彫刻、陶芸、金工…といったジャンルを超えてさまざまな作家が1点ずつ出品し、ほぼ隔年でひらかれている「北海道立体表現展」。
裸婦など従来通りの彫刻はありませんが、毎回すこしずつ顔ぶれを変えながら、続いています。なんといっても、バラエティに富んでいるのが魅力で、毎年の公募展よりも力の入った作品を出してくる人も多いです。
立体は絵画にくらべると大作の搬入や搬出が難儀なこともあり、それほど頻繁に個展を開けないのが実情です。それを考えると、とても良い鑑賞の機会だと思います。
控え室で泉修次さんたちがおっしゃっていたのは、「札幌立体表現展」や「道央立体表現展」にならないよう、札幌から遠いところに住む作家に声をかけた-ということでした。
なるほどなあ。
ふだん、筆者なぞは
「日本の美術界は東京中心に過ぎる!」
と息巻いていますけど、道内も似た傾向がありますよね。
たとえば、鈴木隆さんなどは、地元十勝では活溌に発表しているようですが(■十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地=03年)、めったに札幌では作品を見ることがありません。
今回の、インパクトの強い巨大な顔は、知り合いだった家具の製作者が亡くなり、彼に似せたものだそうです。工房に残されていた木片を束にして、片側を顔に、もう片側は材木をそのまま生かしています。
北見の美術界を牽引してきた林弘堯さんも、ことし70歳とは思えぬ大作です。道展ではこんなサイズの作品は出せないし、地元・北見でもめったに発表の機会はないでしょう。林さんは「包む」とか「覆う」形態に以前から関心があるようですが、覆われているものは見えません。その点では、手前にある藤沢レオさんの作品が、半透明で中身がうっすら見えるのと、好対照をなしているといえるかもしれません。
上川管内音威子府村の森川亮輔さんも、道北の森の空気を、パワフルな造形で会場にもたらしていたようでした。
釧路の中江紀洋さんは、以前は歯形のイメージが強かったのですが、なんだかすっかり道東の大自然をとりあげる作家になったようです。
床に置かれた木の枝とサケ7匹が、原始河川をほうふつとさせますが、7匹中6匹が雄なのは、なぜなんでしょう。鱗が装飾的にえがかれているのもおもしろいです。
力作が多いですが、すべてにふれるわけにも行かないので、二、三、気になった作品について。
野又さんのインスタレーション「壁」を見て
「ああ、野又さん、本気で怒ってるな」
と感じました。
中央に、有刺鉄線つきの壁に取り囲まれたビル14棟(最高は45階建て)。その周囲にテントのような小屋305軒ほどが点在します。すべて金属のようです。富者の住む高層住宅と、貧者の家々という対比なのでしょうか。
ぶっきらぼうな感じのする仕上がりですが、格差社会ということばを思い出さずにはおれません。
渡辺行夫さん。
大理石と御影石という素材の違いが見えるのが、おもしろいです。
韮沢淳一さん。
全道展では見かけないタイプの作品だと思います。巨石がなにかのとらわれになっているようです。
藤本和彦さん。
素材は着彩をほどこしたイタドリ。密林のようにひしめくイタドリの中央部がすっぽりあいているので、そこに「隠れる」ということなのでしょうか。
出品作は次のとおり。
阿地信美智「使いものにならない領域」270×270×242
阿部典英「ネエ ダンナサン あるいは生き物」430×260×260
荒井善則「Soft Landing to Window」750×15×155
泉修次「共振-五本の弦と穴と舌」150×400×250
伊藤隆弘「ミストラル」80×200×200
柿崎煕「林縁から」15×860×240
加藤宏子「Spread」 紙320×240、石80×80×80
国松明日香「水の環」320×350×188
小石巧「森・環」400×200×200
佐々木けいし「棲(せい)」150×150×50
下沢敏也「Rebirth-tund'08」300×300×160
菅原尚俊「時の銀河」100×100×100
鈴木隆「フェイス(face)」180×140×210
高橋昭五郎「感謝」50×50×240
武田亨恵「視覚と意識の公差」150×150×140
田村陽子「54名の記憶する足形-from Dec.2000 to Mar.2008」500×190×20(■参考=06年の個展)
ダム・ダン・ライ「サークル」350×350×400
中江紀洋「旅の果て(自然律)」450×450×150
楢原武正「大地/開墾 2008-6」450×450×300
韮沢淳一「檻」120×120×200
野又圭司「壁」250×250×75
林弘堯「Earth-Deformation」20×900×400
伴翼「ある日」55×55×106、54×54×99、52×52×89
藤井忠行「れん(ren)」450×450×160
藤沢レオ「パサージュ(passage)」300×200×90
藤本和彦「隠れ里」182×182×250
松井茂樹「森の番人 II」450×450×250
森川亮輔「空域」310×150×113
山田吉泰「かたらい」60×100×230
山本良鷹「私的空間」50×110×100
渡辺行夫「不織紋様柱」400×400×230
08年6月14日(土)-22日(日)9:30-17:00(入場-16:30)、月曜休み
道立近代美術館(中央区北1西17 地図D)
■06年(1) ■06年(2) ■06年(3) ■06年(4)
■03年
■01年
裸婦など従来通りの彫刻はありませんが、毎回すこしずつ顔ぶれを変えながら、続いています。なんといっても、バラエティに富んでいるのが魅力で、毎年の公募展よりも力の入った作品を出してくる人も多いです。
立体は絵画にくらべると大作の搬入や搬出が難儀なこともあり、それほど頻繁に個展を開けないのが実情です。それを考えると、とても良い鑑賞の機会だと思います。
控え室で泉修次さんたちがおっしゃっていたのは、「札幌立体表現展」や「道央立体表現展」にならないよう、札幌から遠いところに住む作家に声をかけた-ということでした。
なるほどなあ。
ふだん、筆者なぞは
「日本の美術界は東京中心に過ぎる!」
と息巻いていますけど、道内も似た傾向がありますよね。
たとえば、鈴木隆さんなどは、地元十勝では活溌に発表しているようですが(■十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地=03年)、めったに札幌では作品を見ることがありません。
今回の、インパクトの強い巨大な顔は、知り合いだった家具の製作者が亡くなり、彼に似せたものだそうです。工房に残されていた木片を束にして、片側を顔に、もう片側は材木をそのまま生かしています。
北見の美術界を牽引してきた林弘堯さんも、ことし70歳とは思えぬ大作です。道展ではこんなサイズの作品は出せないし、地元・北見でもめったに発表の機会はないでしょう。林さんは「包む」とか「覆う」形態に以前から関心があるようですが、覆われているものは見えません。その点では、手前にある藤沢レオさんの作品が、半透明で中身がうっすら見えるのと、好対照をなしているといえるかもしれません。
上川管内音威子府村の森川亮輔さんも、道北の森の空気を、パワフルな造形で会場にもたらしていたようでした。
釧路の中江紀洋さんは、以前は歯形のイメージが強かったのですが、なんだかすっかり道東の大自然をとりあげる作家になったようです。
床に置かれた木の枝とサケ7匹が、原始河川をほうふつとさせますが、7匹中6匹が雄なのは、なぜなんでしょう。鱗が装飾的にえがかれているのもおもしろいです。
力作が多いですが、すべてにふれるわけにも行かないので、二、三、気になった作品について。
野又さんのインスタレーション「壁」を見て
「ああ、野又さん、本気で怒ってるな」
と感じました。
中央に、有刺鉄線つきの壁に取り囲まれたビル14棟(最高は45階建て)。その周囲にテントのような小屋305軒ほどが点在します。すべて金属のようです。富者の住む高層住宅と、貧者の家々という対比なのでしょうか。
ぶっきらぼうな感じのする仕上がりですが、格差社会ということばを思い出さずにはおれません。
渡辺行夫さん。
大理石と御影石という素材の違いが見えるのが、おもしろいです。
韮沢淳一さん。
全道展では見かけないタイプの作品だと思います。巨石がなにかのとらわれになっているようです。
藤本和彦さん。
素材は着彩をほどこしたイタドリ。密林のようにひしめくイタドリの中央部がすっぽりあいているので、そこに「隠れる」ということなのでしょうか。
出品作は次のとおり。
阿地信美智「使いものにならない領域」270×270×242
阿部典英「ネエ ダンナサン あるいは生き物」430×260×260
荒井善則「Soft Landing to Window」750×15×155
泉修次「共振-五本の弦と穴と舌」150×400×250
伊藤隆弘「ミストラル」80×200×200
柿崎煕「林縁から」15×860×240
加藤宏子「Spread」 紙320×240、石80×80×80
国松明日香「水の環」320×350×188
小石巧「森・環」400×200×200
佐々木けいし「棲(せい)」150×150×50
下沢敏也「Rebirth-tund'08」300×300×160
菅原尚俊「時の銀河」100×100×100
鈴木隆「フェイス(face)」180×140×210
高橋昭五郎「感謝」50×50×240
武田亨恵「視覚と意識の公差」150×150×140
田村陽子「54名の記憶する足形-from Dec.2000 to Mar.2008」500×190×20(■参考=06年の個展)
ダム・ダン・ライ「サークル」350×350×400
中江紀洋「旅の果て(自然律)」450×450×150
楢原武正「大地/開墾 2008-6」450×450×300
韮沢淳一「檻」120×120×200
野又圭司「壁」250×250×75
林弘堯「Earth-Deformation」20×900×400
伴翼「ある日」55×55×106、54×54×99、52×52×89
藤井忠行「れん(ren)」450×450×160
藤沢レオ「パサージュ(passage)」300×200×90
藤本和彦「隠れ里」182×182×250
松井茂樹「森の番人 II」450×450×250
森川亮輔「空域」310×150×113
山田吉泰「かたらい」60×100×230
山本良鷹「私的空間」50×110×100
渡辺行夫「不織紋様柱」400×400×230
08年6月14日(土)-22日(日)9:30-17:00(入場-16:30)、月曜休み
道立近代美術館(中央区北1西17 地図D)
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