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■北岡文雄展 (12月20日まで)

2009年12月19日 00時43分25秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 戦後日本を代表する木版画家で、札幌滞在中に札幌版画協会(北海道版画協会の前身)の発足に立ち会うなど、道内版画界にも大きな影響を与えてきた巨匠の展覧会。
 筆者は、道立近代美術館の所蔵品を多く見ているので、道内・国内の風景を多く描いているという印象があったのだけど、今回は海外の風景も多く、まるで
「北岡版画で世界・日本旅行!」
という気分だった。
 誰でも気軽に楽しめるので、まだの方は足をはこんではいかがでしょう。

 一方で「風土連作」といった実験的な作品はあまり多くなく、「旅の日の自画像」のように人物が大きく描かれている作品はほとんどない。「旅の日の…」は、以前から同美術館の所蔵品で、北岡文雄の代表作ではないかと勝手に思っていたが、すくなくても今回の北武絵画記念館の展示を見る限りでは、彼の作品系列の主流とはとてもいえないように感じられてくる。実際のところは、どうなんだろうか。

 海外の風景は、米国、欧洲、インドネシア、トルコ、ソヴィエトなどにおよび、こんなに多くの国を旅していたのか! とびっくり。
 といって、単純に摩天楼やオペラハウスといった観光地を正面から描写した絵はがき的な作品はほとんどないのはもちろんのこと。
 「アムステルダムの朝」は、屋根の上にとまるハトの群れを手前に大きく、緑一色で描写している。中景の家のファサードには「1724」という年号が刻まれ、街の歴史の古さを表わしている。
 「朝もやのブルーモスク(イスタンブール)」は、題に反して、モスクや、手前の街路、木々などを、ほぼ灰色の濃淡で統一する一方、背景の空と朝焼けを有彩色にして、対比を鮮やかにみせている。
 あと、「ジョージタウン(Washington D.C.)」は、タウンハウスの前でピンクのボールを投げ上げて遊ぶ水色のスカート姿の少女が題材なのだが、彼女のボールはどこへ飛んでいくんだろう?

 国内の風景は、いったい色をいくつ使ってるんだろう! というカラフルな作品が印象的だった。
 「晩秋の木曽路」は、緑だけで6、7色ありそう。ほかにも黄色3、紫2、オレンジ、茶、ピンク、赤…。これを破綻せずに組み合わせるだけで、すごい職人技だと舌を巻く。
 「湾岸芝浦」は、東京の高層ビルや京浜工業地帯を題材にした異色作だった。


 出品作は次の通り。ふたけた数字は制作年
雪の降る街 66
ジョージタウン(Washington D.C.) 66
アムステルダムの朝 72
ネヴァ河残照(Leningrad) 73
サヌールビーチ(バリ島)87
聖シュテファン寺院(ウィーン) 90
朝やけのブルーモスク(イスタンブール) 66
天主堂の見える港 87
初夏蘇州 81
水辺の家 83
風車のある農家 65
巴里の窓 57
スワンハウス(Atlanta) 88
Savannah 河岸通り 92
ニグロの女 66

漁村の女 67
北辺の風景 77
天草の港 81
瀬戸の渦潮 80
京の茶店 80
石垣の村(外泊) 80
阿蘇高原 79
冬の印旛沼 81
雪の山 75
サイロのある農家 77
厚田海岸 75
大内村秋色 75
おうむ貝 75
霧の琵琶瀬(Foggy Biwase) 74
湿原の川 74
スペイン壺とカトレア 73
南禅寺山門 72
冬の支笏湖 71
しだれ桜 70
春の金閣寺 70
冬の農村 70
春の銀閣寺 69
漁村の午后 66

女の顔 66
カポレットの退部 66(ヤナイ註 これは「退却」ではないだろうか)
下宿の自画像 ?
夏草 84

Colonia River Gorge 89
水ぬるむ真珠棚 92
神秘の屋久島 95
皇居の春(半蔵門) 93
袋田の滝 92
川岸の家 92
英虞湾の夕陽 92
臼杵の石佛 93
雪山の岳樺 91
奥飛騨風景 90
晩秋の木曽路 90
サロベツ原野と利尻岳 90
ライラックの季節 86
羅臼岳錦秋 89
湾岸芝浦 89
國境の海(知床) 89(ヤナイ註 知床の海は断じて国境ではない!)
松毬 88
Kah-Nee-ta(OREGON) 88
釧路湿原 88
沼の秋 87
波崎港 87
渓流の森 84
のりそだ 85
草萌える湿原 86
冬の摩周湖 83
霧の瓶ケ森 82
早春の花木崎 82
詩仙堂つつじの庭 82
紀州路の春 81 


一般300円、小中学生200円、幼児無料

2009年9月3日(木)-12月20日(日)10:00-17:00(入場-16:30)、月-水曜休み
HOKUBU記念絵画館(豊平区旭町1)


北海道版画協会創立50周年記念展 版・継承と刷新 (2009年9月)
北岡文雄さん死去(2007年)



・地下鉄東豊線「学園前」1番出口から7分
・中央バス「豊平3の4」から8分
・じょうてつバス「旭町1丁目」から3分(この路線は、中の島、平岸などの駅と乗り継ぎになるが、都心には行かない)


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2 コメント

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Unknown (SH)
2009-12-19 17:09:14
ヤナイさん、こんにちは。

北岡文雄の作品は、本当にカラフルですよね。紫やオレンジを使った日本家屋の版画がありましたが、別に変に見えないのが驚きです。

「湾岸芝浦」も珍しい図でしたね。
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SHさん、こんばんは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2009-12-19 23:36:13
 一方で「のりそだ」のように、白と黒だけによる抽象画みたいな作品もあり、じつにいろんなことに挑戦している人だなあという気がしました。

 300円でこれだけじっくり見られるのは、かなりお徳ではないかと。
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