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■羽毛蒼洲 書の個展「今、心に映ること」 (2017年11月2~7日、札幌)

2017年11月07日 11時59分59秒 | 展覧会の紹介-書
 羽毛蒼洲さんは札幌の書家(羽の漢字は正字の「羽」ですが、機種依存文字なので常用漢字の字体を使わせていただきます)。1942年生まれなので今年75歳ですが、とてもお若く見えます。
 今回は5年ぶりの個展です。私は札幌にいなかったので拝見しておらず、じっくり見るのは14年前に大丸藤井スカイホール全室を使って開いた個展以来となります。

 羽毛さんというと、淡墨のイメージがあります。しかし今回は、27点のうち1○点が濃墨です。これは、道教育大での師匠だった藤根剴風さんを見舞いがてら、自作を額装して見せているうちに、濃墨も出すことになったようです。
 ただ、師匠といっても、羽毛さんは、藤根さんが設立した清風会には所属していません。
 今回はすべて漢字の少字数書です。

 藤根さんはことし2月に亡くなり、また羽毛さんは札幌芸術賞を昨秋受賞しました。
 そんなこともあって個展の開催を考えていたところ、たまたま道新ぎゃらりーにキャンセルが生じて、開けたということでした。

 筆者なりのつたない感想を述べれば、淡墨、濃墨を問わず、線質の柔らかさが印象に残ります。
 例えば「竹」という字でも、硬い直線ではなく、柔軟な曲線が全体を特徴づけています。
 この柔らかさがあってこそ、全体の空間が意識され、生きるのだろうと感じます。

 そして、生意気ついでに言わせていただけば、羽毛さんは
「肚(はら)で書いておられるな」
としみじみ感じました。
 初学者は手で書きます。しかし、肘から先だけで書いた文字はどこか縮こまって見えます。また、頭で書いた文字というのも、この世にはあります。理知は大切ですが、それが勝ち過ぎるのも、作品のおもしろみを減じるおそれがありましょう。
 羽毛さんは全身で書いています。とはいえ、若い人のパフォーマンスのように体を目いっぱい動かすのとも異なり、大きな深呼吸に通じるような、広闊な身体のたたずまいがあります。

 冒頭の画像、手前は「熾火」だと思いますが、全体のバランスはさすがで、潤渇もよく表現されています。


 濃墨の「山川草木」と、淡墨の「時」。
 前者は、簡素さと余白が引き立ちます。
 ただし、良寛ふうのひょろひょろした文字とはまた別の、やわらかさの向こうにある剛毅な精神もまた感じられます。
 「時」は小品ですが、羽毛さんが込めた思いのようなものがつたわってきます。

 書をしない人でも見応えがある展示だと思いますので、お時間のある方はどうぞ。


11月2日(木)~7日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
道新ぎゃらりー(札幌市中央区大通西3 北海道新聞本社北1条館 道新ぷらざ)


10人の書展 (2010)
第47回北海道書道展(会員・招待)=2006
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