10月5日は午後から外出。
3時から、札幌芸術の森美術館で「五十嵐威暢の世界」展オープニングがあった。
いつものように真駒内駅までバスで行き、駅の近くから、館が用意する送迎バスに乗ったのだが、満席だった。ブリューゲル展のときは10人ぐらいしか乗っていなかったのに。
開会式・テープカットは珍しいことに、ロビーではなく、美術館前の屋外で行われた。
五十嵐さんが市に寄贈した「komorebi」が、美術館前の芝生に置かれることになったため、それが見える場所だというのと、人数がいつもよりも多くロビーでは収容しきれなかった―という事情があったと推察される。
五十嵐さんは滝川生まれ。
今回の展覧会は、初期のフリーのグラフィックデザイナー時代から近年の彫刻家としての仕事まで、150点余りで振り返っている。
「日本を代表する」「国際的な」というまくらことばはダテではなく、展示されている企業CIやロゴには、明治(MEIJI)、サミット(小売。北海道にはないが、東京にはたくさんある)、PARCO、サントリー、カルピスなどがあり、正直驚いてしまうし、ニューヨーク近代美術館のカレンダーなども手がけている。
1980年代には米国の永住権を取得し、20年ほどの間ロサンゼルスにアトリエを構えていた。
その後、東京などを経て、2015年に札幌に転居している。
ただ、あちこちの国で展覧会を開いているが、日本の公立美術館ではこれが初めてという。
中ほどのパートは、アルファベットなど文字を素材にしたポスターや立体などが目を引く。書やカリグラフィーとは異なるアプローチだ。
また、プロダクトデザインの分野でも、電話機や食器などをつくり、シンプルな美を追求している。
後半は、彫刻の大作を展示。既成のマッスがどう、ボリュームがどうという視点にこだわらなくても楽しく鑑賞できる作品ばかりだ。
ここで見落としてほしくないのは、ひとつは会場の最後にある略年譜。
五十嵐さんの業績を、写真をふんだんに使って見やすくまとめたすぐれものなのだが、末尾に、製作者の名前が小さく書いてあった。
原研哉
そりゃ見やすいはずだよね。日本を代表するデザイナーのひとりが作っているんだから。
原さんは11月に五十嵐さんとの対談を美術館で行う予定です。
もうひとつは、ロビー入り口右手の第2展示室。
ここは、五十嵐さんが作ってきたパブリックアートの紹介コーナーで、写真のほか、模型もある。
青森県立美術館の近くに巨大なパブリックアートもあるようで、模型からしてでかい。
いままで何点を作ってきたか、ご本人も把握していないらしい。
函館線の特急に乗っていると、滝川のあたりで、高くて細い塔のようなものが車窓から見えるのだが、これも五十嵐さんの作品だということがわかった。
さて、この展覧会が楽しい理由について考えてみた。
こんなことを書くと非常に語弊がありそうだが、五十嵐さんの作品はあまり考える必要がないのだ。
もっと語弊がありそうなことを書くと、デザインというのは、一般の人が日常生活をスムーズに送るためのもので、あれこれ考えさせるようなややこしいものであってはならない。
書道の作品は読めなくても美しければよいが、ポスターのデザインはいくら美しくても、読むために頭をひねらなくてはならないものでは意味がないのだ。
「考えなくてもいい」デザイン、いいかえれば、直感的にわかるデザインを考案するためには、デザイナーは考え抜かなくてはいけないし、直感ではなく理屈で配置や色彩を決めていかなくてはならないのだろう。
ただし、それを最後に決めるのは、センスと直感のような気もする。
五十嵐さんの「komorebi」などは、楽しそうに、遊びと直感の連続で作られているようにも見える。
そういうふうに見えた時点で、五十嵐さんの「勝ち」なのかもしれない。
2018年10月6日(土)~11月25日(日)、11月の月曜休み
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)
一般 千円(800円)、高校・大学生700円(560円)、小・中学生400円(320円)
かっこ内は団体料金。65歳以上は800円(年齢証明するものが必要)
使用済みのチケット半券持参で、当日料金の半額で入館できる(招待券をのぞく、一回限り有効)。
・地下鉄南北線「真駒内駅」で、同駅バスターミナル2番乗り場始発の中央バス(どの路線でも可)に乗り継ぎ、「芸術の森入口」降車。約360メートル、徒歩5分
・芸術の森第1駐車場から約320メートル、徒歩4分。駐車料金は1日500円(回数券あり)
3時から、札幌芸術の森美術館で「五十嵐威暢の世界」展オープニングがあった。
いつものように真駒内駅までバスで行き、駅の近くから、館が用意する送迎バスに乗ったのだが、満席だった。ブリューゲル展のときは10人ぐらいしか乗っていなかったのに。
開会式・テープカットは珍しいことに、ロビーではなく、美術館前の屋外で行われた。
五十嵐さんが市に寄贈した「komorebi」が、美術館前の芝生に置かれることになったため、それが見える場所だというのと、人数がいつもよりも多くロビーでは収容しきれなかった―という事情があったと推察される。
五十嵐さんは滝川生まれ。
今回の展覧会は、初期のフリーのグラフィックデザイナー時代から近年の彫刻家としての仕事まで、150点余りで振り返っている。
「日本を代表する」「国際的な」というまくらことばはダテではなく、展示されている企業CIやロゴには、明治(MEIJI)、サミット(小売。北海道にはないが、東京にはたくさんある)、PARCO、サントリー、カルピスなどがあり、正直驚いてしまうし、ニューヨーク近代美術館のカレンダーなども手がけている。
1980年代には米国の永住権を取得し、20年ほどの間ロサンゼルスにアトリエを構えていた。
その後、東京などを経て、2015年に札幌に転居している。
ただ、あちこちの国で展覧会を開いているが、日本の公立美術館ではこれが初めてという。
中ほどのパートは、アルファベットなど文字を素材にしたポスターや立体などが目を引く。書やカリグラフィーとは異なるアプローチだ。
また、プロダクトデザインの分野でも、電話機や食器などをつくり、シンプルな美を追求している。
後半は、彫刻の大作を展示。既成のマッスがどう、ボリュームがどうという視点にこだわらなくても楽しく鑑賞できる作品ばかりだ。
ここで見落としてほしくないのは、ひとつは会場の最後にある略年譜。
五十嵐さんの業績を、写真をふんだんに使って見やすくまとめたすぐれものなのだが、末尾に、製作者の名前が小さく書いてあった。
原研哉
そりゃ見やすいはずだよね。日本を代表するデザイナーのひとりが作っているんだから。
原さんは11月に五十嵐さんとの対談を美術館で行う予定です。
もうひとつは、ロビー入り口右手の第2展示室。
ここは、五十嵐さんが作ってきたパブリックアートの紹介コーナーで、写真のほか、模型もある。
青森県立美術館の近くに巨大なパブリックアートもあるようで、模型からしてでかい。
いままで何点を作ってきたか、ご本人も把握していないらしい。
函館線の特急に乗っていると、滝川のあたりで、高くて細い塔のようなものが車窓から見えるのだが、これも五十嵐さんの作品だということがわかった。
さて、この展覧会が楽しい理由について考えてみた。
こんなことを書くと非常に語弊がありそうだが、五十嵐さんの作品はあまり考える必要がないのだ。
もっと語弊がありそうなことを書くと、デザインというのは、一般の人が日常生活をスムーズに送るためのもので、あれこれ考えさせるようなややこしいものであってはならない。
書道の作品は読めなくても美しければよいが、ポスターのデザインはいくら美しくても、読むために頭をひねらなくてはならないものでは意味がないのだ。
「考えなくてもいい」デザイン、いいかえれば、直感的にわかるデザインを考案するためには、デザイナーは考え抜かなくてはいけないし、直感ではなく理屈で配置や色彩を決めていかなくてはならないのだろう。
ただし、それを最後に決めるのは、センスと直感のような気もする。
五十嵐さんの「komorebi」などは、楽しそうに、遊びと直感の連続で作られているようにも見える。
そういうふうに見えた時点で、五十嵐さんの「勝ち」なのかもしれない。
2018年10月6日(土)~11月25日(日)、11月の月曜休み
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)
一般 千円(800円)、高校・大学生700円(560円)、小・中学生400円(320円)
かっこ内は団体料金。65歳以上は800円(年齢証明するものが必要)
使用済みのチケット半券持参で、当日料金の半額で入館できる(招待券をのぞく、一回限り有効)。
・地下鉄南北線「真駒内駅」で、同駅バスターミナル2番乗り場始発の中央バス(どの路線でも可)に乗り継ぎ、「芸術の森入口」降車。約360メートル、徒歩5分
・芸術の森第1駐車場から約320メートル、徒歩4分。駐車料金は1日500円(回数券あり)