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■第57回オホーツク美術展 (2019年9月14~22日、北見)

2019年09月21日 18時31分19秒 | 展覧会の紹介-団体公募展
 オホーツク美術協会と北海道新聞北見支社が主催する団体公募展。
 絵画、彫刻、工芸の3部門があり、会員―会友―一般という3段階は、道展、全道展、新道展といった他の団体公募展と同様である。
 このうち、彫刻は会員が小川研さんただ1人という状態が続いているが、今年は一般入選が1人いた。
 工芸は陶芸を中心に会員が11人、会友3人がいる。一般は5人にとどまった。
 一番多いのは絵画で会員37人、会友5人。一般入選は27人だった。
 今回の展覧会では、会員・会友・一般あわせて88点が展示された。

 このうち、最高賞であるオホーツク美術協会賞を射止めたのは、鈴木留利子さん(佐呂間)。
 S130号の「帰ってきた天使 I」「帰ってきた天使 II」2点陳列となった。
 いずれも、左側に平坦な色面、右側には絵の具のしぶきが躍る色面を配置した抽象画で、意地悪な表現をさせてもらえばニューマンとポロックを合体させたような絵である。とはいえ、やっている人を見たことがないのもたしかで、静と動がおなじ作品の中に同居しており、本格的なたたずまいを感じさせる。

 オホーツク美術展でポロックばりの絵画に取り組んできたといえば、会員いのこはるきさん(北見)であろう。今回の「無題」は、絵の具のしぶきはないが、緑や青がうねる抽象画で、野草も塗り込めた凹凸あるマチエールになっている。
 渡辺良一さん(美幌)「記録」は平面インスタレーション。黒く塗りつぶした、新聞紙を切ったとおぼしき紙片を何枚も重ねて壁の隅に配置している。昨今の表現の不自由展をめぐる騒ぎや、マスコミへの強まる圧力といった事態を連想させる。

 一方、ベテラン会員諸氏の風景画も安定した力量をみせている。
 やはり勝谷明男さん(北見)の「春泥の道」(F100)はすばらしい。いま道内の風景画家でも屈指の存在であることは間違いない。
 雪が積もった郊外(「大正ゴルフ場」というバス停の名が見える)を描いているが、3月初旬あたり、わずかに厳寒が緩んだ時季の空気感を余すところなく表現していて、舌を巻く。
 阿部賢一さん「置き去りの流氷」、安藤志津夫さん「流氷とトーチカ」、岡崎公輔さん「遅い春」といった北見勢、美幌の芳賀文明さん「早春の坂道」など、長く厳しいオホーツク地方の冬が終わり春が近づいている喜びが、込められている。

 創立会員の田丸忠さん(北見)、堰代大幹さん(訓子府)の健在もうれしい。
 美幌の安田完さんは春陽の会員でもあるが、「標」は、縄でぐるぐる巻きに縛られ布をかぶせられた人物の群像を描き、行き場のない閉塞感をますます濃く漂わせている。


 一般ではほかに、上野トヨミさん(網走)「残照の北浜」と星野修さん(北見)「秋色の坂道」がオーソドックスな風景画で目を引いた。いずれも、斜めに光が差し込んでいるさまを丁寧にとらえている。
 星野さんは佳作賞、上野さんは奨励賞で、2人とも会友に推挙された。

 賞には漏れたが、中村宏之さん(北見)「命朽ちて」は変形200号の大作で、これだけの大きな画面に向き合うパワーはすごいなあと思う。


 工芸では、陶芸の柳原光代さん(同)、毛利萬里子さん(同)らが、シャープな造形の壺を出品していた。
 一般では、2席に該当する北海道新聞社賞を得た松谷美智子さん(同)が、七宝で29個のそれぞれ異なる文様をつなげた大作で、目を引いた。


2019年9月14日(土)~22日(日)午前9時半~午後4時半(最終日~午後3時)、17日休み
北網圏ほくもうけん北見文化センター美術館(北見市公園町1)


□オホーツク美術協会 http://okhotsukaa.but.jp/

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・北見駅前、大通などから北海道北見バス「1 小泉8号」行きに乗り、「野付牛公園入口」から約370メートル、徒歩5分。1番のバスは日中は15分間隔で運行

・JR北見駅から約1.78キロ、徒歩23分
・北見バスターミナルから約1.9キロ、徒歩24分


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