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ローギュラート展(11月30日まで)

2006年11月26日 19時01分05秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 旭川の斉藤順子さんと木滑美恵さん、富良野市山部の盛本学史さん、上川管内美深町の長岐和彦さんによる絵画のグループ展。とてもおもしろかったです。絵画の持つ物語性について考えさせられました。
 「ローギュラート展」は1993年の結成だそうですが、名前がついたのは今世紀に入ってからで、名前は「RAW:GULARTは「RAW」「IRREGULARITY」「ART」からの造語」(サイトから)だそうです。

 木滑(きなめり)さんは、90年代後半から、舞台の上の群像をモティーフに描いています。
 もともと、リアルで端正な人物画を描く人だったという印象がありますが、近作は、動感のある絵が多いです。ひとことでいうと「劇的」です。

 「A stage set VI -繋ぐ-」を見ていると、おなじような姿勢をとる群像を描くことで画面上にリズムを生み出し、さらに、動きを細い曲線で表しています。ドローイングのような一種の現場感覚がつたわってきます。


 盛本さんは、1回きりで終わってしまった「三岸好太郎・節子賞」受賞のころは、抽象画ともなぞの生物ともとれる、ユニークで、彩度の高い絵を描いていましたが、今回は、その後とりくんでいる、イマジネーションが爆発するゆかいな絵ばかりです。
 3年ほど前、アトリエで見せてもらった「光工場」(今回の作品とは別)の系列で、筆者としてはすごく楽しみました。

 たとえば「オムツ戦争」と題された作品は、画面右下から左上に伸びるやりの上で、おむつをはいた赤ちゃんと馬が追いかけっこをしている(?)という図柄ですが、左下のビルの屋上から火がふき上がってその周囲を天使が輪になっておどり、その背後では地面からクジラがはえ、手前の家の屋根には飛行機がつきささり、手前から奥のピンクの巨大な女性へとのびていく木の道にワニがあごを載せ、そのワニの背中には青いプールがあって動物が3匹たたずみ、右上の塔には大きな龍がまきつき…といったぐあいなのです。

 あるいは「光工場」という作品は、函に入った少女が手にした長い、ウツボカズラのような植物に、ピンク色の奇妙な虫が尾を絡ませ、天井から桃色の巨大な実がぶらさがり、巨木の幹に靴がはまり、その枝にロープがわたされてロープウエイが往復し…。きりがないからやめますが、よくもこんな世界を思いつくものです。

 ダイナミックな構図は遠藤彰子を思わせますが、彼女よりも想像力豊かで、ボッスほどグロテスクではありません。

 出品作の中では、「ファブリアーノ別場」が、家畜小屋でのイエス生誕の場面を粗いタッチで描いた、題材も描法もまったく異色の作品。

 また「ブリューゲルの眠り」は、ブリューゲルの「気狂いフルート」から人物などを一切取り払ったような絵で、裸木に白いぼろぼろの旗がひるがえり、遠くの街や近景の荒野が炎上しているという図柄。手前にギリシャの神殿のような建物が描かれ、模様を型抜いたカードのような平面が置かれているのが不思議。


 もともと子どもたちの世界をどこか童画の趣きをのこして展開していた斉藤さん も、近年の「箱舟」シリーズでは、どこか盛本さんの世界と共通するワンダーランド的な画面になっており、見ていて飽きません。

 そもそも箱舟が地面に固定されているのがおもしろいのですが、たとえば「森から海へ」を見ると、中にヤギがならんでいて、そのうしろにヤギとおなじような大きさの家があり、家の中では男女が二人であやとりをしていたり、さらに1室には街角があって車が走っていたりして、それぞれの物の縮尺がむちゃくちゃなのです。

 その家の屋根の上にはシマウマのいるサーカス団がいて、象が玉乗りをしており、その奥にはワニや犬がたたずむ池があり、その岸辺が檻になっていて中にはブタが飼われ、岸には鶏がいます。左上には、部屋がならんでいるところがあり、2人の天使がいたり、青衣の女がいたり…。

 というぐあいで、きりがないのでここらへんでやめておきますけど、やわらかいタッチで独特の世界が展開しています。


 長岐さんは「FIELD」と題した、白を基調とした抽象画9点を出品しています。
 いずれも、色は抑え気味にし、黒の線があちこちに出没しています。

 線は、神経質だったり、途切れがちだったり、陽気だったり、スピーディだったり、投げやりだったり、太かったり細かったり、さまざまな表情を見せます。
 消滅と生成を繰り返す線は、おそらく、わたしたちの生の暗喩ではないかと思われます。


 木滑さんの出品作は次のとおり。
「Remember Your Creator あなたの創造者を覚えよ」
「聴く人」
「ポーズ 休み」
「心を騒がしてはならない」
「A stage set VIII」
「A stage set III -闇から光へ-」
「楽士」
「A stage set V 舞台装置」
「A stage set VI -繋ぐ-」
「A stage set IV」
「窓辺」

 斉藤さんの出品作は次のとおり。
「箱舟 きたるべきもの」
「箱舟」
「箱舟 森から海へ」
「森へ行く日(I)」
「森へ行く日(II) 画室の語り部たち」

 盛本さんの出品作は次のとおり。
「オムツ戦争」
「ブリューゲルの眠り」
「眠るブリーフ戦士」
「光工場」(同題2点)
「ファブリアーノ別場」
 
 盛本さん以外の3人は、道展会員。

11月16日(木)-30日(木)10:00-18:00(月曜休み)
ア-トホール東洲館(深川市1-9、経済センター2階、深川駅前)

□「ローギュラート」のサイト

■03年の展覧会

■03年の盛本さんの個展
■02年の盛本さんの個展
■01年の盛本さんの個展

□ギャラリーどらーるの「木滑美恵展」のファイル


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