(承前)
この展覧会の最後を飾っていたのは、札幌の若手映像作家、佐竹真紀さんの2作品だった。
このうち、路傍によく立っている円形の反射ミラーを題材にした「斜光射光」は、それほど大した作品とは思わなかったけれど、「インターバル」には非常に胸を打たれた。
(27日訂正しました)
この作品は独特の技法を使っているので、ことばで説明するのはむつかしいのだが、要するに、作者の小学生時代に運動会などを撮ったビデオ映像と、大人になってその小学校に赴いて撮った映像を、重ね合わせたものだ。
画面の中央に、片手に持った白紙(あるいは透明な樹脂かなにか)が大写しになる。手の主は、十勝管内豊頃町の小学校の無人のグラウンドや体育館にいる。その手が持っている紙に、十数年前の運動会や学芸会の映像が投影されるのだ。
学校はモダンな校舎だけれど、たて替えられていないので、可能になった芸当だろう。
ただし、運動会の朝、自宅を出るときの場面では、自宅や、その周辺の店舗が新しくなっていることがわかり、時代の流れを感じる。
この「二重写し」のほか、現代の学校を高速度撮影した場面がところどころに挿入される(スケートリンク作りの場面などは、道外の人には物珍しいだろう)。
もっと上の世代であれば、小学校時代の映像なんて、熱心な8ミリ映画の愛好者などをのぞけば、残っていないに違いない。
佐竹さんの世代になるとお父さんが行事のたびにビデオカメラを回していて、それが映像作品につかわれたのだろう。
そう考えれば、現代の作品だなあと思う。
ここに写っているのは、徹頭徹尾個人的な事柄である。
にもかかわらず、主な舞台が学校ということもあって、見る人に多大なノスタルジアを喚起する。
他人の過去なのに、ひどくなつかしいのだ。
使用されている過去の映像に感じられる親の愛情とか、かすかに聞こえてくるチャイムとか、そういった要素の積み重ねが、とくべつな演出よりもずっと見る者の琴線に触れる。
そして、この作品がすごいのは、個人的な追想に終始しているように見えて、舞台となった小学校の歴史を通じてもっと広い世界につながっていることだ。
茂岩小の、創立以来の卒業写真が連続して出てくるシーンがある。
ところが、昭和17年から25年までの写真は欠落しているのだ。
とても幸福そうに見える作者の幼年時代。
しかし、そこに連なる過去には、卒業写真すら残せないような苦難の時代があったのだ。
このシーンがなかったら、筆者はこれほど高くこの作品を評価しなかっただろうと思う。
大きいスクリーンで見ていただきたいが、下のリンク先でも見られます。未見の方はどうぞ。
http://www.nhk.or.jp/digista/review/061216_best.html
07年12月1日(土)-08年1月27日(日)9:45-17:00(入場-16:30)、月曜(1月14日は開館)、12月25日、29日-1月3日、1月15日休み
札幌芸術の森美術館(南区芸術の森2)
アップがおくれてすいません。
開催中のPart2も早く見に行かねば。
この展覧会の最後を飾っていたのは、札幌の若手映像作家、佐竹真紀さんの2作品だった。
このうち、路傍によく立っている円形の反射ミラーを題材にした「
(27日訂正しました)
この作品は独特の技法を使っているので、ことばで説明するのはむつかしいのだが、要するに、作者の小学生時代に運動会などを撮ったビデオ映像と、大人になってその小学校に赴いて撮った映像を、重ね合わせたものだ。
画面の中央に、片手に持った白紙(あるいは透明な樹脂かなにか)が大写しになる。手の主は、十勝管内豊頃町の小学校の無人のグラウンドや体育館にいる。その手が持っている紙に、十数年前の運動会や学芸会の映像が投影されるのだ。
学校はモダンな校舎だけれど、たて替えられていないので、可能になった芸当だろう。
ただし、運動会の朝、自宅を出るときの場面では、自宅や、その周辺の店舗が新しくなっていることがわかり、時代の流れを感じる。
この「二重写し」のほか、現代の学校を高速度撮影した場面がところどころに挿入される(スケートリンク作りの場面などは、道外の人には物珍しいだろう)。
もっと上の世代であれば、小学校時代の映像なんて、熱心な8ミリ映画の愛好者などをのぞけば、残っていないに違いない。
佐竹さんの世代になるとお父さんが行事のたびにビデオカメラを回していて、それが映像作品につかわれたのだろう。
そう考えれば、現代の作品だなあと思う。
ここに写っているのは、徹頭徹尾個人的な事柄である。
にもかかわらず、主な舞台が学校ということもあって、見る人に多大なノスタルジアを喚起する。
他人の過去なのに、ひどくなつかしいのだ。
使用されている過去の映像に感じられる親の愛情とか、かすかに聞こえてくるチャイムとか、そういった要素の積み重ねが、とくべつな演出よりもずっと見る者の琴線に触れる。
そして、この作品がすごいのは、個人的な追想に終始しているように見えて、舞台となった小学校の歴史を通じてもっと広い世界につながっていることだ。
茂岩小の、創立以来の卒業写真が連続して出てくるシーンがある。
ところが、昭和17年から25年までの写真は欠落しているのだ。
とても幸福そうに見える作者の幼年時代。
しかし、そこに連なる過去には、卒業写真すら残せないような苦難の時代があったのだ。
このシーンがなかったら、筆者はこれほど高くこの作品を評価しなかっただろうと思う。
大きいスクリーンで見ていただきたいが、下のリンク先でも見られます。未見の方はどうぞ。
http://www.nhk.or.jp/digista/review/061216_best.html
07年12月1日(土)-08年1月27日(日)9:45-17:00(入場-16:30)、月曜(1月14日は開館)、12月25日、29日-1月3日、1月15日休み
札幌芸術の森美術館(南区芸術の森2)
アップがおくれてすいません。
開催中のPart2も早く見に行かねば。