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■三岸好太郎の世界 所蔵品展「音楽のある美術館」 (6月14日まで)

2009年05月28日 22時00分06秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 三岸好太郎(1903-34年)の代表作といえば「オーケストラ」である。
 なんてったって、美術の教科書などにも図版が載っているから、道外の人でも知っている人は大勢いるだろう。
 今回は、その代表作と、キャンバスの裏側に描かれた「悪魔」、さらにエスキース多数に焦点を当てた展示である。

 とはいっても、所蔵作品展なので、初期の「二人人物」や、「大通風景」「道化」「飛ぶ蝶」といった代表作はあらかた並んでいる。
 というか、多くの作品は、前回の展示から位置を変えていない。
 「コンポジション」をいちばんはじめに持ってきたあたりが、異例といえば異例か。

 この美術館に来るのが十数回目ともなると
「おー、こんな作品もあったのか」
というおどろきはさすがにほとんどない。
 今回初めて見たのは、実作ではなく、「新交響楽団」という作品の写真だった。

 道立三岸好太郎美術館のほかに、宮城県美術館にも「オーケストラ」という類似作があることは、よく知られていると思う。
 2002年に、道立近代・三岸の2館で同時開催された三岸好太郎展にも出品されていた。
 どっちかというと、ひっかきがメーンとなっている三岸好太郎美術館の作品に対し、宮城バージョンは墨による太い線がめだつ。
 今回は、この宮城県の所蔵品の写真パネルが展示されていた。
 その横にあったのが、三岸美術館の「オーケストラ」をさらに大きくしたような「新交響楽団」だったのだ。

 1933年の作で、第3回独立展に出品された。
 100号とも200号ともいわれる大作で、東京・新宿の紀伊國屋書店に飾られていたそうなのだが、戦災で焼失したという。

 札幌の「オーケストラ」とどこがちがうか。
 フルオーケストラの背後に合唱団がいることだ。
 1933年2月5日、近衛秀麿指揮、自由学園合唱団と関東男声合唱連盟の共演で、ベートーベン交響曲第9番「合唱付き」が演奏されたという記録があり、そのさいの演奏会をモティーフにしているらしい。
 合唱団だけでおよそ160人はいるようだ。

 また、札幌オケにくらべると、楽団員の前に置かれた譜面台がいやに存在感を持っているのが印象的だ。


 なお、同美術館では、会期中、数多くのコンサートを予定している。
 日程は、同館のサイトか、こちらのエントリを参照してください。
 


2009年4月1日(水)-6月14日(日)9:30-17:00(入場は-16:30)、月曜休み(5月4日は開館し7日休み)
道立三岸好太郎美術館(中央区北2西15 地図D)

一般500円、高大生250円、中学生以下・65歳以上無料。土曜は高校生も無料


・地下鉄東西線「西18丁目」から徒歩7分
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」から徒歩4分


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (SH)
2009-05-29 20:30:54
ヤナイさん、こんばんは。

本当に「新交響楽団」気になりました。
3点並んで展示されたら、面白いでしょうねえ。
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戦災 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2009-05-31 08:31:12
SHさん、レスおくれてすいません。

戦争はたくさんの人命を奪いますが、失われた美術品も相当なものですね。

三岸好太郎の場合、道化を描いた大作が札幌一中(現札幌南高)にありましたが、戦中戦後のどさくさで行方不明になっていますし。

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