まず、この展覧会の歴史的ないきさつから。
1989年からほぼ隔年で、北海道立の4美術館が共同で取り組んだ「北海道・今日の美術」という展覧会があった。
第1回は「世紀末の風景・微視と幻影」がテーマで、この展覧会に出品した画家たちが中心となって1991年、「北の現代具象展」が始まった。
会場:札幌時計台ギャラリー(締めは道立近代美術館)、顧問:吉田豪介さん、という枠組みはこのときから続いている。
佐藤武、西田陽二、矢元政行の各氏は、当時からの出品者である(羽山雅愉さんも第2回から、伊藤光悦さんは第5回から)。
また、このテーマであれば、鈴木秀明さんと阿部国利さんは外せない顔ぶれであるが、鈴木さんは「北海道現代具象展」には参加しておらず、阿部さんは2002年に死去している。
この展覧会は当初から「10年で一区切り」を掲げていたと記憶しており、2000年で終了した。
ただし、それを引き継ぐかたちで2002年から「具象の新世紀」展がスタートした。これは、「5年限り」という触れ込みだった。
そして2007年からは「北海道現代具象展」という名前になり、これも「5年限り」ということなので、今回が最終年ということになる。
つまり、この20年余り、名前は三つあったが、基本的な大枠は変わっていないわけだ。
とは言いながら、参加作家は少しずつメンバーチェンジしているし、とくに「北海道現代具象展」になってからは、日本の洋画壇の重鎮である笠井誠一、野田弘志両氏を招待作家として迎えるとともに、毎回本州の一線の作家を迎えている。
1950~70年代の画壇は抽象画に席捲されていたとは、よくいわれることである。
フランス、米国の影響もあるだろう。透視図法にのっとり外界を写生する絵画の役割は、時代の最先端を行く芸術としては、終わったという認識が広まっていたのだろうと思う(リアルタイムで知らないので、あと知恵で書くしかない)。
しかし、抽象表現主義からミニマルアートを経て、単線型進歩主義的な絵画史の見方が行き詰まりを見せるようになってきた。
今回の図録に佐藤友哉氏(道立近代美術館学芸副館長)が重厚な巻頭言を寄せているが、この内容をつづめていうと、「AよりBが新しい!」というはっきりした図式がなりたたくなり、「なんでもあり」という時代になってきたといってよい。
佐藤友哉氏は、北の現代具象展以降の展覧会は、その「なんでもあり」の時代と共振しているに違いない―という趣旨のことを述べておられるが、「最先端が見えない時代」なのは、美術だけではない。おそらく、マルクス主義が失墜して、単線型の歴史観が失効したこととシンクロしているのだ。
そして、それは
「がんばって努力すれば、あしたはきょうよりも良くなる」
ということが素朴に信じられていたこととも、シンクロしていたと思う。
話がそれた。
ただ、この佐藤友哉氏の、尋常ならざる力の入れっぷりは、けっこう好きだったりする。
彼の筆致には
「まあ、地方の、団体公募展の画家が集まってる団体であって、世界の美術の潮流とはまた話が別でしょ? この程度でいいんじゃない?」
的な、力を抜いているところが、全くない。
世界だろうが、北海道という日本の端っこであろうが、おなじパースペクティブで見るぞ! という気合がみなぎっているのだ。
さて、長くなってきたので、個々の作品については、別項に譲ろう。
2012年2月11日(土)~3月11日(日)9am~5pm、月曜休み
網走市立美術館(南6西1)
・高校生以上200円(20人以上の団体160円)、小中学生100円(同80円)
・JR網走駅から1.2キロ、徒歩16分
・網走バスターミナルから330メートル、徒歩5分
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第1回は「世紀末の風景・微視と幻影」がテーマで、この展覧会に出品した画家たちが中心となって1991年、「北の現代具象展」が始まった。
会場:札幌時計台ギャラリー(締めは道立近代美術館)、顧問:吉田豪介さん、という枠組みはこのときから続いている。
佐藤武、西田陽二、矢元政行の各氏は、当時からの出品者である(羽山雅愉さんも第2回から、伊藤光悦さんは第5回から)。
また、このテーマであれば、鈴木秀明さんと阿部国利さんは外せない顔ぶれであるが、鈴木さんは「北海道現代具象展」には参加しておらず、阿部さんは2002年に死去している。
この展覧会は当初から「10年で一区切り」を掲げていたと記憶しており、2000年で終了した。
ただし、それを引き継ぐかたちで2002年から「具象の新世紀」展がスタートした。これは、「5年限り」という触れ込みだった。
そして2007年からは「北海道現代具象展」という名前になり、これも「5年限り」ということなので、今回が最終年ということになる。
つまり、この20年余り、名前は三つあったが、基本的な大枠は変わっていないわけだ。
とは言いながら、参加作家は少しずつメンバーチェンジしているし、とくに「北海道現代具象展」になってからは、日本の洋画壇の重鎮である笠井誠一、野田弘志両氏を招待作家として迎えるとともに、毎回本州の一線の作家を迎えている。
1950~70年代の画壇は抽象画に席捲されていたとは、よくいわれることである。
フランス、米国の影響もあるだろう。透視図法にのっとり外界を写生する絵画の役割は、時代の最先端を行く芸術としては、終わったという認識が広まっていたのだろうと思う(リアルタイムで知らないので、あと知恵で書くしかない)。
しかし、抽象表現主義からミニマルアートを経て、単線型進歩主義的な絵画史の見方が行き詰まりを見せるようになってきた。
今回の図録に佐藤友哉氏(道立近代美術館学芸副館長)が重厚な巻頭言を寄せているが、この内容をつづめていうと、「AよりBが新しい!」というはっきりした図式がなりたたくなり、「なんでもあり」という時代になってきたといってよい。
佐藤友哉氏は、北の現代具象展以降の展覧会は、その「なんでもあり」の時代と共振しているに違いない―という趣旨のことを述べておられるが、「最先端が見えない時代」なのは、美術だけではない。おそらく、マルクス主義が失墜して、単線型の歴史観が失効したこととシンクロしているのだ。
そして、それは
「がんばって努力すれば、あしたはきょうよりも良くなる」
ということが素朴に信じられていたこととも、シンクロしていたと思う。
話がそれた。
ただ、この佐藤友哉氏の、尋常ならざる力の入れっぷりは、けっこう好きだったりする。
彼の筆致には
「まあ、地方の、団体公募展の画家が集まってる団体であって、世界の美術の潮流とはまた話が別でしょ? この程度でいいんじゃない?」
的な、力を抜いているところが、全くない。
世界だろうが、北海道という日本の端っこであろうが、おなじパースペクティブで見るぞ! という気合がみなぎっているのだ。
さて、長くなってきたので、個々の作品については、別項に譲ろう。
2012年2月11日(土)~3月11日(日)9am~5pm、月曜休み
網走市立美術館(南6西1)
・高校生以上200円(20人以上の団体160円)、小中学生100円(同80円)
・JR網走駅から1.2キロ、徒歩16分
・網走バスターミナルから330メートル、徒歩5分
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