生徒たちは、先週の終業式後に帰省しました。
3学期に生徒が戻るまでは、乗船実習の様子をご紹介したいと思います。
11月25日の華やかな出航式。
直後、海の上から安全祈願のお参り。
そして船内で初の昼食。ここまでは順調でした。
午後に御前崎を過ぎると船が揺れだしました。
ここで船酔いが急増!15人中の9人です。
特に学園の「わかたか」で酔ったことがない生徒は、自分が船酔いしない自信がもろくも崩れ去り、大きなショックだったようです。実は、小舟に乗っている漁師でも、大型船で酔うのは良くあることです。
全然元気な人も居た訳ですが...
さて、翌日の26日。
室戸岬から、足摺岬の沖を進みます。
朝の天候はこんな感じ。
点呼で一日がスタート。
午前中は船酔いが続きました。
しかし、午後からは天候が回復。
船酔いも治まって、デッキ磨きを行いました。
夕食は全員食べることができたようです。
船酔いしている生徒も、頑張って当直を行いました。
ここで乗船実習後に書いた、ある生徒の作文を紹介します。
船酔いのことが綴られていますが、乗船実習の意義が、みごとに表現されていると思いました。
私は実習船やいづと言えば、五百トンを超える大きな船なのでそれほど揺れず、船酔いも軽いだろうと考えていました。しかし、その考えは甘すぎることに乗船後すぐに気づかされました。
やいづはものすごく揺れました。そして私の体調もみるみる悪化していきました。胃のムカつき、吐き気、食欲不振、体のだるさなどを常に感じていました。船酔いの症状で一番辛いのは、精神的にダメージを受けることでした。無気力、無希望など、精神的な死を迎える二歩手前くらいまでは行っていたかも知れません。その状態でも作業やワッチをしなくてはならず、本当に辛かったです。
今回、私を船酔いから解放してくれたのは、先生方の暖かい言葉でもなければ、同期の気遣いでもありませんでした。カツオだったのです。カツオを釣っている瞬間だけは全く酔いませんでした。初めて釣ったときは感動して泣きそうになりました。カツオは重度の船酔いを忘れさせ、大きな感動をくれるすごい魚です。カツオが大漁だったときは、みんな疲れ切ってしまいましたが、満足感と連帯感を味わうことができました。
乗船中にワッチ、出入港作業等、船に必要な作業を経験させていただきましたが、専攻科生や船員の方々の指導無しではできないことばかりでした。簡単なロープワークにも苦戦して、自分の実力のなさを思い知りました。
実習が始まったばかりのころ、船酔いや、自分の仕事の出来なさのあまり、私は漁師不適格者ではないかと考えてしまいました。しかし、今回の乗船で船酔いの克服や周囲の方々の指導によって、出来なかったことが出来るようになる経験をしました。この経験は私の自信となりました。漁船に乗って苦難に打ち当たっても、やいづでのことを思い出して乗り越えていきます。
【船酔い】
乗り物酔いが発生する仕組みは、実際のところよく分かっていないそうです。
「揺れなどの加速度によって、耳にある三半規管が刺激されて起こる」
と言われていますが、パソコンで時化の海を見るだけで酔うこともあります。
釣りをしている大丈夫だけど、本を読むとアウトだとか。
クルマだと運転していると酔わないとか。
気持ちが大きく影響していることだけは、まちがいありません。
しかし、いずれ克服できることは「卒業生は今・・・」にも書かれているとおりです。
園長のつぶやき
漁師を目指す人は、船酔いは覚悟してください。
脅しではないですよ。本当に覚悟が大事なんです。
大丈夫と思って油断すると、落差が大きくて死にたくなるのもオーバーではありません。
今まで「酔ったことがない」人でも、大型漁船では酔うこともあります。
酔わない人の方が珍しいので、誰もが乗り越える壁と思ってください。
そして、酔っていても仕事はあります。
生徒たちも船酔いの状態で当直などを行いました。
ここで頑張る姿を見せることで、回りの評価が上がります。
先輩や上司の好感を得るのです。
船酔いにしても、漁労作業にしても「楽勝だ」と思っていると、
ダメだったときの挫折感が大きくなります。
大変であることを覚悟すれば、困難も乗り越えられます。
逆に、幸運にも酔わなかった場合。安心しないで!
その分を頑張って動かないと、回りの好感を得られません。