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■永野曜一個展 (8月30日まで)

2008年08月30日 02時05分50秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 ことし1月に個展をひらいたばかりの永野さん。
 ユリイカが閉廊となり、急きょ代わりの会場を探したところ、たまたま札幌時計台ギャラリーがあいていました。A室は画家あこがれの部屋であり、ここで同ギャラリーでは初の個展を開けるというのは、幸せなことだと思います。

 永野さんの作品は、とくに題名が文学的な薫りを漂わせているにもかかわらず、絵そのものは、安直なことばに置き換えられるものではけっしてない、独自の抽象画であることが特徴です。
 その作品世界は、深みと、渋い落ち着きに満ちており、まさに孤高のものといえるのではないでしょうか。




 「夜明け前」。
 ふつうの画家がもっぱら地塗りに用いるローラーを、積極的に画面の上に走らせています。
 右上のローラーは、油をたっぷりつけて表面の絵具をこそぎ落とす役割を果たしています。
 それに対し、下部のローラーは絵の具をつけており、対称的な用い方をしているのです。


       

 「残影」。
 こちらはナイフの使い方が特徴です。


           

 「トロイメライ」。
 こちらは、他の絵にくらべると色の数が多め。
 「イエローを引き立てるのは補色の青だから」
と永野さん。
 中央部に多彩な色が置かれていますが、左右のイエローの帯と見事な対照をなしています。


                 

 「天空の回廊 I」。
 画面全体に明度や彩度の差がそれほどないかわり、線が縦横無尽に走るのが個性的な作品。

 永野さんの作品を見ていると、抽象画の実験的な技法が惜しげもなく用いられていることが分かります。とても40代から絵筆を執った人の作品とは思えないほど、表現方法のひきだしが豊富な人だと思います。

 「『かきました』っていうのじゃなくて、息をふっとふきかけたらできていた、というような感じの絵にしたいなあ」
と永野さん。
 油絵は乾くのに時間がかかるので、ふだんは5、6枚の絵を出したり引っ込めたりしながら筆を入れていくそうです。小品はそのうちいつのまにか完成していることもある-と話しており、まさにのっているのだなあ-と感服しました。
 「塩の塔」など以外はすべて新作で、もしユリイカで個展をひらいていたら、とうていすべては壁にかけきれなかったにちがいありません。


 出品作は次の通り。右側は、作者のコメント。
眠る人(3F)   深い安息感
赤い崖(6F)   熱砂の幻想
フィギュール(6F) ピンクと褐色のコンビネーション
風景 (8F)  断片的な風景
碑  (8F)  記憶の形見に
千年の杜(10F) 深い森の静けさ
田園 (15F)  田園風景のダブルトリミング
古代の壺(15F) 発掘された壺に思いを巡らす
秋涼 (15F)  秋の野の風情
小鳥 (20F)  小さな生き物との共生
天空の回廊 I(20F) 空に向かってせり上がる大地
天空の回廊 II(25F)同上
水と炎(30F) 水と炎の不思議な混交
降臨 (30F) 何かがゆっくり降りてくる
コンポジション(30F) 歯切れのいい軽快な構成
カリグラフィー(50S) 象形文字のように
残映 (100F) 水の上を走る光のゆらぎ
夜明け前(100F) 来たりくるものへの畏れと期待
朝の光(100F) うららかな朝の光
塩の塔(100F)  文明のむなしさ
風のある日(100F) 風に吹かれるままに
トロイメライ(120F) 子どもの頃の夢見心地 


08年8月25日(月)-30日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A

08年1月の個展
自由美術/北海道グループ展(07年)


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