一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

二飜縛り、後付け禁止

2006-06-29 | あきなひ

基本的にはいいことなんでしょうが、新興市場のトラブルを見ると気になる話です。

REIT海外投資解禁へ・国交省2007年度にも
(2006年6月29日 07:02 Nikkei Net)

国土交通省は2007年度にも、国内に上場する不動産投資信託(REIT)が海外不動産を購入し、運用資産に組み入れることを解禁する。国内外への分散投資を可能にし、安定的に収益を出せるようにする狙いだ。年内にも海外不動産の評価方法や情報開示義務などの指針を作り、投資法人が海外物件に投資できる体制を整える。  

新聞記事の方では為替リスクや法制度の変更のリスクなどにもふれていましたが、一方でメリットについても

例えば、ホテルに投資しているREITが海外のホテルを資産に組み込めば、国内の天候が不順だった場合のリスクを抑える効果が見込める。
物流施設などに投資しているREITは、国内企業が海外に物流拠点を広げるのにあわせ、試算対象を拡大できる利点がある。

などといってます。
これは他紙でも同様の表現があったのでリリース元からのネタなんでしょうが、こんな能天気でいいんでしょうか。

前者はホテルの収益が天候不順に主に左右されるように書いてますが、天候不順に左右されるのは主にリゾートホテルで、リゾートホテルの収益は天候だけでなく競合ホテルの登場、当該観光地の人気下落などにも大きく左右されるわけですし、逆に固定賃料でオペレーターと契約すれば、天候リスクはないわけです。(また、そもそもリゾートホテル投資はリスクが高いのでそれ中心のREITというのは期待利回りも相当高くなくてはおかしいはずです)
また、後者も同一テナントに貸すということは、テナントのクレジットの問題や立地・仕様の汎用性の問題もありますので、決して手放しのメリットではありません。


それはさておき一番の心配は、マザーズやヘラクレスの一部銘柄で噂されているようなよろしくない筋の関係が、これら新興市場の開示ルールが厳しくなると、こちらをよろしくない目的で利用するのではないか、ということです。  

「海外不動産の評価方法や情報開示義務などの指針を作り」といったところで、形式的に評価基準を満たしていれば、価格(利回り)自体の妥当性については市場が加熱しているときはうやむやになってしまう可能性があります(新規公開株ブームのときと同じです)。
特にお金を迂回させていると売主の実態の補足は困難になるので定性的にその筋を排除するのも難しいと思います。
その辺、東証もマザーズの二の舞いにならないように気をつけてもらいたいものです。


また、日本の投資家から見た場合、「海外の不動産」というのは為替リスクや相場変動リスク、流動性を考えると 

①日本の国債
②日本の株式
③日本の不動産
④海外の不動産

の順にリスクが高くなるわけですが、本来はその分段階的に期待利回りも高くなければ理屈に合いません。 
日本の不動産と海外の不動産の価格や収益が明確に負の相関関係にない限り、国内投資家にとってよりリスクの高い海外への投資が当然に「分散投資でリスクヘッジ」になるわけではありません。

なので、私たち(ちなみに私はJ-REITを持ってはいませんが)一般投資家は海外不動産を保有したJ-REITについては、配当利回りの目標を(国内のみのJ-REITより)高目に設定する必要があります。  

また、「将来発展の見込みがあるリゾート開発」などといううたい文句に踊らされないように、その将来の開発が配当利回りの向上につながるのか(長期固定賃貸だったら意味ないですし、売却した場合には課税の問題もあります)目論見書やアナリスト・レポートをよく読んだほうがいいと思います(踊った人は自己責任ですから・・・)。  

リベラル右派の私としては新しい試みに難癖をつけるのは本意ではないのですが、もし海外不動産を対象にしたJ-REIT(これって形容矛盾だよなぁ)に投資する場合には

「二飜縛り(=高い期待利回り)、後付け禁止(=配当の確実性)」

でいったほうがいいかと思います(麻雀をご存知ない方はごめんなさい)。

そうであれば、万が一自分の買ったREITが、バブル期に日本企業が投資したリゾートホテルがサラ金会社や怪しげな投資ファンドなどを転々としたものだったとしても、不愉快にはならないでしょうから。

コメント
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