農研機構は、セイヨウミツバチの尻振り(8の字)ダンスを自動解読することにより餌として利用されている花の場所を推定する技術を開発した(情報公開日:2019年5月21日)。本成果は、ミツバチ研究の国際誌「Apidologie」に2019年4月にオンライン公開された。
蜂蜜生産や施設園芸作物の花粉交配に広く利用されるセイヨウミツバチは、餌となる花の場所を尻振り(8の字)ダンスで巣の仲間に伝える。ダンスの継続時間が餌場までの距離、ダンスを踊る向きが太陽との角度を表す。このダンス情報を読み取ってミツバチの採餌範囲を把握するには人による観察が必要で、判読に長時間を要した。
本研究は、一般的なビデオカメラを用いて巣箱の中を撮影したビデオ動画から、自動で手動で行われてきた解読作業を飛躍的に迅速化させ、ダンスを抽出・解読する手法を開発した。これにより、野外で飼育されるセイヨウミツバチの採餌範囲を効率よく推定できるようになり、ミツバチの飼育環境を的確に把握できる。この飼育環境に餌源を確保するなどの環境管理を行うことで、花粉交配用ミツバチの増殖や国産蜂蜜の増産に役立つ。
研究の内容・意義
1.尻振りダンスをするミツバチを撮影したビデオ動画を用いて、粒子画像流速測定法(PIV)2)による画像解析から、自動でダンスを抽出・解読する手法を開発した。
2.開発した手法は、一般的なビデオカメラを用いて撮影したビデオ動画を解読できる。地上波デジタル放送と同程度の、HD解像度(1920×1080ピクセル)、約30フレーム/秒が推奨である。
3.手作業では30分間の動画を解読するのに数日を要していたが、本プログラムを用いることで、解読作業のほとんどをコンピューターに任せることができ、大幅な効率化が図れる。
4.開発した手法は、様々な養蜂場での採餌範囲の推定に使用でる。動画の撮影には側面(一面のみ)をアクリル板にした巣箱が必要である。この観察巣箱は、通常、養蜂で使われるものを少しアレンジするだけで作成することができ、また観察の時以外は巣箱を通常の形に戻すことができる。
5.開発した手法を用いて採餌場所の密度推定マップを作成し、その精度を手動で読み取ったものと比較したところ、約70%程度の範囲が一致した。これは、比較的良好な精度といえる。
6.今回、ほぼ同時刻に数キロメートル離れた3つの巣箱で撮影した30分間の動画を用いた検証では、それぞれの巣箱から利用している餌場の方向や距離を特定することができ、巣箱ごとに利用している餌場が異なっているのがわかった。
今後の予定・期待
開発した技術を用いれば、ミツバチの尻振りダンス解読時間を飛躍的に短縮できる。その結果、採餌範囲の時間、日、季節変化(例えば、季節によってはダンスが非常に少ない=魅力的な餌がないこと)を効率よく解析することが可能になる。採餌場所として主に利用している環境を的確に把握することで、例えば、餌場が遠い、農地の近くが餌場になっている、といった蜂群の育成環境の評価にも利用できるようになる。
こうした情報をもとに、必要な時期に餌源を確保するなどの環境管理を行うことで、 花粉交配用ミツバチの増殖や国産蜂蜜の増産に貢献することができる。
用語の解説
(1)尻振り(8の字)ダンス
ノーベル生理学・医学賞を受賞した動物行動学者カール・フォン・フリッシュが発見したミツバチ特有の情報伝達手段である。花粉や蜜、水源など魅力的な資源のある場所を巣の仲間に伝えるダンスで、お尻(腹部)を左右に激しく振動させながら直進し、右回りでもどって再び直進、つぎは左回りでもどる動きをみせるため、ミツバチの動きを上からみたときにアラビア数字の8を描くことから8の字ダンスとも呼ばれる。鉛直方向と腹部を振動させ直進しているときの頭の向きの角度が巣箱から太陽の方向と魅力的な資源のある場所の角度を表し、直進している時間がその場所までの距離で、ダンス継続1秒間がおよそ1kmにあたる。
(2) 粒子画像流速測定法(PIV)
液体や気体の動きを調べるのに、その中に混入させた粒子の動きを、光を照射してカメラ撮影した画像から計測する手法である。移動速度を計測したい画像上の領域を設定し、その中の明るく写る粒子と背景の黒い部分の濃淡から、連続撮影した次の画像上で類似した濃淡の場所を探索することで流体の移動を調べるものである。今回は、ミツバチの体、とくにお尻(腹部)が明るく写るのを粒子に見立ててその動きを計測するのに応用した。本研究ではPIVの計算に市販のソフトウェアを用いたが、オープンソースのプログラムもある。
(3) 採餌場所の密度推定マップと採餌範囲
ミツバチの尻振りダンスは混み合った巣板の上で行われることもあり、一つ一つのダンスには多くの誤差が含まれていることが知られている。そこで、本研究では既往研究の成果に従い、一つ一つのダンスから解読された餌場までの角度と距離の推定誤差を考慮して、採餌場所を密度で推定した。また、この採餌場所密度は巣箱から遠くなるほど低下するため、巣箱からの距離(実際には距離の自乗)で重み付けを行った。
朝は曇り、次第に晴れた。気温も上昇し、最高気温25℃と、夏日になったのかな。
コンクリートの塀の傍で”ゴウダソウ”の花が咲いていた。団扇の様な丸い莢の実も付いている。
名(ゴウダソウ)の由来は、1901年(明治34年)に東京美術学校教授の合田清氏がパリから種子を持ち帰ったのが始まりである。学名はルナリア(Lunaria annua)、属名の Lunaria はラテン語の「Luna(月)」からである。団扇(うちわ)の様な丸い莢(さや)の形から名づけられたものである。
花後にできる莢がとてもユニークで、団扇の様な円形の平たい莢の中に数粒の種がある。最初は淡緑色だが段々と曇りガラスの様な透明感のある薄い膜となる。熟して種が出てしまっても薄い膜(隔膜)が株に残る。
ゴウダソウ(合田草)
別名:大判草(おおばんそう)、銀扇草(ぎんせんそう)、銀貨草(ぎんかそう)
ルナリア(Lunaria)
アブラナ科ルナリア属
一年草
原産地はヨーロッパ中央部
開花時期は5月~6月
花は径2cm位でアブラナ科特有の十字形の花びら
花色は赤紫色、白色もある
花後の種子は薄く半透明で団扇のような形の莢に入っている
蜂蜜生産や施設園芸作物の花粉交配に広く利用されるセイヨウミツバチは、餌となる花の場所を尻振り(8の字)ダンスで巣の仲間に伝える。ダンスの継続時間が餌場までの距離、ダンスを踊る向きが太陽との角度を表す。このダンス情報を読み取ってミツバチの採餌範囲を把握するには人による観察が必要で、判読に長時間を要した。
本研究は、一般的なビデオカメラを用いて巣箱の中を撮影したビデオ動画から、自動で手動で行われてきた解読作業を飛躍的に迅速化させ、ダンスを抽出・解読する手法を開発した。これにより、野外で飼育されるセイヨウミツバチの採餌範囲を効率よく推定できるようになり、ミツバチの飼育環境を的確に把握できる。この飼育環境に餌源を確保するなどの環境管理を行うことで、花粉交配用ミツバチの増殖や国産蜂蜜の増産に役立つ。
研究の内容・意義
1.尻振りダンスをするミツバチを撮影したビデオ動画を用いて、粒子画像流速測定法(PIV)2)による画像解析から、自動でダンスを抽出・解読する手法を開発した。
2.開発した手法は、一般的なビデオカメラを用いて撮影したビデオ動画を解読できる。地上波デジタル放送と同程度の、HD解像度(1920×1080ピクセル)、約30フレーム/秒が推奨である。
3.手作業では30分間の動画を解読するのに数日を要していたが、本プログラムを用いることで、解読作業のほとんどをコンピューターに任せることができ、大幅な効率化が図れる。
4.開発した手法は、様々な養蜂場での採餌範囲の推定に使用でる。動画の撮影には側面(一面のみ)をアクリル板にした巣箱が必要である。この観察巣箱は、通常、養蜂で使われるものを少しアレンジするだけで作成することができ、また観察の時以外は巣箱を通常の形に戻すことができる。
5.開発した手法を用いて採餌場所の密度推定マップを作成し、その精度を手動で読み取ったものと比較したところ、約70%程度の範囲が一致した。これは、比較的良好な精度といえる。
6.今回、ほぼ同時刻に数キロメートル離れた3つの巣箱で撮影した30分間の動画を用いた検証では、それぞれの巣箱から利用している餌場の方向や距離を特定することができ、巣箱ごとに利用している餌場が異なっているのがわかった。
今後の予定・期待
開発した技術を用いれば、ミツバチの尻振りダンス解読時間を飛躍的に短縮できる。その結果、採餌範囲の時間、日、季節変化(例えば、季節によってはダンスが非常に少ない=魅力的な餌がないこと)を効率よく解析することが可能になる。採餌場所として主に利用している環境を的確に把握することで、例えば、餌場が遠い、農地の近くが餌場になっている、といった蜂群の育成環境の評価にも利用できるようになる。
こうした情報をもとに、必要な時期に餌源を確保するなどの環境管理を行うことで、 花粉交配用ミツバチの増殖や国産蜂蜜の増産に貢献することができる。
用語の解説
(1)尻振り(8の字)ダンス
ノーベル生理学・医学賞を受賞した動物行動学者カール・フォン・フリッシュが発見したミツバチ特有の情報伝達手段である。花粉や蜜、水源など魅力的な資源のある場所を巣の仲間に伝えるダンスで、お尻(腹部)を左右に激しく振動させながら直進し、右回りでもどって再び直進、つぎは左回りでもどる動きをみせるため、ミツバチの動きを上からみたときにアラビア数字の8を描くことから8の字ダンスとも呼ばれる。鉛直方向と腹部を振動させ直進しているときの頭の向きの角度が巣箱から太陽の方向と魅力的な資源のある場所の角度を表し、直進している時間がその場所までの距離で、ダンス継続1秒間がおよそ1kmにあたる。
(2) 粒子画像流速測定法(PIV)
液体や気体の動きを調べるのに、その中に混入させた粒子の動きを、光を照射してカメラ撮影した画像から計測する手法である。移動速度を計測したい画像上の領域を設定し、その中の明るく写る粒子と背景の黒い部分の濃淡から、連続撮影した次の画像上で類似した濃淡の場所を探索することで流体の移動を調べるものである。今回は、ミツバチの体、とくにお尻(腹部)が明るく写るのを粒子に見立ててその動きを計測するのに応用した。本研究ではPIVの計算に市販のソフトウェアを用いたが、オープンソースのプログラムもある。
(3) 採餌場所の密度推定マップと採餌範囲
ミツバチの尻振りダンスは混み合った巣板の上で行われることもあり、一つ一つのダンスには多くの誤差が含まれていることが知られている。そこで、本研究では既往研究の成果に従い、一つ一つのダンスから解読された餌場までの角度と距離の推定誤差を考慮して、採餌場所を密度で推定した。また、この採餌場所密度は巣箱から遠くなるほど低下するため、巣箱からの距離(実際には距離の自乗)で重み付けを行った。
朝は曇り、次第に晴れた。気温も上昇し、最高気温25℃と、夏日になったのかな。
コンクリートの塀の傍で”ゴウダソウ”の花が咲いていた。団扇の様な丸い莢の実も付いている。
名(ゴウダソウ)の由来は、1901年(明治34年)に東京美術学校教授の合田清氏がパリから種子を持ち帰ったのが始まりである。学名はルナリア(Lunaria annua)、属名の Lunaria はラテン語の「Luna(月)」からである。団扇(うちわ)の様な丸い莢(さや)の形から名づけられたものである。
花後にできる莢がとてもユニークで、団扇の様な円形の平たい莢の中に数粒の種がある。最初は淡緑色だが段々と曇りガラスの様な透明感のある薄い膜となる。熟して種が出てしまっても薄い膜(隔膜)が株に残る。
ゴウダソウ(合田草)
別名:大判草(おおばんそう)、銀扇草(ぎんせんそう)、銀貨草(ぎんかそう)
ルナリア(Lunaria)
アブラナ科ルナリア属
一年草
原産地はヨーロッパ中央部
開花時期は5月~6月
花は径2cm位でアブラナ科特有の十字形の花びら
花色は赤紫色、白色もある
花後の種子は薄く半透明で団扇のような形の莢に入っている
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