一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

鞆の浦 埋め立て差し止め判決

2009-10-02 | 法律・裁判・弁護士

「トトロの森を守れ!」という開発反対の住民のスローガンをよく見かけるのですが、今度はポニョまでかつぎだされました。

屋久島では「もののけ姫の森」(現在はその名称は正式には使われていませんが通称として残っています)というのもあります。


宮崎駿はだんだん弘法大師化しているような・・・


鞆の浦 埋め立て差し止め 「景観は国民財産」計画26年、事業見直し 広島地裁
(2009年10月1日(木)15:45 産経新聞)  

万葉集に詠まれ、昨夏大ヒットしたアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の舞台ともされる瀬戸内海の景勝地・鞆(とも)の浦(広島県福山市)の埋め立て架橋事業をめぐり、反対派住民らが知事の埋め立て免許差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁であった。能勢顕男裁判長は「鞆の浦の景観は住民だけでなく国民の財産というべき公益で、事業により重大な損害の恐れがある」として原告側の請求を認め、免許差し止めを命じた。  

歴史的景観が地元住民にもたらす「景観利益」保護のために大型公共事業を差し止める初の司法判断。免許認可をめぐる国の判断に影響するのは必至で、県と福山市の計画策定から26年の同事業は見直しを迫られることになる。  

能勢裁判長は判決理由で、事業について「公有水面埋立法には住民らの景観利益を保護する目的があり、慎重な政策判断がない限り計画は不合理」と判断。「侵害された景観利益は事業が完成すれば復元が不可能だ」と指摘した。  

そのうえで県側の主張していた渋滞解消や下水道整備といった利便性向上について「必要性、公共性の根拠について調査、検討が不十分。埋め立ては行政の裁量権の範囲を超えている」とし、差し止めが必要と結論付けた。

行政訴訟については詳しくないのですが、手続の瑕疵でなく判断の中身まで踏み込んだ判決は珍しいのではないかと思います。
公有水面埋立法(大正10年の法律なんですね)を見ると  

第四条  都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ為スコトヲ得ズ  
一  国土利用上適正且合理的ナルコト  
二  其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
三  埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト
四  埋立地ノ用途ニ照シ公共施設ノ配置及規模ガ適正ナルコト
五  第二条第三項第四号ノ埋立ニ在リテハ出願人ガ公共団体其ノ他政令ヲ以テ定ムル者ナルコト並埋立地ノ処分方法及予定対価ノ額ガ適正ナルコト
六  出願人ガ其ノ埋立ヲ遂行スルニ足ル資力及信用ヲ有スルコト

とあり、この1号から3号に反するということでしょうか。
「環境保全」というのが立法当時「景観」も含むと意図されていたのかは微妙な感じもしますがそのへんは社会通念の変化ということなんでしょう。

確かに埋め立てて湾を横切る全長約180メートルの橋を作ることと渋滞解消(そもそも渋滞があるのでしょうか)や下水道整備(橋や埋め立てとは関係ないような)の整合性はついていないようにも思います。


環境保護派に追い風が吹いているのか、単に無駄な公共工事だったのかはわかりませんが、八ツ場ダムのように工事が進んでしまったものをやめようというのは政治の仕事、許認可がおりた直後に異議を申し立てるなら裁判所という役割分担の分かりやすい例にはなると思います。

そして、先日の「一票の格差」に対する最高裁判決の「仏の顔も三度まで」風な判決で国会がどのような対応をするかで教科書で習った三権分立が「分立」しているだけでなく全体で機能しているかが問われるわけですが。





 

コメント
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