「水彩」の名を掲げた全国的な公募展は筆者の知っている範囲では、日本水彩画会と水彩連盟の二つがあります。
前者は以前から北海道支部展を毎年夏にひらいており、道展の水彩部門とかなり出品者がだぶっていますが、水彩連盟のほうは、事実上昨年から道内での支部展覧会が始まりました。
画風でいえば、水彩画会に抽象の描き手がいる一方で、連盟のほうに写実を描く人もいますから、いちがいには言えないのですが、アクリルを用いて油彩に近い画面づくりをしている人は、連盟に多いような印象を持っています。
全体的には、色数を抑えることで画面に統一感を持たせた絵が多い点に、好感を持ちました。
会場でいちばん印象が強かったのは、古田瑩子さんの画風が一変したこと。
茶色の森で中空に輪をつくって一輪車に乗っていた天使たちの姿はどこにもありません。
その代わりに、白い布で覆われた長いすのうえで赤ん坊が生命の輝きを放っています。
背後にはさわやかな新緑につつまれた水辺が広がり、西洋の城がそびえています。長いすの下では白いフクロウが羽を広げていますが、これはなにかの比喩でしょうか。
勘野悦子さんは、女性3人を登場させ、なにやらドラマめいた場面を描いています。いずれも縞模様のシャツを着ていますが、パンツは左2人と右の女性とで色が異なります。右の女性は仮面を付けて、うつぶせになっており、なにやら悩みを吐露しているようにも見えます。3人の手前には、ハスが植えられた一角もあります。
ただ、勘野さんは力量がある方なのであえて書きますが、床の模様の処理がどうも気になります。透視図法で格子模様を正確に描くのはけっこう難儀でしょうから、もっとうまいやりかたがあるのではないかという気もします。おせっかいかもしれませんが。
道展で受賞したばかりの湯淺美恵さんは、道展出品作と似た傾向の、女性と柱時計をあしらった縦構図の作品。丹念なタッチでじっくり組み立てています。
三村克彦さんは長いこと、エンジンをモティーフにしています。近年は、単にリアルな描写というだけにとどまらず、機械の巨大さや複雑な配管などが幻想性すら帯びつつあるように感じられます。トンボがアクセントになっています。
甲斐野弘幸さんの作品のマチエールは、水彩離れした強靱さを感じさせます。
黒を背景に、茶色、水色、白の矩形がぶつかり合い、重厚な抽象画になっています。
渡辺範子さんは一貫して、異様なまでに絡まり合う木の枝を題材にしており、ことしの全道展でも入賞を果たしました。
全体のポイントは、中央附近からひょろひょろとのびる赤い枝でしょうか。
幹は、皮がはがれてところどころ垂れ下がり、一部はコケのようなものに覆われ、不気味に曲がりくねっています。「きれいではない」ところに、真実味が感じられるのです。
青坂龍子さんは、水郷の風景を、写実的な画風で描きます。
今作でも、よどんだ水の趣きがよく表現されていて、壁の白さとあざやかな対照をなしています。
出品作は次の通り。
古田瑩子「夢の中の光景」100F
勘野悦子「内なる自分に…」120F
三村克彦「有機体へ」100F
遠藤直子「過酷な現実」100F
青坂龍子「水郷-古都」60F
畔原信子「卓上の譜」80F
大山栄子「ガラスの中の雑踏」50F
甲斐野弘幸「跫(あしおと)2007」80F
高田みち子「黄昏」80F
竹津昇「納屋」80F
中田美紀子「望楼」80F
松倉文子「惜陰」60号
山平博子「きえる橋(タウシュベツ橋梁)」80F
湯淺美恵「何時か何処かへ(幻想)」60F
渡辺範子「生きる」80F
07年11月19日(月)-24日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■第1回
□水彩連盟 http://www.suisai-renmei.jp/
□湯淺美恵水彩ギャラリー 花あかり http://hana-akari.hp.infoseek.co.jp/
□TOLEDOの部屋(竹津さんのblog) http://plaza.rakuten.co.jp/toledo/
前者は以前から北海道支部展を毎年夏にひらいており、道展の水彩部門とかなり出品者がだぶっていますが、水彩連盟のほうは、事実上昨年から道内での支部展覧会が始まりました。
画風でいえば、水彩画会に抽象の描き手がいる一方で、連盟のほうに写実を描く人もいますから、いちがいには言えないのですが、アクリルを用いて油彩に近い画面づくりをしている人は、連盟に多いような印象を持っています。
全体的には、色数を抑えることで画面に統一感を持たせた絵が多い点に、好感を持ちました。
会場でいちばん印象が強かったのは、古田瑩子さんの画風が一変したこと。
茶色の森で中空に輪をつくって一輪車に乗っていた天使たちの姿はどこにもありません。
その代わりに、白い布で覆われた長いすのうえで赤ん坊が生命の輝きを放っています。
背後にはさわやかな新緑につつまれた水辺が広がり、西洋の城がそびえています。長いすの下では白いフクロウが羽を広げていますが、これはなにかの比喩でしょうか。
勘野悦子さんは、女性3人を登場させ、なにやらドラマめいた場面を描いています。いずれも縞模様のシャツを着ていますが、パンツは左2人と右の女性とで色が異なります。右の女性は仮面を付けて、うつぶせになっており、なにやら悩みを吐露しているようにも見えます。3人の手前には、ハスが植えられた一角もあります。
ただ、勘野さんは力量がある方なのであえて書きますが、床の模様の処理がどうも気になります。透視図法で格子模様を正確に描くのはけっこう難儀でしょうから、もっとうまいやりかたがあるのではないかという気もします。おせっかいかもしれませんが。
道展で受賞したばかりの湯淺美恵さんは、道展出品作と似た傾向の、女性と柱時計をあしらった縦構図の作品。丹念なタッチでじっくり組み立てています。
三村克彦さんは長いこと、エンジンをモティーフにしています。近年は、単にリアルな描写というだけにとどまらず、機械の巨大さや複雑な配管などが幻想性すら帯びつつあるように感じられます。トンボがアクセントになっています。
甲斐野弘幸さんの作品のマチエールは、水彩離れした強靱さを感じさせます。
黒を背景に、茶色、水色、白の矩形がぶつかり合い、重厚な抽象画になっています。
渡辺範子さんは一貫して、異様なまでに絡まり合う木の枝を題材にしており、ことしの全道展でも入賞を果たしました。
全体のポイントは、中央附近からひょろひょろとのびる赤い枝でしょうか。
幹は、皮がはがれてところどころ垂れ下がり、一部はコケのようなものに覆われ、不気味に曲がりくねっています。「きれいではない」ところに、真実味が感じられるのです。
青坂龍子さんは、水郷の風景を、写実的な画風で描きます。
今作でも、よどんだ水の趣きがよく表現されていて、壁の白さとあざやかな対照をなしています。
出品作は次の通り。
古田瑩子「夢の中の光景」100F
勘野悦子「内なる自分に…」120F
三村克彦「有機体へ」100F
遠藤直子「過酷な現実」100F
青坂龍子「水郷-古都」60F
畔原信子「卓上の譜」80F
大山栄子「ガラスの中の雑踏」50F
甲斐野弘幸「跫(あしおと)2007」80F
高田みち子「黄昏」80F
竹津昇「納屋」80F
中田美紀子「望楼」80F
松倉文子「惜陰」60号
山平博子「きえる橋(タウシュベツ橋梁)」80F
湯淺美恵「何時か何処かへ(幻想)」60F
渡辺範子「生きる」80F
07年11月19日(月)-24日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■第1回
□水彩連盟 http://www.suisai-renmei.jp/
□湯淺美恵水彩ギャラリー 花あかり http://hana-akari.hp.infoseek.co.jp/
□TOLEDOの部屋(竹津さんのblog) http://plaza.rakuten.co.jp/toledo/