもまだ売れていて、「これじゃ日本の金融機関はダメだよな」といいつつ地方出張して売りまくっていた友人の姿が重なります。

裁定取引の仕組みとか、先送り商品がどうやって作られなぜ売れたか、とかM&Aの進め方など、も変な解説書よりはわかりやすく書いてあります。

また、登場する主要な日本人は、日本人としての矜持を持っている人が多いのですが、これは筆者の思いなのか、世代的な問題なのか、上の友人同様外資系にいると却ってそういう気持ちになるのか(留学した人などもそうですね)、そんなことを考えながら読むのも一興です。


90年代以降の話については、日本の不良債権処理を新生銀行の誕生をを中心に描いた『セイビング・ザ・サン』やヘッジファンドの興隆とLTCMの崩壊を描いた『LTCM伝説』がお勧めです。

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(追記)
一ヶ月ちょっと前の判例時報に、モルガン・スタンレーのダイレクター(日本の会社でいうと平部長、昨日の麻薬の例えで言えば大口のディーラー(失礼!)くらいのポジション)が時間外給与の支払いを求めた訴訟が載っています。
けっこう詳細に給与体系とか実額まで出ているので、(個人的にはモルスタに恨みもないので引用まではしませんが)興味のある方はご参照ください。
ただ、給料がいいからという動機だけで働くのはなかなか厳しいということは本書を読めばわかります。
しかしこれ、どう考えても勝ち目のない訴訟で、判決文の公開による意趣返しを目的としたとしか思えませんね。(紹介しといて言うのもなんですが)本件ではモルスタの人事担当とかこの原告の上司だった人に同情しちゃいます。
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PS
両書はこのブログでも以前(こちら参照)紹介してます。
ちょうど『セイビング・ザ・サン』のころは、けっこう脂っこい仕事をしていたので筆が滑るとまずいかな、と自粛して通り一遍の記事になってますが。

今日はクロアチア戦なので、また、ワールドカップの思い出話になりますが、1998年のフランス大会の時はとてもそれどころではなかったのですが、仕事帰りに4,5人で飲みに行ったらちょうど準々決勝のフランス対イタリア戦のキックオフのところで、最後まで見てしまった記憶があります。
イタリアが例の「カテナチオ」で守りを徹底的に固め、攻撃は2トップ(デルピエロとヴィエリ、ロベルト・バッジョは控えだった)への縦パスだけ、という作戦に対してフランスもそれをこじあけられず、0-0、PKでフランス(ジダンが若手のホープで、ジョルカエフとかいたよなぁ)がかろうじて勝利、という見ていて面白くはないけど途中で帰りにくい試合をされてしまいました。
結局この大会フランスが決勝でブラジルをやぶって優勝したのですが、フランスの戦力(ともともとのイタリアのスタイル)を考えると、戦術としては仕方なかったんでしょうね。
でも店を出たのが3時くらいで翌日はつらかった・・・







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