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■ティツィアーノとヴェネツィア派展 (1月21日~4月2日、上野)/東京2017-1(5)

2017年02月18日 23時27分30秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 メインビジュアルとしてポスターなどに印刷されているティツィアーノ「フローラ」は名品だったが、全体としてはよく知らない画家の作品が多い展覧会でした。まあ、15~17世紀のイタリアからタブロー51点、版画17点も来ているというだけで、すごいというべきなのかもしれませんが。

 全体はおおまかに3部にわかれています。
 第1部は「ヴェネツィア、もうひとつのルネサンス」。
 15世紀(クワトロチェント)後半から16世紀(チンクエチェント)初頭にかけての、ベッリーニや無名の画家たちが描いた聖母子像が並んでいます。似たような絵が多いので、この部分は、それほどがんばって鑑賞しなくても良いと思います。
 多くはまだ、中世的なぎこちなさを残していますが、「15世紀ヴェネト地方の画家」の手になる「男の肖像」など、後にヴァン・ダイクなどに連なるリアリズムのさえが見られる作品もありました。

 第1部を見てから第2部を見ると、ティツィアーノがなぜ当時の欧洲画壇で高い評価を受け、神聖ローマ皇帝からも一目置かれるほどの存在だったのかがわかると思います。
 技術的に、それほど第1部の画家たちと、かけ離れているのです。
 なめらかな肌の描写、はだけた胸。水際立った描写は、ずっと見ていても飽きません。

 もうひとつのヤマは、ティツィアーノの「ダナエ」でしょう。
 かなりの大作で、横たわる裸婦の美しさは、それまでの西洋美術にはあまりないものだったと思われます。
 ミケランジェロもこの絵を賞賛したそうですが、惜しむらくはもっと素描力があればと言ったそうです。こんな絵にダメ押しするミケランジェロもすごいなあと思います(笑)。
 ただ、この絵を手放しでほめたたえるのは、ちょっとためらわれます。なぜなら、この絵の主題はレイプだからです。
 黄金の雨に変身してまで女のもとに行きたくなる神様って、まあ男として欲望に正直といえるのかもしれませんが、どうなんでしょうかね。

 「ダナエ」のとなりには、ティントレット「レダと白鳥」が架かっていましたが、意外とラフな筆致の絵で驚きました。

 第3部は、チンクエチェントから17世紀初頭の、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼらの作品を並べました。

 ティツィアーノ「教皇パウルス3世の肖像」は、気高さと、戦略というか海千山千というか、そういう相矛盾する性格をあわせもった老人の境涯がすけて見えてくるような佳作です。

 おもしろいのは、ダル・フリーソという画家がヴェロネーゼの「カナの婚礼」を模した絵。
 元の絵はルーブルにありますが、それよりもだいぶ小ぶりな模写になっています。
 ルーブル美術館の絵は筆者も見たことがありますが、当時筆者が住んでいたアパートの家よりも面積が広く、苦笑せざるを得なかった思い出があります。 


2017年1月21日(土)~4月2日(日)午前9時30分~午後5時30分(金曜は~午後8時)、入室は30分前まで。月曜・3月21日休み(3月20日と27日は開館)
東京都美術館(台東区上野公園)

□公式サイト http://titian2017.jp/
□展覧会ツイッターアカウント @titian2017





・JR上野駅「不忍しのばず口」、京成電鉄上野駅から約610メートル、徒歩8分
・地下鉄上野駅から約840メートル、徒歩11分
・JR山手線・京浜東北線うぐいすだにから約1キロ、徒歩13分



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