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■モリケンイチ個展 女王蜂の夜 (2017年11月8~13日、札幌)

2017年11月13日 13時58分29秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 モリケンイチさんは札幌拠点の画家ですが、制作・発表ペースがすさまじいです。
 今年に入ってからの個展の紹介を下に二つあげておきましたが、その後、秋にカフェ北都館ギャラリーで小規模な(ただしほとんどが新作)の個展も開いています。それについて文章を書く前に、次の個展(つまり、今回の個展)が開催されることになってしまいました。
 実は、年末にはスカイホールでの展覧会も控えており、体をこわさないか、いささか心配になってきます。


 今回は、女王蜂の生態をパロディー化して人間に当てはめた連作。

 色彩をふんだんに用いるのではなく、デッサンなどに使うことの多い画材であるコンテでモノトーンの人物を描き、要所要所に油彩で着彩を施しています。
 これが、タブローとイラストレーションの中間というか、双方のいいとこ取りのような、モリさんらしい世界を生むことにつながっています。
「コンテの黒い色が好きなんですよ」

 モリさんにお聞きしたところ、油絵の具は砕いて紙にすり込ませているそうで、強度的には大丈夫とのこと。

 随所に添えられたキャプションの説明を読んでいくうちに、ミツバチの生態にも詳しくなってきます。

 筆者は子どもの頃、まあ女王蜂が偉そうでうらやましく、働き蜂は労働させられてかわいそうだな~と思っていたのですが、この説明を読んでいくと、働き蜂は仕事があるだけまだマシで、オス蜂は、女王蜂と一緒になれるのもごく一部で、大半は無為のうちに死んでいくと知って、なんだかな~と気の毒になってきました。
 ひたすら出産マシーンをやらされる女王蜂は女王蜂で、やはりかわいそうで、どうもミツバチ全体が、救いようのない生態を神さまから押しつけられているとしか思えません。

 というか、このシリーズ、男が非常にみじめな存在に描かれていて、どうにもいたたまれなくなってきます。

 この個展に出す作品の制作に取り掛かる前にモリさんが暗い気分になっていたようなのですが、一連の絵を見ていると、それもむべなるかなと思えてきます。よく、こんなに、見ているだけでどよ~んと落ち込んでしまう絵を、25点も描いたよなあ。
 変な感心の仕方ですみませんが。
 あるいは、けなしているように読み取る人がいると非常に困りますが、ここではあくまで、モリさんのパロディー感覚の鋭さに感服しているのです。


  スナックで所在なさげに酒を飲んでいる中年の男のハチに比べると、若い女王蜂などははつらつとしています。

 モリさんのすごいところは、単にミツバチの生態を人間社会になぞらえているだけではありません。
 よく見ると男たちの顔が、往年の俳優に似ています。
 また、上の画像が、「十字架降下(ピエタ)」の構図を下敷きにしているなど、泰西名画をさりげなくパロディー化した絵がいくつもあります。

 というわけで、見る楽しみの尽きない絵ではあるのですが、う~ん、やっぱり男はつらいよ(笑)といいたくなってくる連作なのでした。


2017年11月8日(水)~13日(月)午後1時~10時半(最終日~7時)
ギャラリー犬養(札幌市豊平区豊平3の1)


□モリケンイチ Web Gallery http://www.mori-kenichi.com/

モリケンイチ個展 トワ・エ・モワ(アナタとワタシ/アナタはワタシ) =2017年4月
モリケンイチ個展「真夜中のサーカス」 (2017年2月)


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