北海道美術ネット別館

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■愛する美術 Part1 ヒューマン・ラブ(2) (1月27日で終了)

2008年02月25日 20時54分00秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
承前

 そういうわけで、前のエントリは、この展覧会が「性」のモンダイから目をそらさずに組み立てられている-という趣旨だった。
 つづいて展示されている伏木田光夫「人間の風景」三部作は性交中の男女がモティーフだし、国松登「氷上のひと」も、抱き合っている男女が、これまで見たときよりも、心なしかエロティックな感じがする。
 しかし、人間にそういう一面があるのは事実なので、やたらと目をそむけてもしかたない。この展覧会は「愛」や「性」をあわただしげに暗がりへと隠すのではなく、わいせつではないまなざしで、きっちりと見つめているのだと思う。

 とはいえ、小心者の筆者は、美術館というところでベッドシーンを見ることになんだかどぎまぎしてしまい、阿部典英「オヨメサン」シリーズのユニークな木彫が、壁一面にどーんと展開しているところまで来て、いささかほっとしたのも事実だ。
 テンエイさんの作品にも、なんとなく性的な要素を暗示したところがなくもないのだけれど、彼の場合は湿っぽいところがまったくなく、あっけらかんとしているので、見た感じもさっぱりする。
 ここよりあとのコーナーは、「性」というより、もっと広い家族愛のようなものを感じさせる佳品が多かった。

 なかでも、厳粛な気持ちにさせられたのが、山内壮夫「めざめぬM子」。
 夫人が亡くなったときに制作したものだという。病のためやせ細った面持ちを、しっかりととらえていることに、妻を思う気持ちと芸術家魂のようなものとがきびしく共存していると感じた。

 米坂ヒデノリ「さようなら」は、数体の木彫からなるインスタレーション的な作品。
 まったく具象的ではないのに、人々に見送られてこぎ出す柩(ひつぎ)の舟のようにしか見えないのだ。
 思わずうなだれて鎮魂の意をこめたくなるような作品だった。

この項つづく)  


07年12月1日(土)-08年1月27日(日)9:45-17:00(入場-16:30)、月曜(1月14日は開館)、12月25日、29日-1月3日、1月15日休み
札幌芸術の森美術館(南区芸術の森2)


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