羽毛蒼洲さんは札幌の書家(羽の漢字は正字の「羽」ですが、機種依存文字なので常用漢字の字体を使わせていただきます)。1942年生まれなので今年75歳ですが、とてもお若く見えます。
今回は5年ぶりの個展です。私は札幌にいなかったので拝見しておらず、じっくり見るのは14年前に大丸藤井スカイホール全室を使って開いた個展以来となります。
羽毛さんというと、淡墨のイメージがあります。しかし今回は、27点のうち1○点が濃墨です。これは、道教育大での師匠だった藤根剴風さんを見舞いがてら、自作を額装して見せているうちに、濃墨も出すことになったようです。
ただ、師匠といっても、羽毛さんは、藤根さんが設立した清風会には所属していません。
今回はすべて漢字の少字数書です。
藤根さんはことし2月に亡くなり、また羽毛さんは札幌芸術賞を昨秋受賞しました。
そんなこともあって個展の開催を考えていたところ、たまたま道新ぎゃらりーにキャンセルが生じて、開けたということでした。
筆者なりのつたない感想を述べれば、淡墨、濃墨を問わず、線質の柔らかさが印象に残ります。
例えば「竹」という字でも、硬い直線ではなく、柔軟な曲線が全体を特徴づけています。
この柔らかさがあってこそ、全体の空間が意識され、生きるのだろうと感じます。
そして、生意気ついでに言わせていただけば、羽毛さんは
「肚(はら)で書いておられるな」
としみじみ感じました。
初学者は手で書きます。しかし、肘から先だけで書いた文字はどこか縮こまって見えます。また、頭で書いた文字というのも、この世にはあります。理知は大切ですが、それが勝ち過ぎるのも、作品のおもしろみを減じるおそれがありましょう。
羽毛さんは全身で書いています。とはいえ、若い人のパフォーマンスのように体を目いっぱい動かすのとも異なり、大きな深呼吸に通じるような、広闊な身体のたたずまいがあります。
冒頭の画像、手前は「熾火」だと思いますが、全体のバランスはさすがで、潤渇もよく表現されています。
濃墨の「山川草木」と、淡墨の「時」。
前者は、簡素さと余白が引き立ちます。
ただし、良寛ふうのひょろひょろした文字とはまた別の、やわらかさの向こうにある剛毅な精神もまた感じられます。
「時」は小品ですが、羽毛さんが込めた思いのようなものがつたわってきます。
書をしない人でも見応えがある展示だと思いますので、お時間のある方はどうぞ。
11月2日(木)~7日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
道新ぎゃらりー(札幌市中央区大通西3 北海道新聞本社北1条館 道新ぷらざ)
■10人の書展 (2010)
第47回北海道書道展(会員・招待)=2006
■羽毛蒼洲 書の個展 (2003)
今回は5年ぶりの個展です。私は札幌にいなかったので拝見しておらず、じっくり見るのは14年前に大丸藤井スカイホール全室を使って開いた個展以来となります。
羽毛さんというと、淡墨のイメージがあります。しかし今回は、27点のうち1○点が濃墨です。これは、道教育大での師匠だった藤根剴風さんを見舞いがてら、自作を額装して見せているうちに、濃墨も出すことになったようです。
ただ、師匠といっても、羽毛さんは、藤根さんが設立した清風会には所属していません。
今回はすべて漢字の少字数書です。
藤根さんはことし2月に亡くなり、また羽毛さんは札幌芸術賞を昨秋受賞しました。
そんなこともあって個展の開催を考えていたところ、たまたま道新ぎゃらりーにキャンセルが生じて、開けたということでした。
筆者なりのつたない感想を述べれば、淡墨、濃墨を問わず、線質の柔らかさが印象に残ります。
例えば「竹」という字でも、硬い直線ではなく、柔軟な曲線が全体を特徴づけています。
この柔らかさがあってこそ、全体の空間が意識され、生きるのだろうと感じます。
そして、生意気ついでに言わせていただけば、羽毛さんは
「肚(はら)で書いておられるな」
としみじみ感じました。
初学者は手で書きます。しかし、肘から先だけで書いた文字はどこか縮こまって見えます。また、頭で書いた文字というのも、この世にはあります。理知は大切ですが、それが勝ち過ぎるのも、作品のおもしろみを減じるおそれがありましょう。
羽毛さんは全身で書いています。とはいえ、若い人のパフォーマンスのように体を目いっぱい動かすのとも異なり、大きな深呼吸に通じるような、広闊な身体のたたずまいがあります。
冒頭の画像、手前は「熾火」だと思いますが、全体のバランスはさすがで、潤渇もよく表現されています。
濃墨の「山川草木」と、淡墨の「時」。
前者は、簡素さと余白が引き立ちます。
ただし、良寛ふうのひょろひょろした文字とはまた別の、やわらかさの向こうにある剛毅な精神もまた感じられます。
「時」は小品ですが、羽毛さんが込めた思いのようなものがつたわってきます。
書をしない人でも見応えがある展示だと思いますので、お時間のある方はどうぞ。
11月2日(木)~7日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
道新ぎゃらりー(札幌市中央区大通西3 北海道新聞本社北1条館 道新ぷらざ)
■10人の書展 (2010)
第47回北海道書道展(会員・招待)=2006
■羽毛蒼洲 書の個展 (2003)