一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

飲酒運転より悪質

2009-04-21 | よしなしごと

事故より隠ぺいのほうが問題、というのはまだまだ徹底していないようです。

飲酒事故の元警視、直前にも事故 20万円渡し口止めか
(2009年4月20日3時10分 朝日新聞)  

栃木県警の元警視で、県交通安全協会の滝田幸夫・元交通安全実技指導室長(62)が飲酒運転で物損事故を起こした問題で、元室長が物損事故直前、別の乗用車と衝突事故を起こしていたことが19日、捜査関係者への取材でわかった。元室長は相手の男性に「迷惑料」として現金20万円を渡し、警察への通報はしていなかった。  県警によると、衝突事故を起こした場合、道路交通法の規定で警察へ通報する義務があるが、現金を受け取った男性の協力が得られないなどとして、道交法違反(事故不申告)容疑での立件はしない方針という。

元警視は、スーパーの駐車場で事故を起こした後、被害者の男性を乗せて近くのコンビニで20万円を引き出して渡したあと、元のスーパーの駐車場に男性を送り届けています(これ自体も飲酒運転ですね。)。 
そしてその後自宅に帰ろうとして運転を誤り、金属製フェンスを突き破って約1.8メートル下の市道に落下し、駆け付けた警察官の検査で酒気帯びが発覚したそうです。

同署は16日、フェンスを突き破った事故について、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで元室長を書類送検した。

とのことですが、最後にフェンスを破らなければもみ消すことができた、ということなんですね。

飲酒運転の罰金は、 

 酒酔い   運転者 100万円以下 同乗者50万円以下 
 酒気帯び 運転者  50万円以下 同乗者30万円以下

なので、20万円でもみ消せるのであれば十分元が取れます。
ケンカでの暴行や器物損壊などでは「示談が成立すれば立件しない」という取り扱いもあるかもしれませんが、飲酒運転による事故も示談が成立すればお咎めなしになると厳罰化の趣旨は損なわれてしまいます。

もしこれが事実だとすれば、取り締まるべき立場にあり、同時に「こうやればもみ消せる」ということ詳しい警察官の行為としては最悪なので、刑事法上は技術的に立件は難しいのかもしれませんが、厳しい懲戒処分に処すべきだと思います。

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『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』

2009-04-21 | 乱読日記
これはおすすめです。

相次ぐ企業不祥事やいじめなど、日本社会の「モラルの低下」や「心の荒廃」がさけばれていますが、その原因と処方箋を社会心理学の観点から分析しています。

従来の日本社会は、閉ざされた環境の中で相互監視と制裁のメカニズムが構成員に安心を保証する「安心社会」だったものが、現代の複雑化した社会ではそれ維持できなくなっていることにあるといいます。

そして、必要なのはリスクをとって他人との関係を積極的に結んでいく、逆に他人に信頼を裏切る者は排除されていく「信頼社会」の構築が必要であると説きます。


「安心社会」(従来の日本社会)では実は「正直は美徳」ではなく、制裁のメカニズムによって強制されているだけで、それが働かないところでは不正直がまかりとおる。閉じられた関係の外にいる「他人を信じてはいけない」ので、外部との関係では信頼を結ぼうとしない、というあたりは説得力があります。
昔言われていた「ムラ社会」ってそういうものですよね。


また返す刀で、最近処方箋として流行の「品格」とか「武士道」を切って捨てています。
カナダ人の学者ジェイン・ジェイコブスの研究によれば、古来人類のモラルは大きく「市場の倫理」と「統治の倫理」に分けられます。

「市場の倫理」は「他人や外国人とも気安く協力せよ」「正直たれ」「契約尊重」というような信頼社会の基本原理であり、「統治の倫理」は「規律遵守」「位階尊重」「忠実たれ」という終端内部の秩序を維持するための安心社会の基本原則が並びます。

ジェイコブスの指摘の重要なところは、この二大倫理の体系が目指すものは全く対立する世界であり、この二つを混ぜることは矛盾と混乱を社会にもたらすだけでなく、最終的には「何をやってもかまわない」という究極的な堕落を生み出すということです。(確かに何をやっても何か一つはそれを正当化する倫理規範にひっかかるわけですから。)

そして著者はこれからは信頼社会を構築するために「武士道」(=統治の倫理)でなく「正しいことが自分の利益になる」という「商人道」(=市場の倫理)を広げて行く必要があると主張します。


「品格」とか「武士道」を大事にしろという主張は、自分を律することを求める一方で、組織の一番上の専横を止められないというところで基本的な欠陥があるんじゃないか、と胡散臭く思っていたところもあり、腹に落ちる一冊でした。





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