東京大学の西林仁昭教授の研究チームが、水と窒素を原料にアンモニアを作り出す方法を開発した。身近にある水を原料に使い、環境への負荷が少ない常温・大気圧で合成できたのは世界初という。本研究成果は、2019年4月24日の「Nature(ネイチャー)」(オンライン速報版)で公開。
アンモニア(NH3)は合成繊維や化学肥料などの原料として広く使われ、生産量は世界で年約1.5億トン。現在は、水素ガスと窒素ガスを原料に、高温・高圧で合成するハーバー・ボッシュ法で大量生産されている。天然ガスなどから水素ガスを作る過程で大量のエネルギーを消費し、温室効果ガスの二酸化炭素を出す。アンモニア生産は世界のエネルギー消費の1.2%を占めるとの推計もある。
本研究で、水を原料にできたのは、チームが金属のモリブデンを含む触媒と、有機合成の試薬として使われるヨウ化サマリウムの溶液を用いる方法を考案したため。触媒の開発には自然界の細菌によるアンモニア合成に使われる酵素を参考にした。
触媒と溶液、窒素を入れた容器に、水を入れて混ぜると、アンモニアが大量に発生した。詳しいメカニズムは分かっていないが、水素ガスを作る過程がなく、二酸化炭素の排出が少ない。実用化には、連続して効率良くアンモニアを作り続けることが求められる。そのためには、1キロ約2千円するレアアース(希土類)のサマリウムの化合物の再利用が必要で、いかにエネルギーを使わずに出来るかが課題という。
チームは再生可能エネルギーの電力を使うことで実現できるのではないかとみている。また、家庭で水からアンモニアを作り、発電などに利用する小規模装置の開発などに役立つと期待している。水素を燃料として使う時代になれば、輸送などが難しい水素を、生産したアンモニアの形で運ぶことも視野に入れている。西林仁昭教授は「ブレークスルーに成功した次世代型の合成法だ。コストを下げて持続可能な社会につなげたい」と話す。
別の方式でアンモニア合成の工業化を目指している細野秀雄・東京工業大栄誉教授は「アンモニアの合成は、原料の水素を製造する時に大きなエネルギーを消費することが課題だった。水をそのまま水素源として活用するのは省エネルギーの面からも大きな進展だ。ただ、ヨウ化サマリウムをかなり大量に消費する。リサイクルして使うには大量のエネルギーが必要になる。工業化には大きな課題になるだろう」と語る。
◆アンモニア(NH3)の合成
農作物など植物の生育には窒素(N)が必須で、その供給源としてアンモニア(NH3)が使われている。世界の人口は70億人を超え、この人口増加を支えるのが農作物の安定供給である。これには窒素肥料が必要で、肥料原料はアンモニアである。最近では、燃やしても窒素と水しか生成されないため、再エネと組み合わせた水素貯蔵媒体としても期待されている。
アンモニア合成には高温・高圧を必要とし、エネルギーを大量に消費している。一般的には、アンモニアの生産は「ハーバー・ボッシュ法:1906年ドイツで開発」と呼ぶ技術で、400℃~600℃、数百気圧の条件で水素と窒素を反応させて作る。
◆貴金属を使わない高性能アンモニア合成触媒を開発(平成30年1月23日発表)
新しい窒素分子の活性化機構を示唆
東京工業大学細野秀雄教授、多田朋史准教授、北野政明准教授らは、高エネルギー加速器研究機構阿部仁准教授らと共同で、貴金属を使わない高性能のアンモニア合成触媒を開発した。
ポイント
〇金属間化合物LaCoSiが高い触媒活性を実現した。
〇ルテニウムなどの貴金属微粒子の担持を必要としない。
〇活性化エネルギーが極めて低く新しい反応機構が示唆された。
ルテニウムなどの貴金属の担持を必要としない高活性触媒を開発した。電子が陰イオン(アニオン)として働く“電子化物(エレクトライド)”のコンセプトを拡張することで新触媒を検討し、ランタン(La)とコバルト(Co)の金属間化合物LaCoSiが貴金属を用いずに高い活性を示すことを見いだした。
コバルトはルテニウムに次ぐ活性を持つことが知られていたが、LaCoSiはこれまで報告されてきたコバルト系触媒でアンモニア合成において最高の活性を示す。LaCoSi内でのLaからCoへの電子供与が明らかにされ、それが高活性発現の鍵と考えられる。
また、この触媒を用いた反応の活性化エネルギーは同グループが2012年に開発したルテニウム担持C12A7エレクトライド触媒よりもさらに低いものでした。つまり、LaCoSiは従来の触媒に比べ窒素分子の切断(開裂)をより速やかに行うことができ、より低温でのプロセスに有利です。この低い活性化エネルギーは、第一原理分子動力学計算注4)などの解析結果から、窒素分子が触媒表面に吸着した際に窒素分子の振動が励起状態にあり、そこから原子への開裂が生じる、窒素分子の新しい活性化機構が示唆された。
本研究成果は、平成30年1月22日16時(英国時間)に科学誌 「Nature Catalysis」のオンライン速報版で公開された。
◆モリブデン(元素記号は Mo)
原子番号42の元素。原子量:95.96。 クロム族元素の1つ。
密度(室温付近で固体):10.28 g/cm3。
◆サマリウム(元素記号は Sm)
原子番号62の元素。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。
密度(室温付近で固体):7.52 g/cm3
朝から雨、午後も降ったり止んだり。
散歩道の桜(ソメイヨシノ)は桜吹雪となって散り、近所の”ギョイコウ(御衣黄)”が咲き始めた。”ギョイコウ(御衣黄)”はサクラの栽培品種で、ソメイヨシノより遅れて咲く。この地(仙台)では、桜より20日か1月遅れが開花期かな。
花は花弁数が十数枚(10~15位)の八重咲き。花色の初めは白~淡緑色で、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる。花の大きさは数cmであるが、場所・時期により大きさや色合いなどに大きな差があると言う。
名(ギョイコウ:御衣黄)の由来は、花色の黄緑色が貴族の衣服の萌黄色に似ていることから。栽培は、江戸時代に京都の仁和寺で栽培されたのがはじまりとされる。
ギョイコウ(御衣黄)
学名:Prunus lannesiana cv. Gioiko
バラ科サクラ属
オオシマザクラ系のサトザクラ
落葉高木
開花時期は4月下旬
2~3日前の晴れた日に撮影
雨の今日(4月26日)撮影、花の中心に紅色の条線が見える
アンモニア(NH3)は合成繊維や化学肥料などの原料として広く使われ、生産量は世界で年約1.5億トン。現在は、水素ガスと窒素ガスを原料に、高温・高圧で合成するハーバー・ボッシュ法で大量生産されている。天然ガスなどから水素ガスを作る過程で大量のエネルギーを消費し、温室効果ガスの二酸化炭素を出す。アンモニア生産は世界のエネルギー消費の1.2%を占めるとの推計もある。
本研究で、水を原料にできたのは、チームが金属のモリブデンを含む触媒と、有機合成の試薬として使われるヨウ化サマリウムの溶液を用いる方法を考案したため。触媒の開発には自然界の細菌によるアンモニア合成に使われる酵素を参考にした。
触媒と溶液、窒素を入れた容器に、水を入れて混ぜると、アンモニアが大量に発生した。詳しいメカニズムは分かっていないが、水素ガスを作る過程がなく、二酸化炭素の排出が少ない。実用化には、連続して効率良くアンモニアを作り続けることが求められる。そのためには、1キロ約2千円するレアアース(希土類)のサマリウムの化合物の再利用が必要で、いかにエネルギーを使わずに出来るかが課題という。
チームは再生可能エネルギーの電力を使うことで実現できるのではないかとみている。また、家庭で水からアンモニアを作り、発電などに利用する小規模装置の開発などに役立つと期待している。水素を燃料として使う時代になれば、輸送などが難しい水素を、生産したアンモニアの形で運ぶことも視野に入れている。西林仁昭教授は「ブレークスルーに成功した次世代型の合成法だ。コストを下げて持続可能な社会につなげたい」と話す。
別の方式でアンモニア合成の工業化を目指している細野秀雄・東京工業大栄誉教授は「アンモニアの合成は、原料の水素を製造する時に大きなエネルギーを消費することが課題だった。水をそのまま水素源として活用するのは省エネルギーの面からも大きな進展だ。ただ、ヨウ化サマリウムをかなり大量に消費する。リサイクルして使うには大量のエネルギーが必要になる。工業化には大きな課題になるだろう」と語る。
◆アンモニア(NH3)の合成
農作物など植物の生育には窒素(N)が必須で、その供給源としてアンモニア(NH3)が使われている。世界の人口は70億人を超え、この人口増加を支えるのが農作物の安定供給である。これには窒素肥料が必要で、肥料原料はアンモニアである。最近では、燃やしても窒素と水しか生成されないため、再エネと組み合わせた水素貯蔵媒体としても期待されている。
アンモニア合成には高温・高圧を必要とし、エネルギーを大量に消費している。一般的には、アンモニアの生産は「ハーバー・ボッシュ法:1906年ドイツで開発」と呼ぶ技術で、400℃~600℃、数百気圧の条件で水素と窒素を反応させて作る。
◆貴金属を使わない高性能アンモニア合成触媒を開発(平成30年1月23日発表)
新しい窒素分子の活性化機構を示唆
東京工業大学細野秀雄教授、多田朋史准教授、北野政明准教授らは、高エネルギー加速器研究機構阿部仁准教授らと共同で、貴金属を使わない高性能のアンモニア合成触媒を開発した。
ポイント
〇金属間化合物LaCoSiが高い触媒活性を実現した。
〇ルテニウムなどの貴金属微粒子の担持を必要としない。
〇活性化エネルギーが極めて低く新しい反応機構が示唆された。
ルテニウムなどの貴金属の担持を必要としない高活性触媒を開発した。電子が陰イオン(アニオン)として働く“電子化物(エレクトライド)”のコンセプトを拡張することで新触媒を検討し、ランタン(La)とコバルト(Co)の金属間化合物LaCoSiが貴金属を用いずに高い活性を示すことを見いだした。
コバルトはルテニウムに次ぐ活性を持つことが知られていたが、LaCoSiはこれまで報告されてきたコバルト系触媒でアンモニア合成において最高の活性を示す。LaCoSi内でのLaからCoへの電子供与が明らかにされ、それが高活性発現の鍵と考えられる。
また、この触媒を用いた反応の活性化エネルギーは同グループが2012年に開発したルテニウム担持C12A7エレクトライド触媒よりもさらに低いものでした。つまり、LaCoSiは従来の触媒に比べ窒素分子の切断(開裂)をより速やかに行うことができ、より低温でのプロセスに有利です。この低い活性化エネルギーは、第一原理分子動力学計算注4)などの解析結果から、窒素分子が触媒表面に吸着した際に窒素分子の振動が励起状態にあり、そこから原子への開裂が生じる、窒素分子の新しい活性化機構が示唆された。
本研究成果は、平成30年1月22日16時(英国時間)に科学誌 「Nature Catalysis」のオンライン速報版で公開された。
◆モリブデン(元素記号は Mo)
原子番号42の元素。原子量:95.96。 クロム族元素の1つ。
密度(室温付近で固体):10.28 g/cm3。
◆サマリウム(元素記号は Sm)
原子番号62の元素。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。
密度(室温付近で固体):7.52 g/cm3
朝から雨、午後も降ったり止んだり。
散歩道の桜(ソメイヨシノ)は桜吹雪となって散り、近所の”ギョイコウ(御衣黄)”が咲き始めた。”ギョイコウ(御衣黄)”はサクラの栽培品種で、ソメイヨシノより遅れて咲く。この地(仙台)では、桜より20日か1月遅れが開花期かな。
花は花弁数が十数枚(10~15位)の八重咲き。花色の初めは白~淡緑色で、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる。花の大きさは数cmであるが、場所・時期により大きさや色合いなどに大きな差があると言う。
名(ギョイコウ:御衣黄)の由来は、花色の黄緑色が貴族の衣服の萌黄色に似ていることから。栽培は、江戸時代に京都の仁和寺で栽培されたのがはじまりとされる。
ギョイコウ(御衣黄)
学名:Prunus lannesiana cv. Gioiko
バラ科サクラ属
オオシマザクラ系のサトザクラ
落葉高木
開花時期は4月下旬
2~3日前の晴れた日に撮影
雨の今日(4月26日)撮影、花の中心に紅色の条線が見える