古民家を改造したギャラリー犬養の2階の壁という壁を、大小のモノクロプリント(一部、パートカラーあり)およそ720枚(※ 25日朝、枚数を訂正しました)で埋め尽くした写真展。
撮影者は10人だが、キャプションは一切なし。もちろん額装もなく、おびただしいプリントが重なり合って壁に直接貼られている。圧巻、のひと言だ。
写真はすべて盛り場などの街路で撮影されたスナップ。飲食店が並ぶ路地、猫が居座るスナック、さびれた商店街、雪の上の足跡などが、ランダムに並ぶ。
撮影地も、札幌のラーメン横丁など、すぐにわかるものもあるが、東京、室蘭、小樽、江別、岩見沢、沖縄など、多岐にわたっており、見てもわからない場所の方が多かった。
写真のサークル展は、メンバーがそれぞれの自信作を1点、多くても4点を、1点ずつパネルに入れて、題と作者名を記したキャプションを付すのが通例だろう。場合によっては使用機材やレンズ、撮影データ(感度やシャッタースピード、絞り)も書くこともある。
今回の写真展は、その正反対。誰がどれを撮ったのか、それぞれの題は何かなど、まったくわからない。プリントとプリントの間に隙間がない。
もともと写真は、絵画などにくらべると、作者の特定をしづらいメディアである。
言い換えれば、アノニマスなメディアであるともいえる。創造物としての個性よりも、無個性な「記録」としての性格が強く出る。
ここから思い出すのは、やはりモノクロで街撮りを続けている巨匠、森山大道のことだ。
彼も「記録」ということをよく言っている。しかし「記録」の果てにどうしてもにじみ出てくるのが、個性なのだろうと、筆者は思う。
今回の写真展は、街撮りスナップがもつアノニマス性を、さらに推し進めて徹底させたような展示だ。
しかし、無個性の記録のように見えて、それでもなお残る個々の感受性、あるいは撮影者の体臭のようなものが、会場全体に漂う。人間がシャッターを押している限り、それは避けられない。
非常に戦略的・意図的であり、方法論に自覚的である、意義深い展覧会だと思う。
出品者は次の通り。さっきから書いているように、どのプリントを誰が撮ったのかは、会場ではまったくわからない。もっとも、わかったからといって、そのことにさして意味のある展覧会でもなさそうだ。
伊藤 也寸志
板敷 和広
佐藤 博隆
木村 輝久
牧志 禮
山川 藍
Hirofumi.Oka
Daisuke.Shimakura
nakky
Masahiro.Mori
2016年4月20日(水)~25日(月)午後1時~10時
ギャラリー犬養(札幌市豊平区豊平3の1)
□「写真都市」の関連ページ http://foto-metro.com/archives/2963
・地下鉄東西線「菊水駅」から約700メートル、徒歩9分
・中央バス「豊平橋」から約180メートル、徒歩3分
・地下鉄東豊線「学園前駅」から約1キロ、徒歩13分
撮影者は10人だが、キャプションは一切なし。もちろん額装もなく、おびただしいプリントが重なり合って壁に直接貼られている。圧巻、のひと言だ。
写真はすべて盛り場などの街路で撮影されたスナップ。飲食店が並ぶ路地、猫が居座るスナック、さびれた商店街、雪の上の足跡などが、ランダムに並ぶ。
撮影地も、札幌のラーメン横丁など、すぐにわかるものもあるが、東京、室蘭、小樽、江別、岩見沢、沖縄など、多岐にわたっており、見てもわからない場所の方が多かった。
写真のサークル展は、メンバーがそれぞれの自信作を1点、多くても4点を、1点ずつパネルに入れて、題と作者名を記したキャプションを付すのが通例だろう。場合によっては使用機材やレンズ、撮影データ(感度やシャッタースピード、絞り)も書くこともある。
今回の写真展は、その正反対。誰がどれを撮ったのか、それぞれの題は何かなど、まったくわからない。プリントとプリントの間に隙間がない。
もともと写真は、絵画などにくらべると、作者の特定をしづらいメディアである。
言い換えれば、アノニマスなメディアであるともいえる。創造物としての個性よりも、無個性な「記録」としての性格が強く出る。
ここから思い出すのは、やはりモノクロで街撮りを続けている巨匠、森山大道のことだ。
彼も「記録」ということをよく言っている。しかし「記録」の果てにどうしてもにじみ出てくるのが、個性なのだろうと、筆者は思う。
今回の写真展は、街撮りスナップがもつアノニマス性を、さらに推し進めて徹底させたような展示だ。
しかし、無個性の記録のように見えて、それでもなお残る個々の感受性、あるいは撮影者の体臭のようなものが、会場全体に漂う。人間がシャッターを押している限り、それは避けられない。
非常に戦略的・意図的であり、方法論に自覚的である、意義深い展覧会だと思う。
出品者は次の通り。さっきから書いているように、どのプリントを誰が撮ったのかは、会場ではまったくわからない。もっとも、わかったからといって、そのことにさして意味のある展覧会でもなさそうだ。
伊藤 也寸志
板敷 和広
佐藤 博隆
木村 輝久
牧志 禮
山川 藍
Hirofumi.Oka
Daisuke.Shimakura
nakky
Masahiro.Mori
2016年4月20日(水)~25日(月)午後1時~10時
ギャラリー犬養(札幌市豊平区豊平3の1)
□「写真都市」の関連ページ http://foto-metro.com/archives/2963
・地下鉄東西線「菊水駅」から約700メートル、徒歩9分
・中央バス「豊平橋」から約180メートル、徒歩3分
・地下鉄東豊線「学園前駅」から約1キロ、徒歩13分