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山口裕美「観光アート」(光文社新書)

2010年12月09日 00時14分19秒 | つれづれ読書録
 「現代アートのチアリーダー」を自称し、さまざまな活動に取り組んできたアートプロデューサー山口裕美さんの新著。
 前半は、「旅」と「アートを見ること」が結びつきつつある現状を、各地の新しい美術館や、次々と開催されているトリエンナーレやイベントなどの現場からリポートしている。
 後半は、「一度は訪ねてみたい美術館100」。ちょっと、雑誌の特集号っぽいつくりである。

 構成は雑誌的なところがあるが、内容はあくまで山口さんの目を通してみた、「アートと旅」の今、である。
 だから、「一度は…」は、決して客観的かつ無難な選択をしているのではなく、かなり彼女の好みで選んでいるように思う。まあ、それはそれでいいんじゃないだろうか。
 ちなみに北海道からは、キンビ、芸森、三岸、モエレ沼公園の四つ。
 まあ、こんなもんでしょう。そもそも、三岸のような近代画家の個人美術館はほかにほとんどノミネートされていない。
 香川県が5で、埼玉や茨城がゼロというあたり、なかなかユニークな選択。水戸芸術館、奈良の国立博物館、鹿児島県立美術館、ひろしま美術館など、意外なところが落ちている。

 ただ、そうなると、前半は越後妻有や「水都大阪」など多くのイベントを取り上げていながら、門司や神戸、別府といったところに全く触れていないのが気にかかる。
 ここは山口さんがひとりでぜんぶ書いちゃうんじゃなくて、彼女の編ということにして、もっといろいろ取り上げてほしかったなーという気もするのだ。
 これだけをひとりで見て回っているのは、さすが!としか言いようがないんだけどね。

 もちろん、類書が(たぶん)ないので、旅とアートというトレンドのドキュメントを書いた本として、意義はある。


 ところで、山口さんは1990年代後半は何度も札幌にいらしていた。
 若いパフォーマンスアーティストを連れてきたこともあれば、アワードの審査員をなさっていたこともある。
 「cool Japan 疾走する日本現代アート」で端聡さんが紹介されているのは、そのころの名残だろう。
 彼女といい、北川フラム氏といい、川俣正氏といい、北海道と中央をつなぐパイプになりそうな人はいそうなのに、どうもタイミングがあわないというか、うまく活用しきれてないというか、そんなもどかしい感じがいたします。


 もうちょっと書きたいことがあるんだけど、それは後日


2010年10月20日発行
光文社新書
760円、253ページ


http://www.so-net.ne.jp/tokyotrash/


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