Hello darkness,今日のニュースでは、最新のテクノロジーが生身の知性よりもはるかに先鋭な直観を開発したと報じられたらしい。私の頭の中には、いまだ言葉にならないイメージの揺籃。矩形の窓から差し込む光は煌めくけれど、この部屋の小さな陰影に何を映せばよいのだろう。そしてこれからも絵画は続く。
公園に朽ちた遊具ジャングル・グローブを見いだして、そこにエネルギーの充実とそのグローバルな循環のたわみを読み取り制作してきた林亨は、いま最新の科学技術における技術的特異点に新たなエネルギーの喧騒を見出している。大井敏恭の作品のなかでは、言葉の形をとらない思考mentaleseが、絵画を通して響くように表現される。エナメル質の桎梏で心電図のリズムを刻み音楽の波を描いてきた末次弘明は、絵画材料の薄闇に目を凝らし、そこに新たな光を見出そうとする。彼らの絵画におけるゴールデン・ラウンドは、この地からそれぞれに輝く軌道を描き、絵画をめぐる新たな旅となるだろう。(塚崎美歩)
絵画3人展。
ここでは、末次弘明、林亨、大井敏恭の順に画像を並べました。
3人とも、題は付していません。
時々耳にするのは、メンバーが重複していて、会場も同じだった「絵画の場合」展と、違いがよくわからない―という声です。
しかし「絵画の場合」展のときに加わっていた「絵画から発展してすでに平面でなくなっていたメンバー」がすべて抜けているので、「絵画」展という純粋さがよりはっきりとしているのは確かだと思います。
末次さんの絵は、オシロスコープとか心電図を思わせます。
エナメル質の鮮烈な黒の波動は、音楽のようです。
鑑賞ワークショップでは、水田や麦畑を連想した人もいたようですが。
林さんの絵は、何層にも色とストロークが重なり合い、近代の透視図法とは別の奥行き感があります。こればっかりは、画像ではどうにもうまく再現できません。
画面にあちこちに、規則性を排して置かれた円の水玉、そして絵の具の塊は、もっとも手前側にあるように見えます。
これが、浮遊する魂なのか、あるいはもっと造形的な意味を持つのかは、見る側の解釈にゆだねられています。
ギャラリーの中二階には大井敏恭さんの作品。
上の作品は「玉手箱」、下の画像の左側の絵は「北の島、南の島」というそうです。
大井さんは、会場で無料配布している小冊子「WIP JOURNAL」vol.1 で自作を解説しているので、お読みいただければ幸いです。
ゴールデンラウンドとは、1788~1826年に就航していた、米国船による世界一周航路のことで、北太平洋からハワイを経て、広州、ボストンと回っていたらしい。
3人の画風は異なるが、鑑賞者の視線をたくみに誘導させつつ、さまざまな連想を促すという点では共通しています。単純な写実ではなく、といってカラーフィールドペインティング的な純粋抽象とも異なります。
見ごたえのある展覧会です。
2017年3月4日(土)~26日(日)午前10時~午後7時、無休
北翔大学北方圏学術情報センターポルトギャラリーA(札幌市中央区南1西22)
関連記事へのリンク
【告知】Golden Round
■The songlines (2016年4月)
【告知】NO-DOアートプロジェクト―ポルト・由仁「夏の遠足2015」
■北翔大北方圏学術情報センタープロジェクト研究美術グループ研究報告展 Caustics (2015)
■Art in Progress 企画展「Timeless:時の肖像」 (2013)
【告知】絵画の場合2012 -最終章-
=以上、3人とも出品
■SAG INTRODUCTION(2009)
■絵画の場合(2007年1月)
■絵画の場合(2005年)
=以上、大井氏と林氏が出品
■WAVE NOW 2016
■林亨展(2004年)
■林亨展(2002年)
■林亨展(2000年)
■第71回全道展(2016年6月)=末次さん出品。画像なし
■末次弘明のまとめ展 (2012年)
・地下鉄東西線「西18丁目駅」1番出口から約390メートル、徒歩5分。2番出口から約490メートル、徒歩7分
・同「円山公園駅」5番出口から約460メートル、徒歩6分
・ジェイアール北海道バス「北1条西20丁目」降車、約420メートル、徒歩6分
※手稲方面行きが止まります。快速や都市間高速バスは止まりません
・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」降車、約680メートル、徒歩9分
※手稲、小樽方面行き(都市間高速バスを含む)全便が止まります
・ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」の「大通西22丁目」降車、すぐ目の前。
※桑園駅-大通西22丁目-円山公園駅―啓明ターミナルを走っている路線です