沖本愼介さんは11月で80歳となられるそうだが、信じられないほど若々しく見える。
座右の銘は「水の如く」、だそうだ。
柔軟な心で絵筆を執ってこられたのだろう。
定年で仕事を辞めた後、一昨年まで毎年個展を開き、20回に達したというからすごい。札幌時計台ギャラリーで個展回数が20回に達して、いまも活動中の人は、それほど多くない。
さすがに、昨年は個展を休んだが、今年も3階のD室で、油彩23点を並べている。
写実的な画風で、人物、静物、風景と、いろいろそろっている。
風景は、大阪城、羊蹄山、苫小牧など、かなりあちこちに出かけてデッサンしている。
沖本さんの絵の特徴は、水彩のようににじみを生かした画風だと思う。
筆を大胆に走らせるのではなく、丁寧に画布に置いていくタッチだ。
もっとも、ご本人にお聞きしたら、意外と早く仕上げるタイプとのこと。
最初に白黒のジェッソで描いておおまかな明暗をとらえていくのだそうだ(ジェッソを、凹凸をつけるために利用するわけではない)。
沖本さんの、とりわけ風景画に、自然な明暗のメリハリがついているのは、この作画のゆえかもしれない。
筆者が好きだったのが、右端の「観」。
以前の個展の際、搬入などを手伝ってくれた女性をモデルにしたそうだが、描かれている場所が、この個展の開催されている札幌時計台ギャラリーD室なので、じっと見ていると、頭が混乱してくるのだ(笑)。
この中では異色なのが、左の「森の夜景」。
以前、沖本さんがキノコ狩りか何かに行き、ふと気がつくとあたりが真っ暗になっていて、道に迷いかけたときの恐怖と不安感。それを、最近、家の中で作業しているときにやはり気がつくと日が暮れて暗くなった時に思い出したのが、制作のきっかけになっているという。
中央の薄い色のかたまりが、周囲から盛り上がって見えるのだ。
沖本さんは個展のほかにもグループ展に参加しており、これほど定年後の時間をフルに活用している方は珍しいだろうと思う。
見習いたいです。
2014年10月27日(月)~11月1日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
□沖本愼介 homepage