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■砂澤ビッキ展 (2022年11月22日〜23年1月22日、札幌) 1月14日は11カ所(8)

2023年01月21日 10時12分11秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
(承前)

 いまさらこの芸術家について説明は不要だろう。
 歿後35年、なお繰り返し回顧展が開かれる北海道の木彫作家だ。
 ただし、近年美術館での展示が多いにもかかわらず、今回の展示の特徴がどこにあるのか、とくに広報がなかったのは、残念と言わざるを得ない。

 SNS などでは非常に評判が良かったので見に行ったら、ほとんどが、いままで見たことのない個人蔵の作品で、これを見逃す手はないだろうと強く思った。
 コレクション主の大半は明かされていない。一部は、2009年に茶廊法邑で開かれた「砂澤ビッキ展 樹兜虫の世界」の出品作ではなかろうか(確証はないが)。
 関節などが自在に動き、晩年の「午前3時の玩具」につながるような、魚や虫をかたどった作品が大量に並んでいるのをはじめ、裸婦デッサン、巻紙に書いたエスキス、エカシ(アイヌ語で長老の意)などの人形、さらには鏡やいすといったインテリアなど、大変な多作ぶりに舌を巻いた。
 ビッキを写した写真も最後のコーナーに並べている。

 ビッキは、彫刻を「触覚で見る、感じる」ことの重要性を分かっていて、実際に触って動かせる作品をたくさん制作したようだ。
 館の側では、最初のほうで、「触れて動かしてほしいが、借り物なのでごめんなさい」(大意)という但し書きを貼っていて、この正直さには好感を抱いた。
 大げさな結界などはなく、手を伸ばせばすぐにでも触れそうな近さに置かれた作品ばかりで、来場者を信頼していることが伝わってきた。
 もっとも、いすなどは順路の最後のほうにあったので、思わずどっこいしょとすわってしまいそうになったが(苦笑)。
 一方で、ライティングはあまり良いとは感じられない。作品保護の意味があるのかもしれないが、木彫の細部を確かめられるような明るさが足りないところが目に付いた。

 これまで砂澤ビッキの作品で見る機会の多かったものは、いわゆるミュージアム・ピースとよばれる大作がほとんどで、今回並んでいるような中ぐらいの、コレクターが自宅に飾ったりしまったりできるサイズの作品はあまりない。それらは市民の日常生活になじむ工芸的なものであるが、ビッキはそれらをとりたてて区別することなく、大作も工芸的作品もおなじようなスタンスで取り組んでいたことが、よく分かる展示だった。
 近年はそうでもないが、20世紀の美術家には「小品の売り絵」や「小さい置物」は、大作とは別の心構えでつくっていた人は多かったのだ(それが一概に悪いとはいえない)。
 とにかく、どんどん手が動いてしまう人だったんだろうな~という想像がついた。


2022年11月22日(火)〜2023年1月22日(日)午前9時半~午後5時、月曜休み(1月9日は開館)
北海道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)

過去の関連記事へのリンク
砂澤ビッキ「北の星座A・B」 =北見市常呂町 (2021)
砂澤ビッキ「北の動物」「無題」「分水嶺A・B」
砂澤ビッキ「北の動物たち」(北見市常呂町)

山川草木 美は自然に宿る(2020。「風」の画像あり)
砂澤ビッキの詩と本棚 (2020)

近美コレクション 北の美術家群像 (2018)
砂澤ビッキ展 木魂(こだま)を彫る (2017)

中原悌二郎記念旭川彫刻美術館ステーションギャラリーがオープン(2012)=「カムイミンダラ」を常設展示
森と芸術 (2011)※画像なし
砂澤ビッキ「四つの風」(札幌芸術の森野外美術館)の2本目も倒壊 ※画像なし

砂澤ビッキ「四つの風」の1本が倒れる 遺志尊重し修復せず-札幌芸術の森野外美術館 (2010)

砂澤ビッキ展 樹兜虫の世界 (2009年2月)※画像なし
砂澤ビッキ展(2008年)※画像なし
エコミュージアムおさしまセンター(BIKKYアトリエ3モア)=「オトイネップタワー」の画像あり
砂澤ビッキ作品、旭川市に寄贈(2007年)※画像なし

「四つの風」 (2006現在の画像)

「四つの風」をあしらった札幌市交通局のウィズユーカード (2002.ページ最下段)




・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」で降車、すぐ(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)

・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分

・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分

・ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」(JR桑園駅―円山公園駅―啓明ターミナル)で「大通西15丁目」降車、約400メートル、徒歩5分
・ジェイアール北海道バス「54 北5条線」(JR札幌駅―西28丁目駅)「58 北5条線」(JR札幌駅―琴似営業所)で「北5条西17丁目」降車、約540メートル、徒歩7分
・ジェイアール北海道バス「50 啓明線」「51 啓明線」「53 啓明線」(JR札幌駅―啓明ターミナル)で「南3条西16丁目」降車、約830メートル、徒歩11分

※指定駐車場は北1西15の「ビッグシャイン」です。徒歩3分

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