苫小牧市美術博物館の「中庭展示」は Vol.17 になるそうです。
会場は、建物に四方を囲まれ、空が見えるほぼ正方形のスペース。見る人は立ち入ることはできず、周囲の廊下から窓越しに鑑賞する(2階の窓から見下ろすことも可能)というスタイルですが、制約の多さを逆手に取って、ユニークな展示が続いています。
少なくとも、単なるタブロー(油絵など)や、雨で消えてしまう作品は、展示に堪えないわけで、作者が知恵を絞っています。
澁谷俊彦さん(札幌。1960~)の「Snow Pallet(スノーパレット)」シリーズは、冬の屋外向けの展示といえそうです。
14作目となる今回は、苫小牧が道内でも雪の少ない地域であることを念頭に置いて「雪待の庭「薄雪」と名付けました。
ところがこの冬は、苫小牧も異例の雪の多さだったようです。
筆者はもっと早い時期に訪れる予定でしたが、暴風雪に予定を狂わされ、ようやく会期最終日の2日前に訪れることができました。
これは悪口ではないのですが、筆者がこれまで見た Snow Pallet シリーズの中で、最も汚れた作品になっていました。
すでに積雪はわずかで、このシリーズの趣旨である
「円盤の裏側に塗った色鮮やかな塗料が雪の白い表面に淡く反射して見える」
状態は終わっていました。
(円盤が上下に重なるように配置されているところでは、下の円盤に、上側からの光が反射して見えているのですが)
しかし、3月中旬に雪が汚くなっているのは、むしろ自然なことです。
Snow Pallet シリーズはこれまでも、雪国に住むわたしたちの暮らしがそうであるように、雪とのせめぎ合いのなかで展開されてきました。
ホテルの中庭ではなかなか雪が積もらなかったり、小樽では積もった雪の下にすっかり埋没したり…。
積雪が多く、4月になっても展示していたこともあります。
そのたびに作者の澁谷さんは、円盤の高さなどを再設計し、試行錯誤しながら次の冬に臨んでいたのです。
今回の展示も、円盤は高いものから低いものまで相当な差が付いており、完全な埋没は回避できるようになっています。
「自然が作者の意のままになる。コントロール可能である」
という、西洋近代的な作品のありかたとは異なる要素こそが、 Snow Pallet シリーズの真骨頂であることを思えば、作品が汚いことはまったく気にならなかったのです。
2021年10月9日(土)~2022年3月13日(日)午前9時半~午後5時(入場30分前)、月曜休み(祝日開館し翌日休み)
苫小牧市美術博物館(苫小牧市末広町3 https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/hakubutsukan/ )
作者のサイト www.toshihikoshibuya2.com
過去の関連記事へのリンク
■坂東史樹「小さくて深い空」 中庭展示―Court installationーvol.13 (2019~20)
■中庭展示Vol.12 半谷学 「花降りーFlower Fallー」(2019)
松井紫朗「Channnel」 (2017)
【告知】岡本光博展「UFO after/未確認墜落物体 その後」(2016)
【告知】イコロの森ミーツ・アート 2021 (9月16~26日、苫小牧)
■澁谷俊彦 Snow Pallet 13 「アントロポセンに積もる雪 Snow on Anthropocene」(2020年12月~21年3月の積雪期)
【告知】澁谷俊彦「スノーパレット13」―Toshihiko Shibuya SNOW PALLET 13
■澁谷俊彦展ー起源・発生 / 共生・共存 (2020年9~11月、帯広) ■続き
【告知】イコロの森ミーツ・アート2020 web展覧会 ※画像なし
【告知】澁谷俊彦展 ー起源・発生 /共生・共存 (2020)※動画あり。画像なし
■澁谷俊彦 個展 -起源・発生- (2019)
ニュース映像の紹介 : オブジェ 雪面に色の表情 札幌でスノーパレット展 (澁谷俊彦さんの屋外インスタレーション) (2020)
■澁谷俊彦個展 White Collection Best Selection (2020年1~2月)
■澁谷俊彦 版画の世界展 -記憶- (2019年11月~20年1月)
■イコロの森 ミーツ・アート2019 ー森の野外美術展ー
■Toshihiko Shibuya 澁谷俊彦 Snow Pallet 11
「河口」展、澁谷俊彦作品をたどる (2018)
■澁谷俊彦「Snow Pallet 10」
北海道文化賞の授賞式に出席してきました (2017)
■北海道文化奨励賞受賞記念/澁谷俊彦個展「White Collection Black Series」(2017)
■Toshihiko Shibuya “Snow Pallet 9” 澁谷俊彦 (2016~17)
ヒト科ヒト属ヒト 帯広コンテンポラリーアート2016 (執筆中。告知はこちら)
■澁谷俊彦展 White Garden (2016年6~7月)
■澁谷俊彦 新作ホワイトコレクション (2015)
■澁谷俊彦 ANNIVERSARY COLLECTION
■ICE HILLS HOTEL - アイスヒルズホテル in 当別 (2014)
■防風林アートプロジェクト (2014)
■澁谷俊彦 THE WHITE COLLECTION / GENERATION(2013)
【告知】SNOW PALLET III and 4 : Toshihiko Shibuya installation(~2013年2月17日・千歳/~3月雪解け・札幌)
CREATIVE HOKKAIDO METTS HONG KONG / 香港で北海道の食、観光、アートをPR
【告知】奔別アートプロジェクト (2012年)
■JRタワー・アートプラネッツ2012 楽しい現代美術入門 アルタイルの庭(2012年)
■澁谷俊彦「風の森II」Forest of wind 2012-II
【告知】澁谷俊彦「風の森 II」 Forest of wind 2012-II
■澁谷俊彦 SNOW PALLET 2、札幌芸術の森美術館で2012年4月14日から撤収(13日に一部撤収)
Toshihiko Shibuya's works are on the overseas website (2012)
■「ハルカヤマシロシメジ繁殖計画」 ハルカヤマ藝術要塞
■澁谷俊彦 茶室DEアート (2011)
【予告】澁谷俊彦展 -トノサマガエルの雨宿り (2011年5月)
■Snow Scape Moere 6 澁谷俊彦「SNOW PALLET」(2011年2月)
■PLUS ONE THIS PLACE(2010年9月)
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 藤本和彦 澁谷俊彦(2009年8月)
■澁谷俊彦展-森の雫09- 茶室DEアート (2009年7月)
■澁谷俊彦個展-青い雫09-
■澁谷俊彦展 森の雫(2008年3月)■つづき
2000~07年は、上のリンクからたどってください
会場は、建物に四方を囲まれ、空が見えるほぼ正方形のスペース。見る人は立ち入ることはできず、周囲の廊下から窓越しに鑑賞する(2階の窓から見下ろすことも可能)というスタイルですが、制約の多さを逆手に取って、ユニークな展示が続いています。
少なくとも、単なるタブロー(油絵など)や、雨で消えてしまう作品は、展示に堪えないわけで、作者が知恵を絞っています。
澁谷俊彦さん(札幌。1960~)の「Snow Pallet(スノーパレット)」シリーズは、冬の屋外向けの展示といえそうです。
14作目となる今回は、苫小牧が道内でも雪の少ない地域であることを念頭に置いて「雪待の庭「薄雪」と名付けました。
ところがこの冬は、苫小牧も異例の雪の多さだったようです。
筆者はもっと早い時期に訪れる予定でしたが、暴風雪に予定を狂わされ、ようやく会期最終日の2日前に訪れることができました。
これは悪口ではないのですが、筆者がこれまで見た Snow Pallet シリーズの中で、最も汚れた作品になっていました。
すでに積雪はわずかで、このシリーズの趣旨である
「円盤の裏側に塗った色鮮やかな塗料が雪の白い表面に淡く反射して見える」
状態は終わっていました。
(円盤が上下に重なるように配置されているところでは、下の円盤に、上側からの光が反射して見えているのですが)
しかし、3月中旬に雪が汚くなっているのは、むしろ自然なことです。
Snow Pallet シリーズはこれまでも、雪国に住むわたしたちの暮らしがそうであるように、雪とのせめぎ合いのなかで展開されてきました。
ホテルの中庭ではなかなか雪が積もらなかったり、小樽では積もった雪の下にすっかり埋没したり…。
積雪が多く、4月になっても展示していたこともあります。
そのたびに作者の澁谷さんは、円盤の高さなどを再設計し、試行錯誤しながら次の冬に臨んでいたのです。
今回の展示も、円盤は高いものから低いものまで相当な差が付いており、完全な埋没は回避できるようになっています。
「自然が作者の意のままになる。コントロール可能である」
という、西洋近代的な作品のありかたとは異なる要素こそが、 Snow Pallet シリーズの真骨頂であることを思えば、作品が汚いことはまったく気にならなかったのです。
2021年10月9日(土)~2022年3月13日(日)午前9時半~午後5時(入場30分前)、月曜休み(祝日開館し翌日休み)
苫小牧市美術博物館(苫小牧市末広町3 https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/hakubutsukan/ )
作者のサイト www.toshihikoshibuya2.com
過去の関連記事へのリンク
■坂東史樹「小さくて深い空」 中庭展示―Court installationーvol.13 (2019~20)
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