札幌在住の若手、村岸さんの個展は、会場の中空に、ワイヤで白樺の幹の一部を浮かばせたインスタレーションです。シンプルな作品ながら、自然と人間の交感について考えさせられました。
白樺は、琴似川琴似川支流の円山川の源流域で、風倒木から切り取ったもの。それを、自転車で、北大そばのこの会場まで運んだそうです。直径は50センチほどもあるでしょうか。
それに、スピーカーが6個取り付けられています。いわば、木をコーンの代わりにしています。耳をあてれば、おなじ川で録音したというせせらぎの音が聞こえてきます。
ただ、白樺だけではさびしいと思ったのか、3月のあけぼの開明舎での個展でつかったという、竹や真鍮の筒を、糸をはり渡して空中に配したインスタレーションを、その周囲に設置しています。触ると、竹の筒の中の針金や、真鍮の中の木片が、良い音を出します。
今回の個展の「木は水を運んでいる」という題からは、木が地中から水を吸い上げる生命の神秘を思い出します。ときには数十メートルの高さまで、ポンプもなしに水を運び上げる仕組みは、現代の科学でも完全には解明しえていないという話を、どこかで読んだことがあります。
もちろん、この会場にある白樺は、もはや水を現実には吸い上げていないのですが、スピーカーからの音が、その自然の営みを暗示しているといえます。
「小さいころは東橋の近くに住んでいて、川であそぶのが好きだった」
と話す村岸さん。
川への愛着は、並々ならぬものがあるようです。
一方、ギャラリーのオーナー中森敏夫さんもかつて、暗渠化された川をテーマに現代アートの一大催し(「界川遊行」)を行ったほど、川に対しては一家言あります。
忘れられがちですが、札幌は(札幌も、というべきかもしれません)、川が作ってきたマチです。川が扇状地をつくり、アイヌ民族がサケを取り、水運にもつかわれました。いまは、上流は砂防ダムに覆われ、中流域が暗渠化され(環状通の下)、下流部は流れを変えられてしまった琴似川も、札幌の大地をつくってきた川のひとつなのです。
この個展会場も、琴似川の支流サクシュコトニ川の流域に近いことを思えば、村岸さんが木を円山川上流から運んできたという行為は、流木が上流から下流へと流れ着いたような、自然なことだといえるのかもしれません。
眼を閉じ、耳をすませて、いまは見えない「流れ」に、思いをいたすこと。そのたいせつさを、村岸さんの作品は、しずかに訴えているかのようです。
7月18日(火)-28日(金)11:00-19:00
TEMPORARY SPACE(北区北16西5 http://map.yahoo.co.jp/pl?lat=43%2F4%2F23.534&lon=141%2F20%2F39.955&layer=1&sc=3&mode=map&size=s&pointer=on&p=%CB%CC%B3%A4%C6%BB%C2%E7%B3%D8&CE.x=451&CE.y=34)
ところで、会場のテンポラリースペースは、ことし初めまで、中央区北4西27にあり、札幌を代表する現代美術の展示会場のひとつでした。
隣接の中森花器店とあわせ、ここで繰り広げられた数々の展覧会を抜きにして、北海道の美術史は語ることができません。
しかし、中森さんによると、地主と借り賃をめぐって訴訟になり、中森さん側が敗訴。花器店のほうは廃業し、民家を自力で改造したあたらしいスペースで再出発を図ることになったとのことでした。
中森さん、屈せざる男だなあ。
□中森さんのblog
(7月29日一部訂正しました)
白樺は、
それに、スピーカーが6個取り付けられています。いわば、木をコーンの代わりにしています。耳をあてれば、おなじ川で録音したというせせらぎの音が聞こえてきます。
ただ、白樺だけではさびしいと思ったのか、3月のあけぼの開明舎での個展でつかったという、竹や真鍮の筒を、糸をはり渡して空中に配したインスタレーションを、その周囲に設置しています。触ると、竹の筒の中の針金や、真鍮の中の木片が、良い音を出します。
今回の個展の「木は水を運んでいる」という題からは、木が地中から水を吸い上げる生命の神秘を思い出します。ときには数十メートルの高さまで、ポンプもなしに水を運び上げる仕組みは、現代の科学でも完全には解明しえていないという話を、どこかで読んだことがあります。
もちろん、この会場にある白樺は、もはや水を現実には吸い上げていないのですが、スピーカーからの音が、その自然の営みを暗示しているといえます。
「小さいころは東橋の近くに住んでいて、川であそぶのが好きだった」
と話す村岸さん。
川への愛着は、並々ならぬものがあるようです。
一方、ギャラリーのオーナー中森敏夫さんもかつて、暗渠化された川をテーマに現代アートの一大催し(「界川遊行」)を行ったほど、川に対しては一家言あります。
忘れられがちですが、札幌は(札幌も、というべきかもしれません)、川が作ってきたマチです。川が扇状地をつくり、アイヌ民族がサケを取り、水運にもつかわれました。いまは、上流は砂防ダムに覆われ、中流域が暗渠化され(環状通の下)、下流部は流れを変えられてしまった琴似川も、札幌の大地をつくってきた川のひとつなのです。
この個展会場も、琴似川の支流サクシュコトニ川の流域に近いことを思えば、村岸さんが木を円山川上流から運んできたという行為は、流木が上流から下流へと流れ着いたような、自然なことだといえるのかもしれません。
眼を閉じ、耳をすませて、いまは見えない「流れ」に、思いをいたすこと。そのたいせつさを、村岸さんの作品は、しずかに訴えているかのようです。
7月18日(火)-28日(金)11:00-19:00
TEMPORARY SPACE(北区北16西5 http://map.yahoo.co.jp/pl?lat=43%2F4%2F23.534&lon=141%2F20%2F39.955&layer=1&sc=3&mode=map&size=s&pointer=on&p=%CB%CC%B3%A4%C6%BB%C2%E7%B3%D8&CE.x=451&CE.y=34)
ところで、会場のテンポラリースペースは、ことし初めまで、中央区北4西27にあり、札幌を代表する現代美術の展示会場のひとつでした。
隣接の中森花器店とあわせ、ここで繰り広げられた数々の展覧会を抜きにして、北海道の美術史は語ることができません。
しかし、中森さんによると、地主と借り賃をめぐって訴訟になり、中森さん側が敗訴。花器店のほうは廃業し、民家を自力で改造したあたらしいスペースで再出発を図ることになったとのことでした。
中森さん、屈せざる男だなあ。
□中森さんのblog
(7月29日一部訂正しました)
となっていますが正確には「円山川」です。この
川界川と合流しやがて琴似川とも合流しますが。
川の名前は訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます。
今回の個展は、不可視の川の存在に耳を澄ますきっかけになったと思います。
見に行ったときです。その時手に入れた染め付けの器
今も家の棚にあって、使っています。
錦織さんのことを知ったのは、ヤナイさんのサイトですから、その前からネット上ではヤナイさんのことを
知っていたことになります。
その後、中森さんとは何回かお話ししていますので、
お互いどこかで会っても顔がわかると思います。
ネット上ではお話ししていますが、私はヤナイさんの
実物に出会っていません。ヤナイさんを知っている方とは話すことがあって、「新聞記者とは思えない控え目な物静かな方…」との評を聞いていますが。
どこかの展覧会場で遭遇しても芳名帳にサインする瞬間でもみないと、ヤナイさんがわからないのです。
ネットとは不思議なもの、です。
考えてみれば、わたし、コメント欄の常連さんのうち、パセリさんもSHさんもエゾ三毛猫さんもT.nakamuraさんも、お会いしたことないんですよねえ。
彼こんなすごいことしてたんですね。
絶対違う、と思いつつニュースの真相を調べようとして、まずここにたどり着きました。
でも読んでみて確信してしまいました・・・。
水遊びが好きだったんだ。。。
読んで知ってあげてください。
ご冥福を。
http://www.kochinews.co.jp/0608/060814headline03.htm
あのとき予約制の展示にしてくれて、ゆっくり音の展示を楽しみました。
奥には村岸さんが静かにいて、訊いたことには静かに答えてくれました。
素敵な存在感のある方でした。今後のご活躍が楽しみな方でした。
もうお会いできないとおもうと、残念でかなしくてなりません。
川の音をききながらあちら側にいってしまったのかな。
天国で音をつくっているのかな。
ご冥福をお祈りいたします。
まだ若いのに…