冬の寒さを凌ぐには温泉に勝るものはない。ということで久しぶりに、南紀は白浜温泉に行った。いつも自動車ばかりなので、たまにはJRで行くことにした。JRとなると、昼食は断然電車の中で取ろう、と思い、近鉄百貨店の地下で好物の魚の天ぷら、野菜の串カツ、京惣菜セット、それに、もちろん飲み物などを買い込み、JRへ。
ところが改札口のあたりが騒然としている。聞いてみると「人身事故があり電車は止まっていましたが、先ほど運行が再開されました、これから来る《特急くろしお13号》で70分遅れです」とさも何でもないように言われる。私たちが乗る《くろしお15号》はどうなるか、聞いてみると、「わかりません、先の13号が来ますので、指定席ではなく、自由席なら乗れます。」とのJR的回答だ。何ということかと腹が立ったが、仕方がないので、買い込んだ弁当・飲み物を持ってホームの自由席ラインに並ぶ。同じような人がいると見えて、結構ラインが伸びている。
そうこうするうちに《特急くろしお13号》がホームに入ってきた。みると自由席車両の半分以上は席が埋まっていて、「大丈夫なのか、下手すると立たなあかんな」と言いながら乗り込むと、先のほうの席が空いているのが見え、なんとか席を確保すくことができた。すると列車アナウンス「15号の指定席券をお持ちのお客様は指定席に移っていただいて結構です。」「え~、何を今頃言ってるねん」、あきれて物も言えない。どうやら、自由席は混んでいるが、指定席は空いているようなのだ。なんたることか!!
波乱の幕開けだったが、電車が走り出し、缶ビールをシュパット開けると、ようやく旅の気分になってきた。ところが、《くろしお》が揺れる揺れる。テーブルに置いている天ぷらと串カツが「すーっ」と滑って危うく落ちそうになるので、それらを右手で抑えながら、左手でビールを飲むという不安定な状態が続く。
白浜温泉になんとか着くと、列車の時間が違うので送迎シャトルバスが終わっていて路線バスで行くことになる。何かついていないので、旅館も心配だったが、これは杞憂だった。旅館は「海舟」、竣工後2年というだけあって、建物は新しいので、なかなかの雰囲気だ。それに、ホテル形式で、仲居さんなどがおらず、あっさりしていて合理的だ。館内は全て畳敷き、廊下の壁面には美しい紀州の写真が飾られている。
入り口で自分の好きな浴衣・作務衣を選べるのもいい。部屋から海を望むと山ばかり眺めてきた眼には、やはり海はいい。
さっそく湯につかる。泉質は無色透明、源泉かけ流しで、加水、加温なし。ナトリウム炭酸水素泉なので、やや塩辛いが、湯冷めしないのがいい。
南高梅を漬ける樽の露天風呂から白浜の海を望むことができた。
夕食は海鮮料理で、小鉢にクジラの刺身などが綺麗に盛られた舟盛りはなかなかだ。酒は地酒「長久」の熱燗がよくあった。
食後にもう一度入浴する。サウナと水風呂に浸かると、ホカホカだ。温泉の後のビールは一段と旨い。おまけに、10時過ぎから「小腹サービス」として、和歌山ラーメンが無料でふるまわれたのも、いい気分にさせてくれた。