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■清武昌展 狭間によせて (2014年3月18~30日、札幌/3月16~30日、深川)

2014年04月04日 22時38分42秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 その気になれば、どんな抽象絵画でも、ことばで表すことはできる。もちろん完全な表現はありえない。しかし、例えばニューマンなら、真っ赤に塗られた巨大な面の端に、縦に1本のジップとよばれる直線が引かれている、と言えるだろうし、ロスコのある絵であれば、暗紅色の画面にぼんやりと四角形に似たかたちが浮かんでいる、などと述べることは可能であろう。おなじように、モンドリアンでもカンディンスキーでも、あるいは八木保次や鎌田俳捺子や難波田龍起でも、とにかく頑張ってあまたをひねれば、どんな絵であるかを言葉でなんとか表現はできそうだ。
 しかし、清武昌さんの場合はどうだろう?
 筆者は、先だって北海道教育大学サテライト(紀伊國屋書店札幌本店のあるビルの4階)で開かれた同大の卒業・修了展で、彼の12点組みの大作「引き合う力の形象」を前にして、ほとほと困り果てた。学生生活の集大成ということばがぴったりの力作に圧倒されつつも、さて彼の作品をどう言い表せばよいのか、いくら考えても、うまい形容詞が見当たりそうにないのだ。ただ、ものすごい傑作だと言い切ることはためらわれるけれども、何がしかの力をたたえていることは間違いないように思われる。これは、いったいどういう事態であると解釈すればよいのだろう。

 その謎を解きたくて、深川に向かった。

 学生時代を振り返る個展ということだったが、会場には2012年以降の作品しかなかった。
 壁面の半分以上は、先に発表した「引き合う力の形象」が占め、6点ずつ分けて並べられていた。
 さらに、12~13年作の6枚組み「しじま」が奥の壁を占めており、ほかには小品を含め5点があるのみだ。
 1年生時の作品から漫然と並べることをよしとせず、自分なりに吟味した結果なのだろう。

 6点組み「しじま」と「引き合う…」を比較すると、同じ大きさの支持体を縦位置でならべた抽象画の組み作品という共通点がある。絵の具をふきとってつくったであろうマチエールも、よく似ており、画面に深みを与えている。
 いちばんの違いは、「しじま」が、メーンとなるモティーフが、わりあい、地から浮き上がって見えるのに対し、「引き合う…」のほうは、それさえもはっきりしないということであろう。「じしま」の場合は6枚ともに、芋のような形の何かが一つ浮かんでいる(天地で断ち切りになっているものもある)。  
 「引き合う…」は、12点のうち、何かに似ているとはとても言いがたい不定形のものが描かれているものが多いが、ほとんど地に融解してしまっているものもある。地のほうは、いろいろな色が塗られていたようだが、ほとんどは白っぽい絵の具に塗りこめられて、下の層の色はいまひとつ判然としない。
 わりあい「12点に共通している」といえそうなのは、斜めに走る斜めの直線で、1~3本(作品によっては10本ほど)が引かれている。鋭く走るこれらの直線が、画面に緊張感をもたらしていることは否定できないだろう。
 そして、作品によっては、レタリング見本から写してきたような1けたから7けたの数字が画面に配されたり、はくを貼り付けたような(風呂場のタイルのような)正方形の模様があったり、★の記号がちりばめられていたりする。
 とはいえ、こうして画面の表象(ともいえないような、なにか)をひとつひとつ記していったところで、作品の理解に何がしか資するとは、あまり思えないのである

 いずれにしても、ただちに具体的なモティーフが聯想されないことと、作品そのものの価値とは、なんの関係もないことを、あらためて認識させられた。
 言い換えれば、絵の説明のしやすさと、画面のもつ力とは、まったく比例しないのである。



 一方、ほぼ同じ時期に開かれたト・オン・カフェの個展。

 こちらも、縦に細長い連作がメーンとなっている点では、同じ。
 コラージュではあるが、洋画によくある英文や仏文の新聞を貼って雰囲気出してみましたというものではなく、人形のモノクロ写真などが、アクセントとして貼られている。



 こちらの連作は写真がもとになっているのだろう。昔の高幹雄さんの作品を思い出すが、清武さんは高さんの作品なんて知らないかもしれない。

 
2014年3月16日~30日(日)午前10時~午後6時(最終日午後4時)
アートホール東洲館(深川市1の9)

2014年3月18日~30日(日)午前10時30分~午後10時(最終日~午後8時)
ト・オン・カフェ(中央区南9西3)

□Gallery Stainless Radish.(清武さんのサイト) 
http://58.xmbs.jp/kiyotake/

北海道教育大学油彩画研究室 大学院生展 (2013年)
【告知】清武昌個展 しじまの余韻に (2012年)
道展の移動展で清武昌さんの作品を見た。あるいは「団体公募展っぽい絵」のこと (2011)
Klang  清武昌 洞口友香二人展(2009年)


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