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■ワタナベ チナツ写真展-旅の日々、雨のフィンランド(4月8日まで)

2007年04月06日 10時11分02秒 | 展覧会の紹介-写真
 写真展の原題は
ワタナベ チナツ写真展
Matkapäivi Sateinen Suomi
旅の日々、雨のフィンランド


 渡辺さんが昨年9月末から10月上旬まで1週間滞在したフィンランドで撮った30枚の写真を展示している。

 最初、ひょっとしてトイカメラで撮ったの? と思ったほど、独特の色合い。
 ちょっと褪せた夢の記憶みたいな。
 でも、現実離れした奇抜な発色というのではなくて、なつかしい感じだ。
 ポラロイドカメラの写真を、天地もしくは左右を断ち切って正方形にしたものらしい。
 デジタルカメラの平板で生っぽい色調を見慣れた目には、かえって新鮮にうつる。そういえば、30年以上前のカラー写真は、変色してこんな感じになっていることが多いなあ。

 公園のベンチ。
 地面に降り積もった落ち葉。
 市場の野菜やブドウ。
 古いモダニズム建築や家々。

 写真が過去の時間を氷結させて長く残すものだとしたら、ポラロイドの褪せたような色合いのほうが、じぶんのなかでしだいに輪郭を失って思い出へと化石していく記憶にとっては、むしろふさわしいのかもしれない。

 あれ!? と思ったのは
「カハヴィラ・スオミ かもめ食堂」
と日本語を窓に書いた建物があったこと。
 なんでも、あの映画の舞台になったらしい。
 会場にあった写真集によると、ワタナベさんが来店した当日にも、もたいまさこさんと監督が来ていった-と、店のご主人が話していたという。

 筆者は旅先でもけっこう貧乏性で、あれやこれやと予定を詰め込んでしまい、忙しい思いをする。
 この写真に流れてくる時間の感覚は、ものすごくゆっくりとしている。
 とてもうらやましい。

 略歴によれば、ワタナベさんは「カメラ日和」に2度作品が掲載された、とある。
 さもありなん。
 この感覚は、「カメラ日和」や「クウネル」といった雑誌、あるいは筆者がしょっちゅうおじゃましているalloさんのブログ、川内倫子の写真、江國香織の文章、さらには齋藤周さんやマイクロポップと称される絵にも共通するものがあると思う。
 体温が低い、というか、日常の小さな幸せをたいせつにする、といったらいいのか、うまくいえないけれど、いまの時代ならではの表現だなあと感じる。

 そういえば、会場の「十一月」も、古い雑誌や雑貨がいっぱいあって、時間の流れがすごくゆっくり感じられる、独特の空間だ。
 すわれるテーブルも3つしかない。

 あわただしい毎日のなか、ちょっと時間をさいて、はじめて見るのにどこかなつかしい写真の数々を見ながら珈琲を飲むのもいいかも-。そう思った。



3月24日(土)-4月8日(日)12:00-19:30 月曜休み
喫茶雑貨 十一月(中央区南2西8 アーケードはないけど狸小路 FAB cafe2階)

ワタナベさんのblog「日々のカケラ」
(コメント数が20とか30という、すごいブログです。写真展リポートもあり)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (日々のカケラ)
2007-04-12 08:51:44
先日は写真展見てくださり、そしてこちらでも
ご紹介してくださりありがとうございました!
ヤナイさんの感想、そしてこちらでの紹介文、
とても嬉しく自分の写真展なのですが、他の人から
見るとこうなんだなーって新鮮でした。
また近いうちに写真展のご案内ができると
思いますので、是非見に来てください。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-04-13 06:45:46
 わざわざコメントありがとうございます。
 ワタナベさんの写真は、とてもいまの時代の空気感にマッチしていながら、同時に個性的だと思いました。
 これからも、北海道美術ネットをよろしくお願いします。ちょくちょくのぞきに来てください。
 
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