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■林田嶺一:ポップ×キッチュ×ニヒリズム (2023年2月7日~24日、札幌)

2023年02月24日 12時11分35秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 昨年亡くなった江別の美術家林田嶺一さんの個展。株式会社中原電気商会と北海道アールブリュットネットワーク協議会の主催。
 
 
 林田さんはもともと普通の風景画を描いて、全道展会員になっていたが、筆者が全道展を見始めた1996年ごろにはすでに、満洲(戦後の中国東北地方)の思い出をコラージュに仕立てた特異な作風で、会場でも異彩を放っていた。

 2001年にキリンアートアワードで優秀賞を得て(最優秀賞は該当無し)注目され、その後は、道外で開かれるアールブリュットのグループ展に招かれることが多くなった。
 本人は道職員を定年まで勤め上げ、いわゆる障碍者ではない。ただ、専門的な美術教育を受けていないことから、そういう枠組みに入れられたのだろうと推察する。

 今回の個展は、ロシア文字やガラスなどをコラージュしたいかにも林田嶺一らしい作風の壁掛け型オブジェと、わりと一般的な風景画の小品との双方が展示してあることが最大の特徴だろう。
 冒頭画像や3枚目は、その系統に属する作品だ(題、制作年不明)。

 小品のほうは、これまで見る機会が少なかったので、新鮮に感じた。
 今後も見る機会は少ないのではないだろうか。
 
 
 ところで、林田嶺一さんの歩みをまとめた、美術手帖web 版の「櫛野展正連載29:アウトサイドの隣人たち 」(https://bijutsutecho.com/magazine/series/s6/20617 )に、全道展では国松登や山下脩一からは評価されたものの、冷遇されていた―というくだりがあり
「いや、その2人に評価されたらじゅうぶんだよ!」
と筆者なぞは思ったのだが、今回風景画を見てハッとした。

 山下脩一の画風にすこし似ているのである。
 
 
 右手の大きな絵は「小樽の坂街」(2003)。
 画中の看板に「小樽聖公会」とあるから、花園の繁華街から水天宮へと上っていく急坂のあたりだろう。
 厚いマチエールや原色を生かした色づかい、輪郭線など、確かに山下を思わせるところがある。
「小樽市手宮の風景」は、時計塔のある、山下さんも題材にした手宮の中心街の風景だ。

 山下さんも、道職員と画家の二足のわらじを履き続けた人だった。
 だから林田さんには親近感があったのかもしれない。
 
 
 出品作のうち14点が題不明。
 上に挙げたもののほか、題が判明している絵は次の通り。
米澤煉瓦工場
大通り公園
小樽運河
函館駅前十字街
函館十字街
ガラス工芸館
函館カトリック正教会


2023年2月7日(火)〜 2月24日(金)午前10時~午後6時(最終日~4時)、土日祝日休み
NAKAHARA DENKI Free Information Gallery (札幌市中央区北2西2 札幌ウィングビル)
https://fig.nakahara-denki.co.jp

過去の関連記事へのリンク
林田嶺一さん死去か(江別、美術家=2022年7月)
林田嶺一展 (2002。上遠野敏さんの投稿)
キリンアートアワード2001受賞作品展



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