(追記。もちろんこれは個人的な文章で、勤め先とは関係ないです。勤務先で特別に得た情報はここには入っていません。そもそも持ち合わせていないし…)
8月28日の記者会見。
週の初めから
「もう辞任するだろう」
と、心の半分ぐらいで予測していました。
体調も悪そうだし、写真やテレビ画面でチラッとみても、モチベーションがあるようには見えなかったからです。
にもかかわらず
「この政権は永遠に続くのではないか」
みたいな、変な意識が、心のもう半分に残っていて、この文章を書くのが遅れました。
目次
1)「やってる感」の終わり
2) すべては改憲のため
3) そこまでやるか
4) 国会答弁がひどい
5) アベノミクスとはなんだった
6) にもかかわらず
1)「やってる感」の終わり
安倍政権は、選挙のたびに、さまざまな課題を持ち出してきて、あるいはぶち上げて、自らの政権でなければこれはできないような訴えをしていたように覚えています。
これを
「やってる感」
と命名した人は、エライと思います。
過去の選挙で、少子化問題を「国難」と称して、それを解散の大義にしたこともありました。
北朝鮮からミサイルが飛んでくることを最大の問題に掲げた選挙もありました。
少子化問題は克服すべき大問題です。
しかし、その選挙で勝って、安倍さんは少子化問題に全力を注いだでしょうか。
とくに何かをしたという記憶もありません。
その間にも日本の人口は減り続けています。
「ひと・まち・しごと」という看板政策もありましたね。
もうだれもおぼえていないと思います。
「一億総活躍」「地方創生」など、つぎつぎにキャッチフレーズを打ち出しては、そのままにしていくことが多い7年半でした。
もちろん、すべてが「ほったらかし」とまでいうつもりはありません。
「働き方改革」などは、けっこう普及したことばだったと思うし、悪くない施策だったといえるでしょう。もっとも、年休5日取得を義務化しておいて、その条件整備をなにも打ち出していないあたり、この政権の特徴である
「朝三暮四」
という言葉が思い浮かびます。
2) すべては改憲のため
安倍さんは憲法改正がしたくてしかたなかった。
師匠にあたる小泉純一郎さんが郵政民営化を達成できたので、なにか信念をもてばやり遂げることができると学習したのでしょうか。
(小泉さんの名前が違っていたので直しました。申しわけありません)
1960年代からゼロ年代までの自民党総裁が首相になると、就任と同時に
「私の任期では憲法改正は考えていない」
と明言しました。
だから、安倍さんが
「憲法改正は自民党結党以来の悲願」
というのは、ちょっと違っています。
「憲法改正は自民党結党時の目標」
だったのは事実ですが、池田内閣以来、そんなことには力を注いでいませんでした。中曽根内閣は当初は色気を出していましたが、すぐに引っ込めています。
憲法改正には長い時間と膨大な労力がかかります。
そのあいだ、経済が失速しては政権が危機になります。
とにかく、政権を長続きさせることが至上命題となります。
そのため「アベノミクス」と称して日本銀行券をじゃんじゃん刷って株式市場に投入する、前例のない政策で株高を演出しました。
3) そこまでやるか
安倍さんの、筆者から見ていちばん許せないな~と思うことは、政権維持のためなら、
「ふつう文明国なら、そこまでやらないだろ」
というようなことまでやるようになってしまったことです。
議会政治は最後は多数決という部分があります。だから、予算案について話し合い、けっきょく
「防衛費が増える」
「福祉を削る」
という予算が可決してしまったら、個人的にはおもしろくはありませんが、それを破壊するために国会に突入するわけには行きません。
正しい手続きで決まったことは決まったことです。
しかし、安倍さんは、NHK人事に介入して批判的な報道を骨抜きにしたり、経済指標が悪化すると統計の取り方を変えてみたり、公金を使って自分の後援会員に飲み食いさせて(一般的にはこの行為を「買収」といいます)それを追及されると公文書を破棄したり、過去の自民党政権ならさすがにそこまではやらないだろうということまでやってきました。
それも、安倍さんが悪魔の知恵をもって手を染めた、というよりはむしろ、まわりが気を遣ってやりすぎたという感じがします。
4) 国会答弁がひどい
でも、もっとひとかったのは、国会の答弁です。
筆者は職場でNHKテレビが常時流れていたりする場合が多いので、国会中継もなんとなく見ています。
竹下さんも小渕さんも鳩山さんも、審議ではなるべく簡潔に答弁し、自分のことばで話していました。
あの麻生さんも、質問の趣旨をつかみそこねることはよくありましたが、そこを突っ込まれると、笑いながら再答弁していました。
安倍さんは違います。
繰り返しおなじことをしゃべったり、まったく関係のない話題を差し挟んだりして、質疑時間を削っていきます(衆議院では、質問と答えの合計時間の制限がある)。
こんな不誠実な答弁をする総理大臣ははじめて見ました。
答えのピントがあっていないことも多々あり、それを再質問で指摘されると
「先ほどから申し上げておりますとおり」
と、全く同じ文面を読み上げることも珍しくありません。
しかも
「ヤジはやめていただきませんか」
などとくりかえして質疑の時間を削るわりには、じぶんは閣僚席からヤジを飛ばすのです。
閣僚席からヤジを飛ばす人もはじめて見ました。
そんなにヤジを飛ばしたいなら、大臣をやめて、ただの議員になればいいのにと思いました。
でも、夜のニュースや翌朝の新聞では、質疑がかみ合っているように整理されています。
ちょっとマスコミの擁護をするなら、もともとの質疑をそのまま載せるとかえって分かりづらいし、尺も紙面もないので、要点を分かりやすく提示するのがテレビや新聞の仕事だといえます。
とはいえ、多くの国民には、国会の質疑がこれほどまでにかみ合っていないということが、つたわらないでしょう。
テレビでだけ見ていると、安倍さんはちゃんと答弁しているように見えますよね。
まさか総理大臣ともあろう人が、あんな受け答えを平気でしているとは思えないですからね。
5) アベノミクスとはなんだった
安倍政権の功績として、株高と、失業率の低下がいわれることがあります。
株の相場が人為的なモノであり、東京のマーケットの国際的地位が低下していることは、先にちょっと触れました。
失業率の低下は喜ばしいことですが、これは、ちょうど団塊の世代が、再任用や再就職の年代を過ぎて本格的にリタイヤしていくタイミングにあたったためで、総理大臣が誰であっても同じ結果だったと推測されています。
筆者が評価しているのは、民主党時代の極端な円高を是正したことです。
日本経団連を領導しているような、輸出型製造業はこれで一息つきました。
「アベノミクス」は、一息ついているあいだに、二の矢、三の矢を放って日本経済を本格的に再生させるはずでした。
「三の矢」は「経済の構造改革」ともいわれていました。
そこで安倍さんは何をしたでしょうか。
ほとんど、何もしていません。
規制緩和も手つかずです。
本来なら、IT投資を行うなどして、未来を見据えた政策を採るべきだったでしょう。
気がつけば日本は、教育現場のIT普及率がOECD加盟国で最低というところにまでなっていました。
1990年代の日本は、世界に冠たる技術立国だったはずです。
安倍政権だけのせいではありませんが、いつの間にこんなことになっていたのでしょう。
6) にもかかわらず
にもかかわらず、安倍さんをほめたたえる人は、ネットでは後を絶ちません。
彼らの少なからぬ部分は、野党についてデマを飛ばし、韓国人を差別し、暴言を吐くような人です。
口の悪い人は左にもいますし、この7年半で、ツイッターはずいぶんと殺伐とした世界になってしまいました。
ゼロ年代までの自民党は、復古派もいましたが、人権を重んじる進歩派もいる幅の広い集団でした。
野党のいうことも聞きつつ、ふところの広い政権運営をしていたのです。
いつの間にやら、少なくとも中央は、復古派ばかりが幅をきかせる政党になったような感覚は否めません。
それでも、大きな問題を先送りできるうちは、安倍さんが、官僚が書いた文章を読み上げるだけで、なんとか格好がつきました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、それだけでは難局を乗り切れないことが、さすがの国民もだんだんと分かってきました。
布マスク配布や貴族動画(笑)あたりは、みなさんの記憶にも新しいでしょうから、ここでは省きます。
かんがえてみれば、「アンダーコントロール」のはずの福島第1原発の後始末も、日ソ平和宣言も、北朝鮮拉致問題も、7年半かけてなにも解決していないのです。
つぎの総理大臣は
「日本語の会話がかみあう人」
「平和と自由と民主主義が大事だと、きちんと言ってくれる人」
であることを望みます。
8月28日の記者会見。
週の初めから
「もう辞任するだろう」
と、心の半分ぐらいで予測していました。
体調も悪そうだし、写真やテレビ画面でチラッとみても、モチベーションがあるようには見えなかったからです。
にもかかわらず
「この政権は永遠に続くのではないか」
みたいな、変な意識が、心のもう半分に残っていて、この文章を書くのが遅れました。
目次
1)「やってる感」の終わり
2) すべては改憲のため
3) そこまでやるか
4) 国会答弁がひどい
5) アベノミクスとはなんだった
6) にもかかわらず
1)「やってる感」の終わり
安倍政権は、選挙のたびに、さまざまな課題を持ち出してきて、あるいはぶち上げて、自らの政権でなければこれはできないような訴えをしていたように覚えています。
これを
「やってる感」
と命名した人は、エライと思います。
過去の選挙で、少子化問題を「国難」と称して、それを解散の大義にしたこともありました。
北朝鮮からミサイルが飛んでくることを最大の問題に掲げた選挙もありました。
少子化問題は克服すべき大問題です。
しかし、その選挙で勝って、安倍さんは少子化問題に全力を注いだでしょうか。
とくに何かをしたという記憶もありません。
その間にも日本の人口は減り続けています。
「ひと・まち・しごと」という看板政策もありましたね。
もうだれもおぼえていないと思います。
「一億総活躍」「地方創生」など、つぎつぎにキャッチフレーズを打ち出しては、そのままにしていくことが多い7年半でした。
もちろん、すべてが「ほったらかし」とまでいうつもりはありません。
「働き方改革」などは、けっこう普及したことばだったと思うし、悪くない施策だったといえるでしょう。もっとも、年休5日取得を義務化しておいて、その条件整備をなにも打ち出していないあたり、この政権の特徴である
「朝三暮四」
という言葉が思い浮かびます。
2) すべては改憲のため
安倍さんは憲法改正がしたくてしかたなかった。
師匠にあたる小泉純一郎さんが郵政民営化を達成できたので、なにか信念をもてばやり遂げることができると学習したのでしょうか。
(小泉さんの名前が違っていたので直しました。申しわけありません)
1960年代からゼロ年代までの自民党総裁が首相になると、就任と同時に
「私の任期では憲法改正は考えていない」
と明言しました。
だから、安倍さんが
「憲法改正は自民党結党以来の悲願」
というのは、ちょっと違っています。
「憲法改正は自民党結党時の目標」
だったのは事実ですが、池田内閣以来、そんなことには力を注いでいませんでした。中曽根内閣は当初は色気を出していましたが、すぐに引っ込めています。
憲法改正には長い時間と膨大な労力がかかります。
そのあいだ、経済が失速しては政権が危機になります。
とにかく、政権を長続きさせることが至上命題となります。
そのため「アベノミクス」と称して日本銀行券をじゃんじゃん刷って株式市場に投入する、前例のない政策で株高を演出しました。
3) そこまでやるか
安倍さんの、筆者から見ていちばん許せないな~と思うことは、政権維持のためなら、
「ふつう文明国なら、そこまでやらないだろ」
というようなことまでやるようになってしまったことです。
議会政治は最後は多数決という部分があります。だから、予算案について話し合い、けっきょく
「防衛費が増える」
「福祉を削る」
という予算が可決してしまったら、個人的にはおもしろくはありませんが、それを破壊するために国会に突入するわけには行きません。
正しい手続きで決まったことは決まったことです。
しかし、安倍さんは、NHK人事に介入して批判的な報道を骨抜きにしたり、経済指標が悪化すると統計の取り方を変えてみたり、公金を使って自分の後援会員に飲み食いさせて(一般的にはこの行為を「買収」といいます)それを追及されると公文書を破棄したり、過去の自民党政権ならさすがにそこまではやらないだろうということまでやってきました。
それも、安倍さんが悪魔の知恵をもって手を染めた、というよりはむしろ、まわりが気を遣ってやりすぎたという感じがします。
4) 国会答弁がひどい
でも、もっとひとかったのは、国会の答弁です。
筆者は職場でNHKテレビが常時流れていたりする場合が多いので、国会中継もなんとなく見ています。
竹下さんも小渕さんも鳩山さんも、審議ではなるべく簡潔に答弁し、自分のことばで話していました。
あの麻生さんも、質問の趣旨をつかみそこねることはよくありましたが、そこを突っ込まれると、笑いながら再答弁していました。
安倍さんは違います。
繰り返しおなじことをしゃべったり、まったく関係のない話題を差し挟んだりして、質疑時間を削っていきます(衆議院では、質問と答えの合計時間の制限がある)。
こんな不誠実な答弁をする総理大臣ははじめて見ました。
答えのピントがあっていないことも多々あり、それを再質問で指摘されると
「先ほどから申し上げておりますとおり」
と、全く同じ文面を読み上げることも珍しくありません。
しかも
「ヤジはやめていただきませんか」
などとくりかえして質疑の時間を削るわりには、じぶんは閣僚席からヤジを飛ばすのです。
閣僚席からヤジを飛ばす人もはじめて見ました。
そんなにヤジを飛ばしたいなら、大臣をやめて、ただの議員になればいいのにと思いました。
でも、夜のニュースや翌朝の新聞では、質疑がかみ合っているように整理されています。
ちょっとマスコミの擁護をするなら、もともとの質疑をそのまま載せるとかえって分かりづらいし、尺も紙面もないので、要点を分かりやすく提示するのがテレビや新聞の仕事だといえます。
とはいえ、多くの国民には、国会の質疑がこれほどまでにかみ合っていないということが、つたわらないでしょう。
テレビでだけ見ていると、安倍さんはちゃんと答弁しているように見えますよね。
まさか総理大臣ともあろう人が、あんな受け答えを平気でしているとは思えないですからね。
5) アベノミクスとはなんだった
安倍政権の功績として、株高と、失業率の低下がいわれることがあります。
株の相場が人為的なモノであり、東京のマーケットの国際的地位が低下していることは、先にちょっと触れました。
失業率の低下は喜ばしいことですが、これは、ちょうど団塊の世代が、再任用や再就職の年代を過ぎて本格的にリタイヤしていくタイミングにあたったためで、総理大臣が誰であっても同じ結果だったと推測されています。
筆者が評価しているのは、民主党時代の極端な円高を是正したことです。
日本経団連を領導しているような、輸出型製造業はこれで一息つきました。
「アベノミクス」は、一息ついているあいだに、二の矢、三の矢を放って日本経済を本格的に再生させるはずでした。
「三の矢」は「経済の構造改革」ともいわれていました。
そこで安倍さんは何をしたでしょうか。
ほとんど、何もしていません。
規制緩和も手つかずです。
本来なら、IT投資を行うなどして、未来を見据えた政策を採るべきだったでしょう。
気がつけば日本は、教育現場のIT普及率がOECD加盟国で最低というところにまでなっていました。
1990年代の日本は、世界に冠たる技術立国だったはずです。
安倍政権だけのせいではありませんが、いつの間にこんなことになっていたのでしょう。
6) にもかかわらず
にもかかわらず、安倍さんをほめたたえる人は、ネットでは後を絶ちません。
彼らの少なからぬ部分は、野党についてデマを飛ばし、韓国人を差別し、暴言を吐くような人です。
口の悪い人は左にもいますし、この7年半で、ツイッターはずいぶんと殺伐とした世界になってしまいました。
ゼロ年代までの自民党は、復古派もいましたが、人権を重んじる進歩派もいる幅の広い集団でした。
野党のいうことも聞きつつ、ふところの広い政権運営をしていたのです。
いつの間にやら、少なくとも中央は、復古派ばかりが幅をきかせる政党になったような感覚は否めません。
それでも、大きな問題を先送りできるうちは、安倍さんが、官僚が書いた文章を読み上げるだけで、なんとか格好がつきました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、それだけでは難局を乗り切れないことが、さすがの国民もだんだんと分かってきました。
布マスク配布や貴族動画(笑)あたりは、みなさんの記憶にも新しいでしょうから、ここでは省きます。
かんがえてみれば、「アンダーコントロール」のはずの福島第1原発の後始末も、日ソ平和宣言も、北朝鮮拉致問題も、7年半かけてなにも解決していないのです。
つぎの総理大臣は
「日本語の会話がかみあう人」
「平和と自由と民主主義が大事だと、きちんと言ってくれる人」
であることを望みます。
総括して頂き、ありがとうございます。
私もまったく同じような感覚を持っております。
北海道新聞さんの2面以降は(1面は事実関係でしょうから)、読みごたえがありました。
「主要政策道半ば」という気遣った見出しがありましたが、これは「事実上成果ゼロ」という事だと解釈しています。
ご本人の退場は喜ばしい事ですが、彼に染まったのか、色々な自治体の長、役人辺りも酷い話のそらし方をするようになっています。
これは何年もかけてまともな言論が成立するようにしていかなければならないのだなと思います。
商売柄、地元の町議会をよく傍聴しますが、町長も町議もちゃんと自分のことばで議論し質問し答弁しています。当たり前のことなんですが、国会とくらべると、はるかにまともです。
道新も悪くないと思いますが、毎日新聞の2面の見出しがズバリ簡潔でした。
「アベノミクス道半ば」
「景気拡大 実感乏しく」
「外交 課題山積のまま」
そのとおりだと思います。