冒頭画像は「分岐点」。
80号を2枚つなげた、150号相当という、水彩画では例外的な大作です(少なくても筆者は道内で見たことがない巨大さです)。
石垣さんは近年、雪に覆われた道路などを描いた作品を手がけており、ひそかに「わだちシリーズ」と呼んでいます。「分岐点」は4作目にあたります。
手前から奥へと続く直線道路。行く手はゲートが閉まり、遮断されています。
「何もなくずっとまっすぐに行くよりはいいでしょう」
閉塞的な状況の比喩というよりは、回り道してもいいじゃないかという、作者の思いを感じます。
この絵で最も目を引くのは、水彩とは思えない、強靱で硬いマチエールです。
アクリル絵の具ではなく不透明水彩を使っているとのこと。紙を粉にしたものも混ぜているそうです。
「サッポロ未来展」など、他の分野と同時に発表する機会が増えて、水彩画の弱さが気になっていたとのこと(筆者は、石垣さんの絵は、弱々しいとは思いませんが)。
おもしろいのは、シリーズ1作目を水彩連盟展に出品したところ、「美術の窓」誌で、雪ではなく砂丘だとみられ、わだちも戦車のキャタピラの跡とされて、反戦の意味を込めた作ではないかと解釈・批評されたとのことです。
今回の「分岐点」でも同じように解釈して「戦闘機をかきくわえてはどうか」と話しかけてきた老人の観客がいたそうです。
いくらなんでも誤解だと思うのですが、石垣さんは
「見る人にいろいろ想像させる絵がかきたい。そういう意味では、深読みしてくれて、自分としては成功なんです」
などと笑顔で語ります。
筆者が思うに、そういう解釈が生じるのは、石垣さんが描く雪が汚いことも一因だと思います。
急いでつけくわえますと、筆者は、雪が汚く見えることを批判しているわけではありません。
むしろ、北海道に住む人間にとって、時として雪は汚いものです。むしろ汚さにこそ、リアリティーがあるのです。
純白の雪しか知らない、あるいは想像できない人たちには、うす汚れた雪が砂丘に見えてしまうのかもしれません。
この「分岐点」以外は、写実的で、色調のクリアな風景画が並んでいました。
木々やクマザサを、美しい逆光とともにとらえた「冬の日のひなたぼっこ」、石のコケなども含め川の湿り具合が譚円に描写された「コキュウ」などが特に目を引きました。
石垣さんは1979年生まれ、札幌在住。
水彩画家として、個展や「サッポロ未来展」などグループ展のほか、道展、水彩連盟展にも出品しています。
またイラストレーターとしても活躍、絵画教室でも指導するなど、めざましい活躍を続けています。
2017年2月27日(月)~3月5日(日)午前10時~午後6時(初日正午~、最終日~4pm)
らいらっく・ぎゃらりい(大通西4 道銀本店)
□石垣渉さんのサイト http://www.ishigaki-w.com (スマートフォンにも対応するようこのたびリニューアルしました)
関連記事へのリンク
■第10回透明水彩展 コロコニ (2016)
■石垣渉水彩画の世界 -身近にある景色-
■透明水彩展コロコニ (2015、画像なし)
■第9回 水彩連盟 北海道札幌支部展 (2014)
■石垣渉 水彩画の世界展~10周年記念展 (2014)
■水彩連盟北海道札幌支部展 (2013年、画像なし)
【告知】石垣渉 水彩画の世界展~世界の景色と北海道の風景~(2013)
■石垣 渉 水彩画の世界展 ~地球~ (2012、札幌)
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【告知】透明水彩コロコニ (2011)
■2010年5月の個展
■石垣渉 水彩画の世界展 (2009年7月)
■透明水彩コロコニ(2009)
■透明水彩展 コロコニ(2008、画像なし)
■北海道イラストレーターズクラブα(アルファ)会員作品集 マイワーク26原画展(2008年)
■石垣渉 水彩画の世界展 (2008年4月)
■石垣渉 水彩画の世界展 -流れ-(2007年)
■竹津昇・石垣渉2人展(2007年)
道新夕刊の後志・小樽版に石垣渉さんがイラスト
■石垣渉風景画展(2003年)
80号を2枚つなげた、150号相当という、水彩画では例外的な大作です(少なくても筆者は道内で見たことがない巨大さです)。
石垣さんは近年、雪に覆われた道路などを描いた作品を手がけており、ひそかに「わだちシリーズ」と呼んでいます。「分岐点」は4作目にあたります。
手前から奥へと続く直線道路。行く手はゲートが閉まり、遮断されています。
「何もなくずっとまっすぐに行くよりはいいでしょう」
閉塞的な状況の比喩というよりは、回り道してもいいじゃないかという、作者の思いを感じます。
この絵で最も目を引くのは、水彩とは思えない、強靱で硬いマチエールです。
アクリル絵の具ではなく不透明水彩を使っているとのこと。紙を粉にしたものも混ぜているそうです。
「サッポロ未来展」など、他の分野と同時に発表する機会が増えて、水彩画の弱さが気になっていたとのこと(筆者は、石垣さんの絵は、弱々しいとは思いませんが)。
おもしろいのは、シリーズ1作目を水彩連盟展に出品したところ、「美術の窓」誌で、雪ではなく砂丘だとみられ、わだちも戦車のキャタピラの跡とされて、反戦の意味を込めた作ではないかと解釈・批評されたとのことです。
今回の「分岐点」でも同じように解釈して「戦闘機をかきくわえてはどうか」と話しかけてきた老人の観客がいたそうです。
いくらなんでも誤解だと思うのですが、石垣さんは
「見る人にいろいろ想像させる絵がかきたい。そういう意味では、深読みしてくれて、自分としては成功なんです」
などと笑顔で語ります。
筆者が思うに、そういう解釈が生じるのは、石垣さんが描く雪が汚いことも一因だと思います。
急いでつけくわえますと、筆者は、雪が汚く見えることを批判しているわけではありません。
むしろ、北海道に住む人間にとって、時として雪は汚いものです。むしろ汚さにこそ、リアリティーがあるのです。
純白の雪しか知らない、あるいは想像できない人たちには、うす汚れた雪が砂丘に見えてしまうのかもしれません。
この「分岐点」以外は、写実的で、色調のクリアな風景画が並んでいました。
木々やクマザサを、美しい逆光とともにとらえた「冬の日のひなたぼっこ」、石のコケなども含め川の湿り具合が譚円に描写された「コキュウ」などが特に目を引きました。
石垣さんは1979年生まれ、札幌在住。
水彩画家として、個展や「サッポロ未来展」などグループ展のほか、道展、水彩連盟展にも出品しています。
またイラストレーターとしても活躍、絵画教室でも指導するなど、めざましい活躍を続けています。
2017年2月27日(月)~3月5日(日)午前10時~午後6時(初日正午~、最終日~4pm)
らいらっく・ぎゃらりい(大通西4 道銀本店)
□石垣渉さんのサイト http://www.ishigaki-w.com (スマートフォンにも対応するようこのたびリニューアルしました)
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