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■福江悦子個展「大夢」 (2022年4月12~29日、札幌)

2022年05月19日 10時28分17秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 仏僧であり、酒場の主人であり、女性彫刻家でもあるという経歴の持ち主による個展。
 略歴を拝見すると何度も個展を開いており、道展にも入賞を重ねているようですが、筆者がちゃんと作品に向き合ったのは初めてのように思います。

 テラコッタの首をインスタレーションふうに並べたり、石膏による人物像を置いたりと、バラエティー豊かな展示をしており、一般的な彫刻展に比べるとかなり楽しい印象を受けます。
 そして、なにより特徴的なのは、メインとなっている首(彫刻で人物の頭部のこと)がいずれも、目を閉じていることです。
 これには、虚を突かれた思いでした。

 というのは、こんなことを筆者が書いたらダメかもしれないですが、人物の首なんて、芸術に詳しい人や彫刻がとても好きな人は別にして、作品にそれほど大きな個性の違いや作風の差を見いだしようがないじゃないですか。
 ところが、どの人物も目をつぶっているというのは、意外と、見たことのない行き方です。
 たったそれだけのことですが、作品の持つ世界がぐんと広がって見えるのです。


 下の引用部分は、会場のト・オン・カフェのサイトからコピペした作者のことばです。
 中国の伝説的な思想家や、古代の仏典や、日本を代表する推理作家に、下記のようなことばがあるのかどうかまでは筆者自身では確認していませんが…。
 筆者が好きなのは、19世紀フランス・ロマン主義の詩人ネルヴァルの「夢と人生」の書き出しです。
「夢は第二の人生である」
 

「大夢」(たいむ)

・「大夢」老子の言葉

・眠れる者たちの中にあってよく目覚めてあれ。(中村元訳『真理のことば』)

・うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと(江戸川乱歩)


眠れるもの、とは私たち人間のことです。

寝ている者が夢から目覚め、夢が消え現実に戻るように、この日常(現実という夢、大夢)からもう一つの現実(真理)に目覚めましょうというお釈迦様の願いが私たちには掛けられています。

昨年に引き続き「眠り」をテーマにした作品でまとめました。

寝ている脱力した表情や無防備な姿が好きです。

起きながらにして眠っているような自分の思考や行動について省みながらも、ただ形を楽しんで粘土に遊んでもらいました。

そして時に粘土や材料が真理を知らせてくれる時があります。

《窯焼きは陶芸家下沢敏也氏にご協力いただきました。ありがとうございます。》



 福江さんは、5月14~22日に小樽・朝里地域で開かれているグループ展「朝里川 花咲く現代アート展」にも出展しているとのことです。

2022年4月12日(火)~29日(日)午前10時半~午後8時(ラストオーダー7時半)
TO OV cafe / gallery (札幌市中央区南9西3 マジソンハイツ)

https://toovcafegallery.shopinfo.jp/posts/32492114?categoryIds=1097132


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2 コメント

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Unknown (福江悦子)
2022-08-04 19:48:04
ただいま読みました。素晴らしい感想と紹介をいただきありがとうございました🙏
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福江さん、こんばんは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2022-08-04 22:12:38
ご丁寧にありがとうございます。

このあと、朝里でも作品を拝見しました。

またちょくちょくブログに遊びにいらしていただければうれしいです。
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