あなたを想う 夏の夜空は一時の愛を 沈鬱に誘う 愛を求めるが故に 跋扈する虚しさ 胸を締め付ける 幼い両の心は雨の打つ音のように繊細な音楽を紡ぐ 待ちくたびれた縁日での夕暮れ 肩に手を置いて並んで歩く姿 悠遠を想わせる 壮麗な晩夏の空 何もかもが秋の気配に沈み 握る手には 汗の淑やかな滲み 忽然と漂い来る 恋情の想い こわくを彩る風車が 蝉時雨の空に 淡い恋の心を誘い出す 傍には無花果の花 その周りを旋回する夢見る虫の吐息 始めから最後までを見通したい気持ち あなたを見上げる 鴉が弧を描いては 遠くの空に消えて行った 季節はまた 勾配に差し掛かった辺りで 振り向く 浴衣の袖はそれに釣られ 遊覧を描くように 太鼓の音に消えて行った 祭りの夜は 二人の途を照らす にこやかな花火の曲芸や 麗しい花鳥の唄 しなる指の間から落ちる溜息は もうすぐ訪れる涼風を想わせる 二人は尚も 胡蝶の羽を彷徨い行く 凪いでいる風が 神妙な気持ちにさせる 訪れる冬を前に とろむ夢の儚さを知るように 遊覧船は途方に暮れている ふと着物の袖口を掴む 情緒の黄昏 行くままに やがて恋は愛へと変わる 無秩序な夢は 一時の雨のよう 潤む空の果てには 幾ばくか 不安の涙が この夜に 一つの模様をつける まだら模様 花火は最後の抑揚を見せる
跋扈→ばっこ (悪いモノがうようよしている感じ)
跋扈→ばっこ (悪いモノがうようよしている感じ)